「サウナでM字開脚しながら美顔ローラーをコロコロ」立ちんぼ嬢やホス狂いたちの定宿や憩いの場に? 歌舞伎町のレディスサウナ潜入記…「塩素のような匂いがツンときた」

昨今のサウナブーム以前から価格の安い24時間営業のサウナが多く存在した歌舞伎町。なかでも大久保公園近くの女性専用サウナ「X」は、公園で立ちんぼ(売春)する女性やホス狂いたちの定宿と化しているという。そこは一体どんな空間で彼女たちは日々どのような生活をおくっているのか? 本誌女性記者が飛び込んでみた。
歌舞伎町ほど多種多様なサウナのある街はない。終電を逃したサラリーマンの御用達店や、男性同士の出会いの場となる店、さらにはホストグループが開店した個室サウナなど実にさまざまだ。なかでも「X」は女性専用の老舗サウナとして町内で古くから知られている。歌舞伎町ウォッチャーの仙頭正教氏が言う。
女性用サウナ(イメージです)
「女性専用の『X』は“交縁界隈”と呼ばれる立ちんぼスポットの大久保公園からほど近い場所になり、住む場所のない立ちんぼ嬢たちの定宿や憩いの場であるとともに、金稼ぎの情報交換の場です。ここで仲良くなった女性2人組がグルになって出会いカフェでセックスした男相手に妊娠したと偽り、中絶費用や慰謝料請求する詐欺まがいのことをしていたこともありました」デリや立ちんぼを掛け持ちしながら半年ほど前まで「X」に住んでいた優美さん(28歳・仮名)にも話を聞いた。「『X』は言うなら、“自由に動ける女性刑務所”のようです。館内のあちこちに監視カメラがついてるし、コミュ力のない子や目立った子はすぐハブられる。貧困層も多く、飲みかけのジュースが勝手に飲まれることもある。私の友達はリュック丸ごと盗まれました。その反面、保険証がない子には持ってる子が貸してくれたり、私が深夜に飲食スペースで泣いてたら店員さんが水を持ってきて慰めてくれたりと、まるで寮母さんみたいに優しくて、なんだかんだ居心地はよかったです」
優美さん・28歳(撮影/集英社オンライン)
とはいえ「利用者のなかには前科者も多くいた」と優美さんは言う。「詐欺で実刑を受けて刑務所から出てきたばかりの子もいました。児相や少年院上がりの子も。少し前に歌舞伎町の漫喫で乳児遺棄した女性が刑務所から出てきて、『X』に住んでるって噂も聞きました」(前出・優美さん)
そんな空間に突入するのは若干ためらわれたが、とある金曜日の13時にチェックイン。入ると玄関付近はなぜかプールによくある塩素のような匂いがツンときた。すでにカプセルルームは満室で、玄関脇には色とりどりのスーツケースが置かれている。店員によれば「予約可能な最長期間である1ヶ月分をまとめて予約される方もいます」とのこと。飲食スペースの奥には雑魚寝スペースやカプセルスペースがあり、ロッカールームには100以上のロッカーが並ぶ。洗濯機と乾燥機も完備され、住むにはまったく困らない。それに外観の印象以上に中は広く感じた。
お金はジップロックにいれて持ち歩く客もいた
地下は雑魚寝スペースとパウダールーム、漫画コーナーに日光浴スペースもあった。優美さんが言うように大浴場以外の至る所に監視カメラが複数台設置され、利用者はカメラの前でも気にすることなく裸でとうろつくという、ちょっと他では見られない光景も。雑魚寝スペースでは真昼間にも関わらず10人ほどが熟睡していた。ゴジラのようなイビキをかく女性や、たまに「ガーーッ。ゴッ」と無呼吸になる女性もいて、ちょっと心配になった。いっぽうで浴室やサウナスペースは無人で貸切状態。しかも椅子と風呂桶は整頓され、排水溝にはちぢれ毛ひとつ落ちてなく、古いとはいえ掃除が行き届き、清潔だ。素早く体を洗い、入湯。やや熱めだがいい湯加減。サウナもいい塩梅だった。記者はそのまま飲食スペースで優雅に仕事を始めた。気が向いたら再び風呂に入り、なかなか快適では、と思った矢先、16時頃から様子が変わり始めた。カプセルで寝てた方々が起き始めたのだ。まず170㎝くらいのがっちりした金髪格闘家ふうの女性が登場。強烈な匂いを放つ激辛ラーメンとおにぎりを食べ始めた。スマホの画面はマッチングアプリのメール画面だった。もしかしたら、アプリを介して客を引いているのかもしれない。
