社長交代でトヨタのEV戦略はどうなる? 記者会見で新社長が語る

トヨタ自動車は2023年4月1日に発足する新体制に関する記者会見を開催した。社長就任が決まっている佐藤恒治さんは電気自動車(バッテリーEV=BEV)について、「従来とは異なるアプローチで開発を加速」すると宣言。具体的には「次世代のBEV」を2026年を目標にレクサスブランドで開発していくと明言した。

○トヨタはEVに舵を切った?

佐藤さんによれば、トヨタの電動化は「マルチパスウェイ」が大原則。エネルギーの環境や顧客のニーズ、経済状況は地域によってさまざまなので、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、燃料電池自動車(FCV)など多様なラインアップで事業を進めていくとする。あくまでBEVはマルチパスのひとつという考えだ。今回の記者会見での発言も、「トヨタがBEVに舵を切った」とは取らないでほしいと釘を刺していた。

マルチパスウェイ戦略では足元のCO2排出を減らすことが大切との考えから、省エネの観点でクルマの電動化を進めながら、中長期的にBEVへの転換を図っていく方針。短期的な観点での主力はHVということになるのだろう。

なぜレクサスからなのか。この点について佐藤さんは、「BEVの進展は先進国が中心」であり、レクサスがカバーしている地域でBEVの需要が高いとの見方を示した。

トヨタのBEV展開は遅れているとの見方もある。例えば初代「リーフ」を2010年に発売した日産は、すでに

軽自動車の完全電動化にまで着手しており、実際に「サクラ」を市場投入して好評を博している。輸入車勢にも日本へのBEV投入に積極的なブランドは多く、例えばメルセデス・ベンツ、BMW、アウディらはすでに複数のBEVを日本で発売済みだ。一方のトヨタは、2022年に本格BEVの第1弾として「bZ4X」を発売しているものの、ほかの選択肢といえば超小型車の「C+pod」かレクサスの「UX」くらいしかなかった。トヨタとレクサスが扱う車種(分母)の多さを考えれば、実際に買えるBEVの数は確かに少なく感じる。

会見では「他社の動きを見ながら、BEV展開をあえて遅らせていたのか」という鋭い質問も飛んだが、佐藤さんは「BEVでどんな価値を提供するのか、我々らしいBEVとは何かについて自問自答を続けてきており、目指すべきBEVの在り方や事業構造が少しずつ見えてきた。BEVを事業戦略上、他社対抗という位置づけでは捉えていない」と回答。レクサスのプレジデントを務めてきた佐藤さんとトヨタの豊田章男現社長の間では、BEVに関する深い議論をかなり前から続けてきたそうだ。

2030年にトヨタで350万台、レクサスで100万台のBEVを売るという目標は不変とする佐藤新社長。あと7年でと考えるとかなり野心的な数字に見えてくるが、新体制のトヨタがどんな手を打ってくるかに注目したい。