日本人はこの1年で約80万人減少… 国の活力維持するためには「移民」の選択肢も

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7月26日、総務省は、住民基本台帳に基づく人口動態調査を発表した。それによれば、2023年1月1日時点での日本人の人口は1億2,242万3,038人で、前年から80万523人減少した。
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減少幅は過去最大で、1973年の調査開始以来初めて全都道府県で前年より減少した。昨年1年間の出生数(77万1,801人)から死亡者数(156万5,125人)を引いた自然増減数は、マイナス79万3324人である。
首都圏の日本人も2連連続で減り、東京都が -0.12%、埼玉県が -0.27%、神奈川県が -0.23%、千葉県が -0.27%であった。
しかし、この減少幅は、地方よりも遙かに小さい。秋田県(-1.71%)、青森県(-1.50%)、岩手県(-1.50%)、山形県(-1.42%)、高知県(-1.34%)などは減少率の高い県である。
転出者が転入者を上回る「社会減」は、コロナ禍では減っていたが、感染の収束と共にまた増えており、東京一極集中の傾向が強まっている。
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コロナ流行の収束は、海外との往来も増やすことになり、外国人の流入も増加した。入国制限が緩和された結果、留学生や技能実習生が戻ってきた。その結果、住民票を持つ外国人は、299万3,839人となった。前年より28万9,498人の増加である。
外国人は、全都道府県で増えている。増加数のトップは東京都で、58万1,112人で前年から6万3,231人増加した。外国人を含めると、東京の総人口は増えている。外国人の増加が日本人の減少を補っている形だ。
増加率の2位は大阪府で、26万7,918人(2万4,963人増)、3位は愛知県で、27万8,116人(1万9,326人)である。
国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によると、2067年には総人口の10.2%が外国人になるという。
岸田文雄首相は、「異次元の対策」と称して少子化対策に全力を挙げているが、期待通りに進むと考えるのは楽観的に過ぎる。少子高齢化の傾向は今後も続き、働き手の不足が問題となる。日本人全体の中で、働き手、つまり生産年齢人口の比率は59.03%である。6割にも満たないが、これからもこの傾向は続くであろう。
少子化が大問題となっている中国や韓国でも事情は同じである。これに対して、アメリカは楽観的である。それは、移民の流入で若い人口が増えてるからである。
この国際比較を念頭に置くと、少子化の解決策として移民、つまり外国人労働者の受け入れが考えられる。多様な才能を持った外国人が到来することは、多くの利点がある。スポーツ界や芸能界では、外国人を親に持つ人たちがすでに大活躍している。しかし、マイナスもある。
ヨーロッパでは、第二次大戦後の高度成長期に、労働力不足を補うために外国人労働者を大量に受け入れた。それで人手不足の解消にはなったが、社会に亀裂を生む大きな問題も生じた。イスラム教の信仰や風習がキリスト教社会と異なり、それが偏見や差別を生んだ。そして、不況になると、外国人労働者がまず犠牲となって失業し、犯罪に走ったりした。テロも多発した。
今や、戦後直ぐに到来した移民の2世、3世が活動する時代となっている。彼らは、生まれ育ったヨーロッパと父祖の生活習慣との間で「アイデンティティーの危機」に悩んでいる。まさに文化摩擦、文明の衝突である。
私は、若い頃に留学したヨーロッパでこの移民問題に直面し、関心を持ってこのテーマを追ってきたが、2世、3世、そして4世の登場で、事態は複雑になっている。
昨年2月以来のウクライナ戦争で、ヨーロッパの人々は物価高に悩み、多くの不満が高まっている。そして、その不満は移民に向けられ、移民排斥をうたう極右政党が台頭している。また、差別された移民がテロに走るという事態にもなっている。
6月27日に、アルジェリア系移民2世の少年が検問中の警察官による発砲で死亡したが、これに抗議する人々がフランス全土で抗議活動を起こした。一部は暴徒化し、放火、破壊行為、商店の略奪などで、多くの被害が出た。暴徒の多くは移民とその子弟であった。
日本が移民を大量に受け入れた場合、好況の時は問題が起こらなくても、不況になると、ヨーロッパと同じような事態になる可能性がある。そのリスクをいかに回避するのか。外国人労働者の日本への定着には越えなければならないハードルが多々ある。しかし、日本が今後も活力を維持していくためには、移民という選択肢を真剣に考える必要があるのではなかろうか。

Sirabeeでは、風雲急を告げる国際政治や紛争などのリアルや展望について、元厚生労働大臣・前東京都知事で政治学者の舛添要一(ますぞえよういち)さんが解説する連載コラム【国際政治の表と裏】を毎週公開しています。
今週は、「移民」をテーマにお届けしました。