【フランチャイズの開業資金】どんな費用がいくらかかる? 資金の調達方法は?

フランチャイズでの開業を考えるとき、特に気になるのが「初期費用」でしょう。フランチャイズの初期費用は、加盟する本部や業種によって大きく異なりますので、内訳まで把握しておくことが大切です。

今回は、フランチャイズ開業時にかかる初期費用の内訳や金額を解説します。また、自己資金だけで賄えない場合の資金調達の方法についてもご紹介しています。フランチャイズへの加盟を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

■フランチャイズの開業に必要な初期費用

フランチャイズに加盟して開業するには、加盟金のほかいくつもの費用が発生します。まず、フランチャイズの開業に必要な初期費用の内訳と、費用の目安がある場合はその金額をご紹介します。
<加盟金>

加盟金は、本部のブランドや経営ノウハウを利用するために加盟者が支払う費用です。毎月支払うロイヤリティとは違い、加盟時に一度だけ支払います。加盟金の相場は業種によって異なりますが、中小企業では100~300万円が一般的です。

中には加盟金ゼロの本部もありますが、初期費用が抑えられる代わりに、その後のロイヤリティなどの支払いが相場より高く設定されているケースもありますので、注意しましょう。

なお、加盟金はフランチャイズによって違う名称がつけられている場合もあります。費用が発生したら、「何のために支払う費用なのか」をよく確認するようにしましょう。
<保証金>

加盟金のほか、保証金が必要なケースもあります。保証金は、加盟店が本部に一時的に預けるお金で、ロイヤリティの支払いが滞ったときには、遅延分を補てんする役割を持っています。保証金の相場は、100万円前後が一般的です。

保証金は、加盟金と異なり一時的に預けるお金ですので、本部との契約解除時に違約金や債務不履行がない場合は、基本的には返金されます。
<研修費>

多くのフランチャイズでは、開業前に、店舗の運営方法や商品の基礎知識などを身につけるための研修を行っています。研修費は1回あたり数千円程度が目安ですが、無料で何度も研修が受けられたり、研修費がロイヤリティに含まれていたりする本部もあります。
<物件取得費>

物件取得費は、店舗を構えるための費用で、土地の購入費のほか、敷金や礼金などが含まれます。フランチャイズ開業の初期費用の中では、最も大きな金額が必要です。

賃貸物件を利用する場合は100万円以下に抑えられることもありますが、土地の購入を伴う場合や規模の大きな店舗の場合、また、施設を構える業種では、1,000万円以上の費用となることもあります。

ただし、無店舗で経営できる業種や、本部が店舗を用意してくれる場合は、物件取得費はかかりません。
<内外装工事費>

店舗を必要とする業種では、物件取得費だけでなく内外装工事費もかかります。内外装工事費は、主に店舗の天井や床、壁などを改装する費用ですが、物件によってかかる金額には大きな差があります。

特に、内外装の工事がされていない「スケルトン物件」の場合、水道や電気系統などから整備する必要があるため、費用が数百万円程度に膨らむケースもあります。一方、居抜き物件を利用する場合、ほとんど費用はかかりません。
<設備費>

店舗を経営するなら、必要な設備も揃えなければなりません。設備費に目安はありませんが、特に飲食業は、厨房機器、POSレジなどに多額の費用がかかります。ほかにも、テーブルや椅子などさまざまな備品が必要ですので、はじめに細かくピックアップしてどのくらいかかるのか把握しておきましょう。

フランチャイズによっては、什器や備品を本部が用意してくれるところもあります。
<仕入れ費>

フランチャイズでは、ほとんどの場合、本部が商品の大量生産や原材料の大量仕入れを行います。このため、加盟店は仕入れ費を抑えられるだけでなく、安定的な供給が実現できるのです。

