アルコール分3.5%の「スーパードライ」新登場 – 開発の狙いは

アサヒビールは、アルコール分3.5%の「スーパードライ ドライクリスタル」を10月11日に発売する。発売にあたり、8月23日に東京都内で発表会が行われた。

○透明感のあるクリアな後味

通常の「スーパードライ」はアルコール度数が5%のところ、新商品の「スーパードライ ドライクリスタル」はアルコール度数3.5%であることが特徴だ。

「スーパードライ」の味の特徴である、”飲んだ瞬間のぐっと立ち上がる飲みごたえ”と”瞬時に感じるキレの良さ”という骨格にこだわり、透明感のある味わいと本格的な飲みごたえを実現しつつ、アルコール度数3.5%を実現している。

「スーパードライ」の本格的なうまさを再現しながらアルコール度数を3.5%まで下げることは、非常に難しかったという。3.5%前後の「ミドルレンジ」と呼ばれる商品開発では加熱殺菌が一般的だが、研究所部門・マーケティング部門・工場部門による条件の探求と高度な工程管理で「生」の製造を実現した。

また、冷涼感が特長のドイツ産ホップ「ポラリス」を一部使用するとともに、通常の「スーパードライ」よりも発酵度を上げる「ドライクリスタル製法」を採用することで、透明感のある味わいと本格的な飲みごたえを実現。酵母については「スーパードライ」同様「318号酵母」を使用している。なお同社が行った調査では、「ビールの雑味が全然なくてとてもおいしい」「炭酸が強くアルコールが3.5%と低いのでゴクゴク飲める」等、高い味評価も獲得しているという。

「スーパードライ ドライクリスタル」の純アルコール量は350ml缶1缶あたり9.8g、500ml缶では14g。「スーパードライ」350ml缶の純アルコール量が14gなので、「スーパードライ ドライクリスタル」だと500ml缶相当となる。なお国が推奨する1日あたりの飲酒量(節度ある適度な飲酒量/純アルコール量)は、男性が20g、女性が10gだ。

○なぜ今「3.5%のスーパードライ」なのか

アサヒビール代表取締役社長 松山一雄氏は「スーパードライ ドライクリスタル」について「新しい需要を喚起してパイを広げる、未来志向の商品」と自信を見せる。

2026年のビール類酒税一本化に向け、2023年10月には2回目のビール減税が行われる。2020年10月のビール減税の際は、ビール購入者の増加によりビール市場が拡大した。さらに当時の状況とは異なり、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行によりハレの日を中心にビールを飲むイベントや日常も戻ってきている。このタイミングで発売する事で、同商品を手に取る消費者が増えることも狙っているという。

また、3.5%前後のミドルレンジアルコール帯の「スーパードライ」を開発した背景として、ライフスタイルが従来の画一的なロールモデルから、年齢やステージに関係なく多様化していること、そして世界のビール市場においてアルコール度数0%~3.5%の販売容量が安定的に伸び続けていることを挙げた。

海外では伸びているものの、国内市場ではビール類のアルコール度数は5%が中心で、ミドルレンジのビールは選択肢の多様性がない。しかし同社が国内での生活消費者調査を行ったところ、まだ顕在化していない市場ながらもポテンシャルがあることがわかったという。

そのような状況のなか、「スーパードライ ドライクリスタル」は発売される。なおミドルレンジアルコール帯の商品は、日本に限らずアサヒグループ横断でに商品開発プロジェクトを発足している。「スーパードライ」を含む5つのグローバルブランドで、各市場のニーズに沿った商品を展開するという。

「この商品に対する想いをいち消費者として話すと、『待ってました』という気持ちです。自分以外に誰に飲ませたいなと思った時に、自分の父親が浮かびました」と松山氏は消費者目線でのコメントも寄せた。

「父は晩酌に生ジョッキ缶を飲んでいますが、1缶だと量が多くて飲み切れない、でも毎日のビールは楽しみたい。この『ドライクリスタル』があれば、一日が楽しめるのではないかと思います。また、1杯目はビール、2杯目は別の飲み物に切り替えるけど、食事に併せるならビールが良い、という友人の顔も浮かびました。もちろんマーケティングは行いますが、楽しみ方は消費者の方に委ねたい。この商品には我々も気づいていないようなポテンシャルがあるのではないか、そういった意味でもいち消費者として楽しみにしています」と締めくくった。

1987年に日本初の辛口ビールとして発売されたアサヒビールの「スーパードライ」、近年は「生ジョッキ缶」そして2022年の発売以来初のフルリニューアルと挑戦を続けている。「何か画期的なイノベーションをやる時は『スーパードライ』でやることがアサヒビールのDNA」と松山社長は語るが、「スーパードライ ドライクリスタル」がどのように消費者に受け入れられるのか注視したい。