【千葉魂】澤田、古巣相手に復活劇 リハビリ越え夢の1軍登板 千葉ロッテ

夢にまで見た1軍のマウンドに戻ってきた。昨年6月に右肘を手術した澤田圭佑投手がバファローズ時代の2021年9月1日のファイターズ戦(札幌D)以来の1軍のマウンドに登った。マウンドの向こうで対峙(たいじ)したのは元同僚たちだった。
「バファローズとの対戦だったのでめちゃくちゃ気合が入りました。絶対に抑えようと。いろいろな事が頭をよぎりそうになりましたけど、あそこは全力で投げる事だけを考えました」
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8月9日、本拠地ZOZOマリンスタジアムでの古巣バファローズ相手の復帰戦を澤田はそのように振り返った。最初に打席に立ったのは5番頓宮だった。現在は一塁を中心に守るが捕手登録でバファローズ時代には何度もバッテリーを組んできた間柄。2歳年下の頓宮とは打者を抑えて一緒に喜び、時には打たれ、共に悔しがった。お互い性格を熟知し、酸いも甘いも共有してきた仲間だった。そんな頓宮をキレのあるストレートで空振り三振に仕留めた。続いて打席に入ったのは宗だった。一瞬、目が合った。
「彼の努力をしてきた姿も見ているし苦労も知っている。今はゴールデングラブ賞に輝くなどレギュラーとして定着したけど、色々なポジションに挑戦したりすごい頑張って今に至っている」と澤田。一緒にリハビリ組に入っていたこともあった。けがを乗り越え今の立場をつかんだ後輩との対戦に特別な想いがこみ上げた。全力ストレートで三ゴロ。マリーンズデビュー戦を見事、無失点に飾った。
翌日、試合前練習を切り上げようとすると、ちょうどバファローズの投手陣たちが姿を見せた。拍手のジェスチャーで祝福してくれた。長いリハビリ。そして移籍し育成選手としての再スタート。7月27日に支配下登録となり、復帰戦は古巣相手で無失点。これまでの苦労が吹き飛ぶような爽快な気分になった。
「バファローズ相手にいいパフォーマンスを見せることができてうれしかった。これからも全力で打者と勝負をしていきたい」と澤田。
この復活劇を演出したのは他でもない吉井理人監督だ。最初に古巣に当てることを想定して1軍昇格をさせたのかと尋ねると「もちろん」と返答が返ってきた。「プロなのだからドラマチックな方がいい。本人も望んでいるだろうしね」と、してやったりの表情を見せた。
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澤田は8月12日のライオンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で2度目の登板。1点ビハインドの場面から13球で三者凡退に仕留めるとその裏、チームは逆転しサヨナラ勝ち。勝ち投手になった。苦労人の全力投球に勝利の女神がほほ笑んだ。19年5月2日以来、実に1563日ぶりの白星だった。
苦しく地道なリハビリの日々。何度も1軍で投げている姿を夢に見た。古巣は昨年と一昨年、パ・リーグ連覇を果たしているがその輪の外にいた。だからこそ優勝への想いも強い。「バファローズは優勝を2年連続でしたけど、ボクの中では1回も優勝を味わえていない。だから絶対に勝ちたい。今年、優勝したい」と澤田は気持ちを込める。シーズンは残り50試合を切り、終盤に突入した。胸突き八丁に差しかかった中で、地獄を味わった苦労人の存在がチームに与える影響はきわめて大きい。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)