北陸 この夏の天候まとめ 線状降水帯の大雨から記録的な猛暑と渇水へ 極端な天候

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北陸地方のこの夏(6~8月)は、梅雨期間には線状降水帯による記録的な大雨があり、土砂災害や冠水被害が多発しました。一方、梅雨明け後は一転して太平洋高気圧が強まって晴天・猛暑が持続しました。各地で猛暑日の日数・連続記録を更新するなど、記録的な猛暑となりました。また、新潟を中心に極端な少雨となり、農作物への影響が大きくなるなど、今年の夏は極端な天気変化となりました。
線状降水帯の大雨あり、猛暑・渇水ありの極端な天気 気温は期間を通して高温、持続的な猛暑

北陸地方では、6月11日に梅雨入り、7月21日に梅雨明け(速報値)となりました。3か月ならすと降水量は平年並みとなりましたが、降水量のほとんどが梅雨明け前に観測されており、6月2日の前線による大雨、7月12から13日の石川・富山で発生した線状降水帯による大雨など、記録的な雨量となった所がありました。梅雨明け後は一転、少雨傾向が続き、特に7月下旬から8月上旬までは各地ともほとんど降水が観測されない日が続きました、新潟では7月21日から8月27日まで38日間も降水量が0.5ミリ以上の雨を観測しませんでした。ならすと平年並みでも、雨の降り方は非常に極端な夏となりました。一方、気温は期間を通して高くなりました。梅雨明け前から気温の高い状態が続き、梅雨明け後は福井や富山で連続猛暑日の記録を更新するなど、厳しすぎる暑さに見舞われました。特に梅雨明け後は北陸9地点の平均気温が平年値を下回った日は1日もなく、持続的な猛暑であったことが分かります。
石川・富山で線状降水帯(7月12日~13日)

7月12日夜から13日未明にかけて、石川県・富山県で線状降水帯が発生しました。石川県・富山県ともに、「線状降水帯情報」が出るのは運用開始以来初めてのこととなりました。線状降水帯の下では猛烈な雨や非常に激しい雨が降り、石川県のかほくで1時間に85.5ミリの猛烈な雨が降ったほか、富山県の大山で64.5ミリ、富山空港で52.5ミリなど、北陸三県の5地点で1時間雨量の観測史上1位の値を更新しました。また、富山では3時間雨量が109.0ミリとなるなど、北陸三県の8地点で3時間雨量の観測史上1位の値を更新、11時までの24時間雨量は富山県の富山・富山空港・砺波で観測史上1位を更新するなど、記録的な大雨となりました。この影響で、各地で河川の増水や氾濫が発生しました。石川県の津幡川や能瀬川などが一時氾濫、富山県の小矢部川に氾濫危険情報が発表されたほか、富山県を中心に多数の河川で警戒レベル4相当の水位上昇を記録しました。短時間強雨により、アンダーパスの通行止めや、鉄道や新幹線の運休など、交通機関に大きな影響がありました。また、浸水被害が相次いだほか、土砂崩れも発生し、人的被害も発生しました。
梅雨明け後は一転・記録的な猛暑と極端な少雨に 記録ずくめの夏

梅雨明け後は一転して太平洋高気圧が強まって、記録的な猛暑となりました。特に7月下旬から8月上旬にかけてはフェーン現象が加わり、猛暑日が続きました。福井と富山では猛暑日の連続日数の過去最長記録を更新、今季の猛暑日日数は新潟・富山・金沢・福井ともに過去最多を更新し、特に富山・金沢・福井ではこれまでの記録を5日以上も上回る大幅更新となっています。また、最低気温も下がりにくく、日最低気温25度以上の日数は、福井と富山は過去最多を更新中、金沢も44日で過去最多に並びました。また、金沢では7月22日夜から熱帯夜が続き、今朝で41日連続熱帯夜となりました。これも統計開始以来最長を大幅更新となり、これまでの記録は1994年の28夜連続となっていました。新潟県の糸魚川では8月10日の最低気温が31.4度となり、最低気温の高い方からの国内記録を更新しました。太平洋高気圧やフェーン現象の影響で極端な少雨傾向も続いています。新潟県の新津では梅雨明け後の降水量が0ミリとなっており、津川でも平年比0パーセントの少雨となっています。新潟の8月の月降水量は2.0ミリで、8月として観測史上最少となりました。その他、富山県の朝日や魚津、石川県の小松や白山河内などでも梅雨明け後の降水量が平年比20パーセント未満となるなど極端な少雨傾向となりました。この影響で、水田が干上がってひびが入るなど、稲作を中心に農作物への影響が深刻となっています。
エルニーニョなのに晴天持続型の猛暑 今夏の猛暑の要因は複数の要素が絡み合っている

今年の夏はエルニーニョ現象が発生していました、エルニーニョ現象発生時の夏は、太平洋高気圧の日本付近への張り出しが弱く、冷夏・天候不順となる傾向がありました。しかし、今年は真逆の猛暑・晴天持続型となりました。エルニーニョ現象という要素を打ち消したものは、台風の動向が大きいと見られます。梅雨明け後から台風5号・6号・7号と相次いでフィリピン付近を通過し、日本付近で太平洋高気圧の勢力を強める働きをしました。(これを太平洋ー日本(PJ)パターンと言います。)特に台風6号は沖縄から東シナ海を迷走しました。この位置に台風がある場合、台風の東側の太平洋高気圧との位置関係により、南寄りの風となりやすく、北陸地方はフェーン現象となりました。通常、フェーン現象は一時的なもののことが多いですが、今回は台風6号が迷走し、その後相次いで台風7号・9号・11号と発生したため、フェーン現象が「持続」する形となりました。台風が相次いで発生した要因は、ラニーニャ現象の影響が残って、熱帯太平洋西部域で海面水温が高く、フィリピン付近で対流活動が活発化したためと見られます。さらに、正のダイポールモード現象になりかけていた影響で、インド洋東部付近で対流活動が不活発ったことも、フィリピン付近で対流活動が集中した要因となった可能性があります。また、三陸沖の記録的な高海水温も猛暑に加担した可能性があります。三陸沖の記録的な高海水温の影響で、北日本を中心に大気下層が冷やされにくくなり、結果、暖気が北日本まで北上しやすくなることで他地域の高温にも拍車をかけた可能性があります。その他、偏西風の北偏と蛇行により、日本付近は背の高い暖かい空気に覆われやすくなったことも要因とされています。地球温暖化や都市高温化による人為的なベース気温の上昇の影響も大きいと見られます。福井・金沢・富山・新潟の4地点ともに、データが確認できる1939年以降の約80年で平均気温は全ての地点で1度以上上昇し、猛暑日日数も4地点合計で20日以上も増える傾向です。地球温暖化が進めば、今年のような暑さは異常ではなく、ニューノーマルと化し、猛暑日や熱帯夜などがさらに増加する懸念があります。