高齢者と若者が一緒に生活する異世代ホームシェアが話題に。そのメリット、デメリットとは?

広島市西条町御薗宇に、学生向けシェアハウスと介護施設を併設した複合施設が今年度からオープンし、現在注目を集めています。
施設内には学生用の部屋が全8室あり、同じ建物内に定員18名の認知症グループホームが併設。グループホームとは主に軽度~中度の認知症の高齢者を入居対象とする施設で、調理や掃除、洗濯といった身の回りのことは、入居者自身で行うのが基本的な生活スタイルです。このグループホームにおける生活のあり方が、共同生活を送るシェアハウスのあり方と相性が良いわけです。高齢者と若者が一緒に生活する異世代ホームシェアが話題に。その…の画像はこちら >>
現在入居中の学生は、市内の大学に通う男女6名。学生が施設でのアルバイトを行い、家賃に充てることも可能とのこと。学生が介護の担い手として働く、という側面を持っています
館内は学生と高齢者が一緒に生活し、大家族のように賑やかで温かい雰囲気に包まれているそうです。認知症は会話・交流により脳を活性化させることで、進行の抑制が期待できます。入居者にとっては、より健康状態を保つという点でも利点は大きいわけです。また、学生にとっても異世代の方と楽しく交流を重ねることで、一人暮らしの心細さ・寂しさを和らげることができます。
近年、こうした異世代が同じ屋根の下で暮らす住まい・施設の形態が近年増えていますが、以下ではそのメリット、デメリットについて少し深掘りしてみます。
戸建ての住宅などを活用し、他人同士が生活するライフスタイルのことはシェアハウスと言い、この生活様式自体は古くからあります。ただし一般的にシェアハウスという場合、特に世代は限定せず、共同生活を送りたい人が自由に集まるというのが基本的な居住形態です。
一方、冒頭で紹介したような、学生などの若い世代とシニア世代が一緒に生活するシェアハウスのことは、異世代シェアハウスと呼ばれています。若者の側は、他の地域出身で進学などのために一人暮らしを余儀なくされている人が主な入居対象。シニアの側は、もともとその地域で独居暮らしをしていて、自立した生活は送れるものの、見守り・安否確認などの支援が欲しいと望んでいる人が入居対象です。
ただし冒頭の広島市のケースのように、介護施設が併設している場合は、別途施設ごとの入居条件をクリアしている必要があります。グループホームが併設している場合だと、医師から認知症の診断を受けている人、介護保険の要支援2以上の認定を受けている人、施設と同じ自治体・地域に住民票がある人、などが制度上入居条件として規定されています。
日本ではまだ歴史は浅いですが、海外では90年代初めころから異世代シェアハウスが普及しています。しかし海外の場合、高齢者の自宅に若者が居候として迎え入れる形態が多いです。一方、現在日本で注目を集めているのは、主にNPO法人などが運営元となって住まいを用意し、若者・シニアを迎え入れるという形態です。
学生向けのシェアハウスと介護施設が併設しているタイプでは、学生をアルバイトとして雇うことも可能です。ケアを必要とする高齢者が入居しているため、介護職の新たな就職先にもなります。
異世代シェアハウスに入居する高齢者側のメリットとしては、以下の点を挙げられます。
一方、異世代シェアハウスに高齢者が住むことには、以下のようなデメリットも考えられます。
若者との相違点を受け入れ、楽しめると良いですが、高齢者全員それが可能とは限りません。その意味で、入居後に充実した生活を送れるかどうかは、本人の性格・気質に依存する部分も多分にあると言えます。
異世代シェアハウスを運営する事業者側のメリットとしては、以下の点を挙げられます。
一方で、異世代シェアハウスを運営する事業者側には、以下のようなデメリット、課題もあります。
独居の高齢者が社会全体で増える中、若者との同居の中で見守りや生活支援を受けられる異世代シェアハウスは、今後とも注目を集めていく居住形態と考えられます。ただし、デメリット・課題も考えられるので、これをどう解消していくかが運営におけるポイントといえます。