【フランチャイズの開業資金】使える助成金や補助金はどれ? 活用する際の注意点は?

フランチャイズで開業しようと思った時、ネックとなるのが「資金」の問題です。自己資金だけでは足りず、融資を検討する人も多いでしょう。実は、フランチャイズの開業では、融資などと並行して「助成金」や「補助金」も活用できます。

では、フランチャイズでビジネスを始める時、どのような助成金や補助金が使えるのでしょうか。ここでは、フランチャイズ開業に役立つ助成金や補助金の情報とともに活用する際の注意点を解説します。

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■助成金・補助金とは? フランチャイズ開業にも使える?

はじめに、助成金や補助金とはどのようなものなのか、両者にはどのような違いがあるのか確認してみましょう。
<助成金・補助金とは>

助成金とは、主に厚生労働省が管轄しており、「雇用促進」や「職場改善」「能力開発」などの活動のために支給されるものです。助成金の目的は「労働者の職の安定」にありますので、事業の存続が難しい、休業を余儀なくされるといった状況の時に支援金が出されます。

一方の補助金は、主に経済産業省や地方自治体が管轄しています。国や自治体の政策目標に合わせてさまざまな分野で募集されており、事業者の取り組みをサポートするため、資金の一部が給付されるのです。

助成金と補助金の違いは、助成金がある一定の条件を満たせばほぼ必ずもらえるのに対し、補助金は「申請したら必ず受け取れる」というものではないという点です。

助成金、補助金ともに審査はありますが、助成金の審査は、形式的な要件を満たしているかどうかを確認するものです。それに対し、補助金の審査は形式的要件を満たしているかどうかはもちろん、その提案の中身が審査されます。補助金の場合、申請者が多いと倍率が高くなり、基本的には全員が採択されることはありません。

また、助成金は通年など長い期間募集されていますが、補助金は募集開始から締切までが数週間など短い場合も多いため、見逃さないよう注意しておく必要があります。

なお、助成金も補助金も基本的には返済義務のないお金です。ただし、助成金や補助金は申請してすぐに支給されるわけではなく、実際にお金を使ってからその金額分を受け取れるケースがほとんどです。そのため、「開業資金はないけど助成金や補助金でまかなえる」とは考えないようにしましょう。
<フランチャイズの開業にも助成金や補助金は活用できる>

フランチャイズは自分で開業するより初期費用が抑えられる傾向にありますが、それでも事業を始めるには大きな金額が必要になります。そんな時、助成金や補助金で少しでも経費をカバーできれば、負担軽減につながるでしょう。

「でも、自分で一から開業するわけではないのに、助成金や補助金は使えるのだろうか」と疑問に思う人がいるようですが、フランチャイズによる開業であっても活用できる助成金・補助金はいくつもあります。

もちろん、初期費用は自分である程度用意しておく必要がありますが、助成金や補助金を申請して受け取れれば、その後の事業に役立てられます。助成金や補助金で補える部分がないかよく確認し、積極的に活用していきましょう。
■フランチャイズ開業に利用できる助成金・補助金

次に、フランチャイズの開業に利用できる助成金や補助金をご紹介します。
<小規模事業者持続化補助金>

小規模事業者持続化補助金は、経済産業省中小企業庁が提供する補助金です。従業員数の少ない小規模な事業者が、新たに販路開拓や生産性向上の取り組みを始める際の費用を補助してくれます。

補助上限額は50万円、補助率は2/3ですが、条件によっては上限額が100万円や200万円の申請枠も用意されています。店内の内装のほか店内で使う家具や棚、販促用のチラシ作成費用、新商品の開発費用やネット通販のシステム構築費用などさまざまな経費に利用できます。

ただし、補助を受けられる対象の業種が決まっているほか、従業員数が一定以下であること、申し込みの時点で起業していることなどの条件があります。
<ものづくり補助金>

ものづくり補助金も中小企業庁が提供している補助金で、新しいものづくりやサービス開発に必要となる資金を援助するものです。

これまで、補助金の多くは、新しい技術の開発や市場拡大を目的としていたため、大企業や大学の研究などでしか利用できませんでした。しかし、ものづくり補助金は、条件を満たせば中小企業や開業したて、開業前の事業でも利用可能です。

補助金額は特例を使えば最大5,000万円、補助率は1/2または1/3となっており、高額・大規模な設備投資にも活用できます。ただし、事業内容に応じた複数の「枠」および「類型」が定められており、それぞれ補助率なども異なっているため、詳細の確認が必要です。
<創業・事業継承補助金>

創業・事業継承補助金は中小企業庁が提供するもので、事業の継承や再生を行う中小企業者や個人事業主を対象に支給される補助金です。新たに創業、または事業承継を契機として経営革新等や事業転換などを行う場合の経費の一部を補助してくれます。

創業・事業継承補助金には、「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新事業)」「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用事業)」「事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ事業)」の3種類があります。

いずれも補助率は1/2以内ですが、種類によって補助上限額等が異なるため、詳細をよく確認しましょう。
<事業再構築補助金>

事業再構築補助金は、政府・厚生労働省主管の補助金で、新分野展開や業態転換、事業・業種転換、事業再編またはこれらの取り組みを通じた規模の拡大など、思い切った事業再構築にチャレンジする中小企業等を支援するものです。

