日大・林真理子理事長、通報まで12日間の空白も「隠蔽と思っていない」…アメフト部薬物事件

日大は8日、覚醒剤と大麻を所持したとしてアメリカンフットボール部員の男子学生が警視庁に逮捕された事件を受け、林真理子理事長(69)らが8日、都内の日大本部で会見を開き、「大変に遺憾。理事長として深く受け止める」と謝罪した。寮内で大麻のような不審物を見つけてから警視庁への報告が12日後になったことに関し、大学幹部は「違法薬物との確証がなく、ヒアリングを進めてまとめて報告しようと思った」と説明。林氏は「適切だった。隠蔽(いんぺい)と思っていない」と語った。
「新しい日大」をスローガンに華々しく意気込みを語った昨年7月の新理事長就任会見から約1年1か月。報道陣約180人が集まる中、紺のジャケットに黒のスカート姿で登場した林氏は冒頭で「多大な迷惑と心配をおかけしたこと、説明いただくことを設けました際に、時間が要したことも心から深くおわびする」と約7秒間、頭を下げた。
林氏はメモを両手で持ちながら経緯を説明。2日に記者団の取材に応じた際、「違法な薬物が見つかったとかは一切ない」と否定したことについて「確認の結果について連絡を受けていないという意図での発言だった。言葉足らずで反省している」と謝罪した。
一方で、警視庁に届け出るまで12日間の空白があったことについて「隠蔽という言葉が一体どこから出てくるのか。警察と協議しているので、こちらからお伝えできないこともある。(対応は)適切だった」と不快感をあらわに。また「旧体制の勢力が残り、私がお飾りの理事長であるという報道がなされているが、そのような評価を残念に感じている」と不満そうな表情を浮かべた。
酒井健夫学長によると、昨秋の保護者会で大麻に関する情報提供があり、11月下旬に部員から「7月頃大麻を吸った」と申告があった。元東京地方検察庁総務部副部長の沢田康広副学長が知り合いの警察関係者に相談したが、物的証拠がないことなどから事実の立証は困難との回答があり、地元の警察署に届けなかった。その後、12月に警察からも大麻使用に関する情報が寄せられたが、学生に対して厳重注意し、薬物の講習会を行っただけだった。この学生が覚醒剤取締法違反容疑などで逮捕された北畠成文容疑者(21)だったかどうかについて沢田氏は「捜査に影響を及ぼすため差し控える」とした。
今年6月に再び警察から情報提供があり、大学側が7月6日に寮内で荷物検査を実施した際、北畠容疑者の部屋で小さなポリ袋に入った不審物を発見。沢田氏は「大麻のカスかもしれない」と認識したが、「学生に自首させたいと考えた」として警察に届けずヒアリングを続けた。
不審物は大学本部で保管していたが、7月18日に大麻容疑を告発する匿名の手紙が林氏宛に届いたのを機に警視庁へ報告した。捜査関係者によると、錠剤も見つかり、鑑定で大麻と覚醒剤と判明した。
林氏に報告があったのは同13日という。通報が12日後になったことについて「聞いた時はびっくりしたが、副学長は自首させる気持ちがあったとの説明に納得した」と釈明した。約2時間15分、ガバナンス(組織統治)と危機管理力に疑問を残す会見となった。(坂口 愛澄)