【安藤優子の本音】岸田政権何でもかんでもと空回りや矛盾

政府の税制調査会の答申が発端になり、すわっ「サラリーマン増税か?」となってちょっとした騒ぎに。岸田首相は「全く考えていない」と火消しに躍起ですが、この問題の本質は、何でもかんでも自分の政権でやってやろうという、意欲の空回り、もしくは意欲の矛盾にあるのではないかと思います。
例えば「異次元の少子化対策」として子ども手当などの支給対象を広げる方針ですが、その財源が決まらない。「防衛費の増強」をすることも決めていますが、その財源も定かではない。一部議論では、東日本大震災の「復興特別税」を充てるという案も。そんな迷走状況で、出てきたのがサラリーマン増税の可能性です。しかも「通勤手当」や「退職金」の優遇控除を見直すという案。これは、あきらかに「異次元の少子化対策」と矛盾しますよね。
なぜならば、子育て世代の家庭を思い浮かべれば分かりやすいと思います。子どもが生まれてそれまでの家では手狭になった、だから少し遠方でマイホームの夢をかなえようとしているとします。遠距離通勤の前提には「通勤手当」があるはずです。それに課税されることになると、いくら「子ども手当」をもらっても(それは本来の育児にかかる費用なので)、そうした生涯設計、「頑張ってマイホーム」をという夢をぶち壊しかねないのです。
退職金の課税についても、退職後の生活プランを見直すことになるでしょう。もし社会保険料の見直しで、高齢者の医療負担がさらに増えれば、なおのことです。税制に「100%公平なものはない」と言われますし、事実その通りだと思います。でも何を第一にやるのかの優先順位がはっきりしないと、誰も納得しないままの税制改革になる矛盾をはらんでいると危惧しています。(キャスター・安藤優子)