【森永卓郎の本音】 ガソリン価格よりも優先すべきは電気代の補助

岸田総理は8月22日に自民党の萩生田光一政調会長を首相官邸に呼んで、燃料価格の高騰対策を8月中にまとめるよう指示した。その後、岸田総理は記者団に「9月上旬には国民が効果を実感できるようにする」と話したことから、9月末で終了する予定だったガソリンなどへの補助金の継続が、確実となった。
国民のなかには、補助金延長よりもトリガー条項を復活させて、ガソリン減税をすべきだという声が大きい。それは、その通りなのだが、もっと大きな問題がある。それは、電気やガスへの補助金の継続判断を9月以降に先送りしたことだ。私は、優先すべきは電気代の方だと思う。
現在、電気代に1キロワット時あたり7円の補助金が出されているが、それは8月使用分までで、9月使用分からは補助が3・5円に半減し、10月からはゼロになる予定だ。気象庁によると、今年は10月までは暑い日が続くという。つまり、9月も熱中症を防ぐためにはエアコンを使用し続ける必要がある。しかし補助金が半減すると、それだけで一般家庭の電気代が1400円値上がりする。補助全廃となれば、2800円もの負担増だ。
ガソリン価格は、スタンドに価格が表示されるので目立つが、電気代は1か月遅れで、しかも銀行引き落としなので目立ちにくい。しかし、ガソリン価格よりも電気代のほうが多くの国民に影響する。自家用車を保有しない世帯はたくさんあるが、電気を使用しない家庭は、ほぼゼロだからだ。
なぜ政府は、電気代の補助金延長を先送りしたのか。支持率を回復させるためのアメを残したのか、もしかすると、国民にものすごい電気代を見せることによって、「原発再稼働を急がないと大変なことになりますよ」というムチに使おうとしているのかもしれない。(経済アナリスト・森永卓郎)