9月 夏休み明け、子どもの自殺増 無理に学校行かなくても 居場所の選択肢増やして 船橋でフリースクール運営 鳥居佐織さん 【地方発ワイド】

子どもの自殺は長期休み明けに増える傾向にあり、特に多くの学校が始業式を迎える9月1日が最も多いといわれる。もし子どもから「学校に行きたくない」と告げられたら、学校以外の場所で時間を過ごしてもらう選択肢もある。校内フリースクールの設置を訴える市民団体「子どもの権利と輝きを伝えよう」の代表で、自身も船橋市でフリースクールを運営する鳥居佐織さん(51)に学校以外の居場所の大切さについて聞いた。(船橋・習志野支局 土木田祥平)
船橋市内の住宅街にあるフリースクール。開放は週2日で、小中学生14人が自由に登校している。
おもちゃや楽器がある防音の部屋と、キッチンがある静かな部屋の2通りの居場所があるのが特徴。子どもたちは自分が居心地よく感じる部屋で好きなように時間を過ごす。防音部屋では年齢もさまざまな子が一緒に騒いで遊ぶ一方、もう一つの部屋で静かに漫画を読む子もいる。
昼食は基本的に弁当を持参するが、皆で作ることも。自分たちでメニューを決めて買い物をし、レシピを調べたら協力して調理する。参加した男子児童は「レシピ通りにインドカレーを作ったら辛すぎて食べられなかった」と笑う。
◆娘の不登校
このスクールが誕生したのは、鳥居さん自身が娘2人の不登校を経験したのがきっかけ。長女はいじめ、次女はクラスが騒がしく居心地が悪く感じられたことが原因だった。
目に見えて体調を崩していた長女と違い、次女は家では元気なのに、朝、登校しようとすると泣き崩れてしまう。学校に行けない理由をすぐに受け入れることができなかったが、「子どもが辛いのは、親が自分のことで悩んでいる姿を見ることだよ」と告げられ、罪悪感で苦しんでいたことに気付いた。
「学校に行かなくとも寄り添って支えるのが大事」と感じ、次女の同級生も受け入れ、英会話教室の設備を生かして昨年、自宅にフリースクールを開設。人一倍繊細な子ども「HSC」を主に受け入れている。
スクールに通う小3女子児童(9)は、1、2年の時の担任が大声で叱る姿が苦手だった。皆の前で他の子が叱られているのを見て胸が締めつけられることが多く、「クラスの空気が嫌だった」と振り返る。
体調が悪いと伝えても保健室に行かせてもらえないことも。次第に仮病を使って休むようになったが、後ろめたさから親に話すまで時間がかかったという。
今では「同じ環境のやつらがいるし平穏で楽しい」。作曲が好きで、パソコンで曲作りに精を出す。他の子たちも体操教室に通ったり、プログラミングを学んだりと自分の興味に沿った時間の使い方をしている。
◆自主性を大事に
国の統計によると、小中高生の自殺者は増加傾向にあり、昨年は過去最多の514人。自殺の原因・動機は「学校問題」が最多の281人だった。
「無理に学校に行く必要はない」と鳥居さんは強調し、「以前は『行けない子』に問題があると思っていたが、学校の方にも問題があると考えるようになった。行けないことで落ち込まなくてもいい」と訴える。毎日、教室で授業を受け、一見理不尽に思えることも経験して社会性を身に着けるという見方もあるが、「それは私たち昭和の世代の考え方。教育と学びは別」と一蹴する。
「うちに通っている子たちは皆探求に忙しい。YouTubeやゲームから学べることもある。子どもが安心できる空間で、自主性を大事にする。それが親のすべきこと」と強調した。