米国 次世代「ステルス標的機」開発を再開 新型機でコスト削減? いちどポシャった計画復活に中ロの影

アメリカがステルス機能を備えた次世代「ステルス標的機」の開発計画を復活させると発表しました。中止したプロジェクトを再開するのは情勢の変化があるようです。
アメリカ国防総省は2023年8月4日、ステルス機能を備えたステルス標的機「5GAT(第5世代空中標的機 )」の開発計画を復活させると発表しました。
米国 次世代「ステルス標的機」開発を再開 新型機でコスト削減…の画像はこちら >>アメリカ以外でのステルス戦闘機として有名なSu-57(画像:ロシア国防省)。
この標的機は、高度なステルス機を再現できる性能を持ち合わせているそうで、アドバンスト・テクノロジー・インターナショナル(ATI)の関連会社であるシエラ・テクニカル・サービシズ(STS)が受け持つそうです。
標的機とは、空対空ミサイルや地対空ミサイル、対抗手段、レーダー、その他のセンサーを含む兵器や、それらシステムのテストと評価を行うときに、標的となる無人機です。必ずしも実験で破壊する訳ではありません。同機にはこれらの武器の評価に加え、ステルス機が敵機に含まれる場合の脅威を研究する目的も含まれています。
実はこの標的機は元々、2018年6月にATIから受注に向け、開発を進めていましたが、試作機が2020年10月に墜落事故を起こしたため、プロジェクトが中止されていました。
今回、プロジェクトを再開した背景には、中ロの動向も関係しているようです。
中国人民解放空軍のステルス機能を有す第5世代ジェット戦闘機であるJ-20は、配備数がここ数年急激に増え、現在140機ほどになっています。また、ロシアが現在配備中のSu-57に加えて、新型のSu-75「チェックメイト」を2023年中に初飛行させようとしているなど、アメリカ軍以外の国もステルス機能を有した戦闘機を実戦に投入できる準備が整い始めています。
また、アメリカ軍が使っている、ステルス機の機体寿命の延長も影響しているようです。本来は退役したステルス機を標的機化するプランも考えられていたそうですが、コスト縮減を目的に配備中のステルス機の延命が進んでいるため、なかなか標的機が手に入らず、結局、標的機を新たに発注する結果になったようです。
1機あたりのコストに関しては明言されていませんが、国防総省によると、全てのオプションなどを含め、総額7720万ドル(約110億円)になる契約を締結したそうです。なお、STSは標的機について1機あたり1000万ドル(約14億円)以下をめざしていると過去に述べていたことがあります。標的機としては高めかもしれませんが、現在アメリカの主力ステルス戦闘機であるF-35と比べると9分の1ほどのコストです。