個人で仕入れ先を探す必要がなく仕入れが不安定にならずに済む点は、フランチャイズに加盟する大きなメリットといえるでしょう。

なお、仕入れ費は業種によって異なるため、具体的な金額の目安はありません。
<広告宣伝費>

開業準備が進み、開業日が近づいてくると、広告宣伝費が発生します。広告宣伝費は、店舗の認知度や集客数を上げるため、広告を打ち出す際にかかる費用です。

ポスティングやリスティング広告など、広告にはさまざまな種類がありますが、費用は最低でも5~10万程度はかかるでしょう。ただし、費用はロイヤリティに含まれていることもあります。

また、フランチャイズ本部には、ホームページやチラシ、大企業になるとTVCMなど、大規模な集客支援を行うところもあります。高い宣伝効果が見込めるのはもちろん、本部が宣伝を代行してくれることで、加盟店は業務に専念できるのです。
<採用広告費>

さらに、スタッフを雇う場合は、採用広告費がかかります。経営を始めてからは、人件費もかかりますので、営業には何人くらいの人員が適切なのかしっかり見極めておきましょう。

なお、フランチャイズ本部の中には、スタッフの採用だけでなく、教育まで行ってくれるところもあります。
<その他手数料>

フランチャイズによっては、加盟金やロイヤリティのほかに、本部の管理システムを利用するためのシステム使用料や広告費がかかるところもあります。

「契約直前に、想定外の費用に気づいた」という事態にならないよう、かかる費用の詳細をしっかり確認しておきましょう。
■業種ごとの初期費用の目安

フランチャイズで開業するときの初期費用は、業種によって大きな差があります。次に、業種ごとの初期費用の目安を見てみましょう。

ただし、同じ業種でも、規模や地域、立地などの条件で費用は変動しますので、その点も覚えておきましょう。
<飲食業>

飲食業の初期費用は、店舗の規模によって大きな幅があります。規模の大きなファストフード店の場合、物件取得費にお金がかかり、2,000万円前後の初期費用がかかるケースも少なくありません。一方、規模の小さなラーメン店の場合、初期費用の目安は180~400万円程度です。

テイクアウト専門店など、店の敷地面積が小さくて済む場合、100万円以下で済むこともあります。

なお、フランチャイズでは、既存の店舗をそのまま引き継げるよう支援している本部もあり、その場合、物件取得費や内外装工事費をかけずに開業できることもあるようです。
<コンビニエンスストア>

コンビニの初期費用は100~500万円程度とされており、加盟者自身が土地や建物を用意するケースと本部が店舗を準備するケースで、必要となる費用に差があります。

なお、コンビニのフランチャイズでは、豊富な開業支援制度が採用されています。たとえば、一定の条件を満たせば加盟金や転居費の免除が受けられる、開業後、本部が固定費の一部を継続的に負担してくれるなどです。

また、コンビニは多店舗展開が推奨される傾向にあり、多店舗展開すると奨励金がもらえたり、開店準備手数料が免除されたりする本部もあります。
<家事代行サービス>

家事代行サービスは、高齢者世帯や共働き世帯の増加とともに、ニーズが増えている事業です。業務を行うのに特別な資格は必要なく、人を雇わず1人で始めることもできるため、比較的開業しやすい業種の1つです。

また、他の業種と比べると初期資金も150~200万円と、さほど高額にはなりません。
<ハウスクリーニング>

ハウスクリーニングの初期費用は150~300万円程度で、家事代行サービス同様、比較的費用がかからず開業できます。

ただし、ハウスクリーニングはエアコン掃除や換気扇フィルター、台所汚れなど、サービス内容が多岐にわたり、専門的な知識やスキルを身に付けなければなりません。そのため多くの本部では、開業前の数週間、徹底した技術研修が行われます。

だからこそ、ハウスクリーニングの業界が未経験でも、安心して開業を目指せます。
<買取専門店>

買取専門店とは、顧客が持ち込んだ品物の査定を行い、査定額を支払う店舗のことです。買取専門店の特徴は、販売店とは異なり商品を並べるスペースが不要なため、2~3坪ほどの省スペースでも営業が可能なところです。