歌舞伎町ビル(撮影/集英社オンライン)
先ほどは無人だったロッカールームもザワザワし始めた。地べたに直に座り脇に除毛クリームを塗る中年女性や、風呂場にはなぜか立ったまま周囲にシャワーを撒き散らしながら豪快に体を洗う角刈りのおばさんが…。先ほどは整っていた桶も、湯切りもされずに水が入ったまま放置されるなど散乱している。そしてサウナにはジップロックに入れた得体の知れない黄色い液体を直飲みしながら“ととのう”女性、その隣にはM字開脚で“具”が丸見え状態で美顔ローラーをコロコロする方まで…。
雑魚寝スペースでは、関西弁の子がホストのグチを言い、それを聞く2人組がいた。女の子A「3日間で60万円使ったって言ったやん、なのに無反応。許されへんやろ」女の子B「そういうこと、もう言わないって言うてたやん」女の子A「そうやけど…」パウダールームにはヘアアイロンで髪を整え、化粧をする女子も複数名いた。みんな、不自然なほどアイシャドウとハイライトを塗り、無理やり涙袋を描いている。また、電話を片手に「今日何時? 21時に店ね、りょーかい」などと、ホストとやりとりしてると思われる子も。再び飲食スペースに戻ると、先ほどの金髪格闘家ふうの女性が「それ、どこで買ったの?」とツッコみたくなるような真紅のワンピースに着替え、髪もメイクも整えて乳酸菌飲料を飲んでいた。いったん大久保公園付近も歩いてみようと、受付に声をかけると「チェックアウトの時間までには戻ってきてね、いってらっしゃ~い」と、客への対応というよりも学生に門限を伝える寮母のような喋り口調だった。入店してくる20代前半くらいの金髪女性が「ただいまー! 今日はちょっとさ、お金ないからトイレだけ借りてってもいい?」と声をかけると、「いいよー」と“寮母”。ここは、歌舞伎町の女性にとってのかけ込み寺のような存在なのかもしれない。大久保病院前の地べたに座る女性に声をかけると、この女性もかつて「X」に寝泊まりしていたとがあるという。
大久保公園界隈(撮影/集英社オンライン)
「カプセルルームは、『X』の中ではVIPルームのような場所だけど、どこで寝てもイビキがうるさいんだわー。手ぐせが悪いヤツ多くて、私はケータイの充電器を盗まれた。さすがに財布を盗まれたとかは聞かないけどね。盗難がバレると出禁だし、それはみんな困るし。でもホストクラブの締め日(その月の最終営業日)だけは行きたくない。金を使い果たして荒れてる女、多いから」この女性によれば、ホス狂や立ちんぼ嬢だけでなく、未成年の少女が泊まっていたこともあるという。「仙台から来た16歳の女の子がメンズ地下アイドルの推しに会うために泊まっていたのも見ました。あそこに泊まるのには身分証明とか必要ないから、わりと紛れ込んでるんですよ」記者の滞在中は、見るからに未成年っぽい子は見かけなかったし、警戒していた盗難被害にも遭わず、「X」ならではの人間模様を楽しむことができた。しかし9時間ほどの滞在中に何度も浴槽に浸かったせいか、心なしかアソコが沁みる気が…。整ったのか、乱れたのか、よくわからないまま新宿駅に向かうと、キャッチに「お姉さん、ホストの初回どう?」と声をかけられた。これまで歌舞伎町に何度訪れてもお声がかからなかったキャッチから、人生で初めて声をかけられた。ホス狂い御用達銭湯とサウナに浸かりまくった影響で、すっかり“仕上がった”のかもしれない。
取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班