国内初!多種目五輪スポーツ可能の自転車アリーナ 小松市

国内初となる屋内型五輪スポーツ対応の自転車アリーナ誕生へ向け、大きな一歩が踏み出された。
石川県小松市は8日、市が所有する「こまつドーム」の利活用に関する公募型プロポーザルに提出された提案内容を議会などに示した。提案では、地方創生に資する拠点性を持たせつつ、自転車の公営事業の活用を図り、施設の収益面を改善し、市の財政に寄与する計画を示している。市は今後も事業の収支計画や施設の公益性などを中心に調査を進める。
提案内容によると、これまで市民のスポーツ利用や展示会など多目的会場として利用していた会場利用を転換する。アーバンスポーツパークとしてBMXやスケートボード、スポーツクライミングなど東京大会でも日本人選手の活躍で注目を浴びた競技が実施可能となる。ほかに、様々なイベント開催も想定している。全天候型の施設となるため、大規模災害時の避難場所としても活用できる。
同時に、国際規格となる1周250メートルの自転車トラックも整備する。自転車は五輪の正式種目として採用され、近年は健康志向の高まりで全国的に自転車の利用も広まっている。国内の屋内型自転車アリーナは、東京五輪で競技会場となった伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)や「TIPSTAR DOME CHIBA」(旧千葉競輪場)が今回と同じように1周250メートルで運営する。
自転車トラック競技場は国内に約60か所あり、国際規格は伊豆と千葉の2か所のみにとどまる。小松市で整備が進めば、他会場と同様に、自転車の国際大会の招致も可能で、西日本を中心とした国内需要にも対応できる形となる。

東京大会を契機に、アリーナ需要は高まりを見せており、各地方自治体では地方創生の手段として注目されている。プロバスケットBリーグの試合会場、コンサート、eスポーツなど幅広い活用を期待し、スタジアム・アリーナの整備を進める。イベント開催による観光客増が見込まれるなど、様々な経済波及効果が整備計画を後押ししている。
【解説】ここ数年、公営競技は馬券などの購入や中継がインターネットで視聴可能となるなどデジタル化が進み、売上が急増している。戦後復興の一助となった公営競技だが、競馬、ボートレース、オートレースと比較し、自転車(競輪)は唯一の五輪種目でもあり、国際的な広がりは大きい。 また、より幅広い年代への訴求も期待できる。旧千葉競輪場の改修後は、市民が集う開かれたアリーナとして、レース開催以外に子供向けの自転車教室や成人式を開くなど、工夫を続ける。取り組みを知った自治体職員らが視察に訪れたこともある。会場は音響も良く炎や多彩なレーザーによる演出などもあり、若年層からは“インスタ映え”すると好評だ。今回の提案内容は、自転車の競技性を確保しながら、収益面も補うというウルトラCであり、異例の提案だろう。
建設が決まれば、いかに魅力的なコンテンツを誘致し、市内外から観光客を呼び込めるかがカギとなる。ネットによるスポーツ中継は戦国時代を迎えており、各社は水面下でコンテンツの争奪戦を繰り広げている。ふるさと納税や農産品の輸出など、自治体間競争が激しさを増している。小松市から世界に発信できるイベントの開催を期待したい。(久保 阿礼)
◆小松市 人口10万544人。日本の真ん中、石川県の西南部に位置する。日本三名山の一つ「白山」があり、西側は日本海側に面している。東西25・5キロ、南北33・1キロ、面積371・05平方キロメートル。建機大手コマツが有名。宮橋勝栄市長(1期目)