また、在庫を抱えなくてもいいため、リスクを抑えた経営が可能になります。フランチャイズで買取専門店を開業する場合、初期費用は500万円程度かかりますが、本部によっては物件取得費や加盟金がかからないところもあるようです。
<学習塾>

学習塾の形態には、一人ひとりに合わせた指導を行う「個別学習塾」、集団で学習を進める「集団学習塾」、生徒が自主的に学習し、講師がそれをサポートする「自立型学習塾」などがあります。また最近では、オンライン授業を採用する学習塾も増えています。

フランチャイズで学習塾を開業する場合、初期費用は500~700万円程度となります。ただし、大手塾では1,000万円以上の資金が必要なところもあるようです。

フランチャイズの学習塾では、「加盟金不要」や、「一定条件を満たせばロイヤリティ不要」などの制度を設けているところもあるので、よく調べてみましょう。
<弁当宅配業>

高齢化社会が進むなか、弁当宅配サービスの需要も増えています。弁当宅配業は店舗を持たないため、店内設備や土地を用意する必要がなく、開業資金も抑えることができます。初期費用の目安は、100万円程度です。
■自己資金が不足している場合の資金調達の方法

フランチャイズに加盟してビジネスを始めたいのに、「自己資金だけではどうしても資金が不足する」という場合もあるでしょう。その場合、以下のような資金調達の方法を検討しましょう。
1.銀行からの融資

まず、銀行から融資を受ける方法がありますが、銀行からの融資は大きく2種類に分けられます。1つめは、審査のハードルが下がる代わりに、毎年「信用保証協会」に保証料を支払う必要がある「信用保証付き融資」。

もう1つは、保証協会が付かない分毎月の支払いは減るものの、審査が厳しくなる「プロパー融資」です。

新規で開業する場合、銀行にとっては貸し倒れリスクの高い融資となるため、基本的には「信用保証付き融資」での貸し付けとなります。
2.日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫(日本公庫)は、国が100%出資している政策金融機関です。新規開業者への貸付にも積極的なため、資金調達にはまず日本公庫からの融資をおすすめします。

フランチャイズの開業資金調達に利用される融資としては、「新創業融資制度」が代表的です。これは、3,000万円を限度額(基準利率2.46%)として事業用資金の融資が受けられるものです。

ただし、融資を受けるには条件がありますので、内容をよく確認してみましょう。
3.国や自治体の補助金・助成金の利用

国や自治体が提供する補助金・助成金を利用するのもいいでしょう。補助金は、国や自治体の政策目標に合わせてさまざまな分野で募集されており、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するものです。公募期間や募集枠には限りがあり、申込者の中から審査を行い受給者を決定するため、必ずしも受給できないこともあります。

一方、助成金は、1年中申し込むことができ、条件や資格を満たせば受給できます。

補助金や助成金は返済不要な点がメリットですが、補助金と助成金はともに、費用を使用した後や人材を雇用した後などに支給される「後払い」の仕組みです。そのため、「資金はあるけれど、開業資金や運転資金をもっと抑えたい」という人に向いている資金調達方法です。
4.フランチャイズ本部からの支援

このほか、フランチャイズ本部から支援を受けるのも1つの方法です。本部から融資を受ける、必要な設備をリース契約で提供してもらうなど直接的な支援のほか、フランチャイズ本部から信用保証協会を紹介してもらうなどの間接的な支援もあります。

加盟を検討している本部には、開業に際してどのような支援制度があるのか調べてみましょう。
■業種や本部によって異なる初期費用をしっかり調べよう

今回は、フランチャイズで開業する際の初期費用の内訳や金額の目安などをご紹介しました。繰り返しになりますが、フランチャイズ開業の初期費用は、業種や本部によっても内容が大きく異なります。後から追加の費用に悩まされることのないよう、事前にしっかりと詳細を把握しておきましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら