「コンコルド?遅すぎだろ」な爆速!“極超音速”旅客機は実現するか? その異端のコンセプト

コンコルドが退役した2023年現在も、「超音速旅客機」の開発は世界で繰り広げられています。そのなかで今後10年以内にマッハ5という「極超音速」で旅客機を飛ばそうという企業が出現しています。
これまで実用化された「超音速旅客機」は、マッハ2.04で飛んだコンコルドや、コンコルドスキーとも呼ばれた旧ソ連のTu-144以外にありません。ただ、マッハの速さで旅客機を飛ばす挑戦は今も続いてます。
そうしたなか、「デスティニウス(Destinus)」というスイスで設立された企業は、今後10年以内に超音速旅客機を飛ばそうと取り組んでいます。その速度は「極超音速」――。つまりマッハ5(時速約6000km)です。
「コンコルド?遅すぎだろ」な爆速!“極超音速”旅客機は実現す…の画像はこちら >>極音速旅客機「ディスティニウス 2」のモデル機(島田駿撮影)。
2030年から2032年をめどに、マッハ5で飛ぶ「極超音速旅客機」の開発を進めている「デスティニウス」。同社の機体は25人乗りで、液体水素を燃料に飛行します。
2023年現在、米国のブーム・テクノロジーが2029年の運航開始を目指して超音速旅客機「オーバーチュア」の開発を進めていますが、こちらはマッハ1.7(時速約2100km)を想定しています。つまり速度の面では、デスティニウスの方が圧倒的に上です。
デスティニウスのように液体水素を燃料とする構想は、既に1950年代からあり、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しないので、エアバスも将来の利用へ向けて取り組んでいます。しかし、機内に専用の貯蔵タンクを設置しなければならず、取り扱いに注意が必要でもあります。
いわば、デスティニウスの極超音速旅客機は、速度と燃料の2つの革新へ挑戦していると言えるでしょう。
実現に向けて、デスティニウスはまず2021年に全長4mの試験機「デスティニウス1」を飛行させ、続いて全長10mの試験機「デスティニウス2」を飛ばしました。
飛行試験では250km/hと低速ながら、速度を増すためエンジンの後部につけるアフターバーナー(再燃焼装置)の着火に液体水素を使い、2023年5月までに成功裏に終えたということです。
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フランス・トゥールーズに展示されている量産機の「コンコルド」(松 稔生撮影)。
続く全長10mの試験3号機は、通常の燃料を使ったジェットエンジンに液体水素を使ったアフターバーナーを取り付けて試験に入り、2024年上半期に亜音速で飛行させ、下半期にマッハ1.3の超音速飛行を成功させる予定でいます。
デスティニウスは、25人乗りの極超音速旅客機を実現した後、2040年代に300人から400人乗りの機体を実現させる構想も持っています。デスティニウスの関係者は構想の実現へ、「液体水素をいかに安全かつ安定して貯蔵するかが重要な要素となる」とパリ航空ショーで話していました。
また、担当者は「『ホンダジェット』が使っているエンジンHF120にも関心がある」とも述べています。アフターバーナーに関連した部分での使用を考えているということでしたが、ホンダ側へまだ接触もしていない、として、詳細を聞くことはできませんでした。ただ、10年以内の運航実現へまい進している熱意は、感じ取ることができました。
「コンコルド」の後、音速を超える旅客機はありません。それが一気に極超音速まで速度が飛躍するとすれば、空の旅に大きな革新をもたらすことでしょう。
※誤字を修正しました(8月3日15時48分)。