この補助金は、新型コロナウイルスの影響で売上を落とした企業や小規模事業者、個人事業主などを対象にしており、フランチャイズへの加盟による事業再構築を目指す場合にも使える可能性があります。

ただし、たとえば、すでに自分でパン屋を経営している人が、新たにパン屋を出店する目的でフランチャイズに加盟する場合は、事業再構築の要件を満たさない可能性が高いため注意が必要です。

申請要件には、既存事業の売上がコロナの影響により減少していることや事業再構築に該当する新しい取り組みに挑戦することのほかにも、認定経営革新等支援機関や金融機関とともに事業計画を策定し、一体となって事業再構築に取り組むことなども挙げられています。なお、補助額は1社あたり100万円から最大1億円です。
<IT導入補助金>

こちらは中小企業庁が提供するもので、中小企業や小規模事業者などが自社の事業に適したITツールを導入するための補助制度です。IT導入補助金の補助率は1/2で、最大450万円までの補助を受けることができます。

各業界で人材不足が深刻化している中、作業のIT化は急務となっています。IT導入にかかる中小企業等の負担を減らし、生産性を高め経済の活性化を狙うことがこの補助金の目的です。

商品管理やレジ・会計業務でIT化を取り入れたいという場合、この補助金が役立つでしょう。
<キャリアアップ助成金>

キャリアアップ助成金は、厚生労働省が実施する助成金です。契約社員や派遣社員として働く人々のキャリアアップを推し進めるため、従業員に対して正社員登用や処遇改善の取り組みを行う事業者に助成を行います。

キャリアアップ助成金には「正社員化コース」や「賃金規定等改定コース」など目的に応じた7つのコースがあり、たとえば正社員化コースなら、従業員1人あたり57~72万円の助成金を受け取ることができます。これを活用し、事業に役立つスキルを身に付けるためのセミナーを受講させる、資格取得のサポートをするといった取り組みが可能です。

フランチャイズ経営を行う中で、従業員の数を増やしたり従業員の正社員化を目指したりする場合は、この助成金の活用を検討してみましょう。
<生涯現役起業支援助成金>

生涯現役起業支援助成金は、40歳以上の起業家が対象になる助成金で、起業に必要な人材確保にかかる費用を支援してくれる制度です。この助成金は「雇用創出措置助成分」と「生産性向上助成分」に分かれています。

雇用創出措置助成分の要件は、起業した日の年齢が40歳以上で、雇用創出に係る計画書を提出した日から12ヶ月以内に、60歳以上の方を1名以上かつ40歳以上60歳未満の方を2名以上、もしくは40歳未満の方を3名以上雇用することが条件となっています。

雇用創出措置助成分の助成額は、起業時の年齢が40~59歳の場合は助成率1/2で最大150万円まで、60歳以上の場合は助成率2/3で最大200万円までを受け取ることができます。ただし、助成金の対象となるには起業から11ヶ月以内に申請が必要ですので、注意しましょう。
■ フランチャイズ開業で助成金や補助金を活用する際の注意点

最後に、フランチャイズ開業で助成金や補助金を活用する場合の注意点を解説します。

1.申請方法や条件、申請受付期間などをよく確認する

助成金や補助金は、申請する制度によって申請方法、条件、申請受付期間などが異なります。もし対象になっても、申請受付期間を過ぎてしまえば助成金・補助金を受け取れませんので注意しましょう。

特に、補助金は申請期間が数週間というものも多くありますので、こまめに情報をチェックする必要があります。

2.提出すべき申請書類が多い

助成金や補助金を申請するためには、制度ごとにさまざまな書類を提出しなければなりません。場合によっては、プロの手を借りて事業計画書を練る必要があるでしょう。そのため、期限ギリギリに用意を始めると作成が間に合わない恐れがあります。

また、急いで作成して必要事項などにミスがあれば、申請が通らなくなる可能性がありますので、提出書類の準備は余裕をもって行いましょう。

3.同様の趣旨の助成金・補助金を受給していると申請できない

助成金や補助金を申請しようとしても、同様の趣旨の制度ですでに受給している場合は、申請不可となる場合もありますので注意してください。まずは申請を検討している制度を整理し、どの助成金・補助金に申し込むべきか比較検討してから申請を行いましょう。

4.補助金をあてに開業しない

補助金が受け取れる前提で起業しようとすると、フランチャイズ開業に失敗する恐れがあります。補助金は、必ず受け取れるものではないからです。

事業計画を立てる際は、「補助金は絶対に受け取れる」という前提では考えず、そのうえで助成金や補助金の対象となる経費を確認してみましょう。

5.加盟料は補助金の対象にはならない

フランチャイズ事業でも補助金は活用できますが、フランチャイズに加盟する際に本部に支払う加盟料は補助金の対象にはなりません。加盟料は、本部によって定められた金額を自分で用意しておきましょう。
■制度の詳細をよく確認し、助成金・補助金を活用しよう

資金調達というとまず融資が思い浮かぶものですが、国や自治体が提供する助成金・補助金もよく調べ、できるだけ活用してみましょう。ただし、助成金や補助金は制度によって内容が大きく異なりますので、それぞれの詳細をよく確認することが重要です。

また、助成金や補助金は「後払い」が基本となります。お金が支給される時期も意識し、ゆとりを持った資金計画を立てましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら