〈奈良4歳女児暴行死・十二指腸に穴〉金髪でイキった改造車を乗り回していた容疑者男を溺愛する祖父母は「一睡もできない」と落胆。過去には女児を「怒鳴ったり叩いたりしている」と通報も

奈良県橿原市のマンションで、交際女性の4歳の娘に暴行を加えて死なせたとして奈良県警は9月8日までに、大阪府門真市下馬伏町の建設作業員、山下翔也容疑者(27)を傷害致死容疑で逮捕した。山下容疑者と亡くなった女児の母親が知り合ったのは今年1月だが、3年前から女児への虐待を疑う通報が寄せられており、県警も関連を調べている。
調べによると山下容疑者は6月18日午前2時ごろから6時半ごろにかけ、同マンションの1室などで田川星華ちゃん(4)の腹部を圧迫するなどの暴行を加え、翌19日に死なせた疑い。星華ちゃんは19日に嘔吐を繰り返して意識を失い、母親と山下容疑者が病院に搬送したが、死亡した。腹膜炎が広範囲にわたり、十二指腸に穴が開いていたことから、同病院から虐待の可能性があると通報を受けた県警が捜査していた。山下容疑者は「全く身に覚えがありません」と容疑を否認しているという。
山下翔也容疑者(本人SNSより)
山下容疑者は星華ちゃんの母親と今年1月にSNSを通じて知り合い、4月ごろからは週末になると母娘の住む同マンションを訪れるようになったという。社会部記者はこう語る。「県警は母親のスマートフォンに顔などにアザをつくった星華ちゃんの写真が複数枚保存されていたことなどから、山下容疑者が早い段階から虐待をしていたとみて調べを進めていました。そして5月に星華ちゃんの顔を殴って全治2週間のケガを負わせたとして8月16日に山下容疑者を傷害容疑で逮捕、9月5日に奈良地検が同罪で起訴、翌6日に“本丸”の傷害致死容疑で再逮捕したという流れです。山下容疑者はいずれの罪状についても『全く身に覚えがない』と完全否認の構えです」山下容疑者による虐待は日常的に繰り返されていた疑いがあるが、虐待はそれだけでは収まらないようだ。事件を受けて記者会見した奈良県高田こども家庭相談センターは、星華ちゃんについて3年前から「虐待の疑いがある」という通報を受けていたことを明らかにした。星華ちゃんと母親は2020年9月に別の県から同センターが管轄する橿原市に転居。同年10月下旬に「こどもを怒鳴ったり叩いたりしている」という通報が相次いで2件寄せられたため市が調査に訪れたが、このときは外傷など虐待の兆候を確認できなかった。しかし、同市移住前にも星華ちゃんは「虐待のおそれあり」と一時保護されていた経緯も明らかになり、同市は見守り対象として家庭訪問を続けていたという。そして今年5月12日には星華ちゃんが受診した歯科医から「左目が充血しており、山下容疑者にやられたと言っている」と同センターに通報があり、同17日に市が母親に聞き取りをしたものの、この際も虐待の兆候が認められなかったという。山下容疑者とは、いったいどんな人物なのか。祖父母の代から住んでいるという大阪府門真市の自宅周辺を訪れてみた。山下容疑者は母と祖父母と同居し、近くにもう一軒ある家に父が住んでいるようだ。
山下容疑者が住んでいた自宅(撮影/集英社オンライン)
「ああ、山下さん。あのお宅はもともと翔也くんのお母さんの実家ですね。家族構成でいうと翔也くんと3~5歳離れた弟、ご両親、祖父母の計6人ですか。どのタイミングか詳しく覚えてないけど、お父さんが『子供が生まれて手狭になったんでもう一軒借りた』と言ってたのがもう一軒の家で、一時期は両方の家を行ったりきたりしてましたわ。保育園のイベントには家族総出で来てましたし、兄弟ともご家族みんなに可愛がられていましたよ」近所に住む女性はさらに続けた。「ご両親とも気性が激しいというか、ヤンキー気質というか。お父さんは小柄だけど作業着にサングラス姿の強面で、お母さんも茶髪のヤンキー風です。翔也くんは小学生のころはよく友達を叩いていて、それも加減がよくわからずにやっていた印象がありますね。高校生になると髪を金髪に染めたりもしていました」
山下容疑者は、近所界隈ではコミュニケーションが取りにくい存在だったようだ。近くに住む男性はこう振り返る。「もう3~4年前になるかな。家の前でちょっとイキった感じの改造車を洗車しとってな。ここらの道は狭いから車一台停めてられると他の車が通れないんやな。だからクラクションを鳴らすと、謝りもせず威圧するようにこちらを見て車に乗り込んで、乱暴にドア閉めて走り去っていったわ。家のなかからも男同士が言い争う声だとか、怒鳴り声もときどき聞こえてくるわ、で。『うるさいわ。黙れや』みたいな感じでな」
逮捕された山下容疑者の自宅
同居していた祖母は、山下容疑者をかわいがっていたという。近所に住む別の女性はこう語った。「大人になってからも、スーツ姿の翔也さんを玄関で見送るおばあさんの姿を何度も見てますから、溺愛してたんでしょうね。翔也さんは去年の末くらいから、親族と思われる男性と作業着姿で工具をたくさん積んだ白いバンに乗っているところを朝夕見かけていたんで、親族の下で働いてたんだと思います。でも春ごろからは姿を見かけなくなったので、交際していた女性の家に入り浸ってたのかもしれないですね。小中学生の頃は元気で活発な明るい子って感じでしたけど、成人前くらいには白くてイカついセダンの車に乗ってたり、金髪に染めてたりとちょっと派手でやんちゃな子になりましたね。でもいくら派手でも、ひょろっとしてるから暴力的には見えないんで、暴行して事件を起こすなんて驚いてます」中学生時代の同級生から見ても、山下容疑者は騒動を起こすような存在ではなかったようだ。「翔也は中学時代は同じクラスでしたけど、正直全然印象に残ってないです。やんちゃではないけど、陰キャでもないし、けれどおとなしくはなくて、モテるタイプでもなかったし、ほんとに特別目立つ存在でもなかったです」別の同級生はこう振り返った。「翔也とは中学1年のときに同じクラスだったんですけど、やんちゃなメンバーにいじられて笑いを取るような感じで、僕としては面白いやつだなと思ってました。でも親近感がわきやすいのか、おとなしい子たちとも仲良く話してたし、良い意味で中立的立場だったと思います。部活はソフトテニス部で結構一生懸命にやってたんで、部内でもトップクラスに入るくらい上手かったみたいです。頑張り屋なところもあるのを見てきてるから、こんな事件を起こすなんて正直驚いてます」
中学時代は面白いヤツだったという(本人SNSより)
溺愛していた孫の起こした事件に、祖父母が衝撃を受けたことは間違いない。別の住民女性は、年老いた二人の元気のない様子を目撃していた。「事件後に、おじいちゃんが気を落としたようにテレビの前に座っているのが窓越しに見えました。会話も聞こえてきて、『一睡も寝られへんなぁ。お前は気晴らしにでも行ってこいや』とおばあちゃんに声をかけてました。だからなのか、おばあちゃんは買い物に出掛けていきましたね」山下容疑者と星華ちゃんの母親は一体どのように出会ったのだろうか。母親の知人が語る。「セイちゃん(星華ちゃん)のお母さんは以前は三重県に住んでいました。そこで元の旦那と別れて奈良県に出てきたのですが、奈良や大阪のキャバクラで働き生計を立てていて、お客さんともセイちゃんを連れてご飯に行くこともあったようです。山下容疑者との出会いはどこだったのかわかりません。ただ、お母さんは彼氏にする条件は『車持ち』と言うほどで、大のVIPカー好きでした。山下容疑者ってセダンの改造車に乗ってますよね?4月にセイちゃんとお母さんと山下容疑者で自宅アパートに戻ってくるのを見かけて、その時もセイちゃんにバイバイってしたらニコニコ笑ってバイバイを返してくれて。私から見てもおとなしいとっても可愛い子でした。何でこうなってしまったのか…」
愛くるしい星華ちゃん(知人提供)
否認を貫き、動機も黙して語らないという山下容疑者。幼な子の尊い命が奪われたことが無念でならない。※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]X(Twitter)@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班