文部科学省が提出した予算概算要求で研究開発のトピックとして掲げられているのが、JAXAが研究している「静粛超音速旅客機」です。この機はどのようなものなのでしょうか。
文部科学省が2023年9月、令和6年度予算概算要求を財務省に提出しました。そのうち38億5000円が、次世代航空科学技術の研究開発として盛り込まれ、そのなかにJAXA(宇宙航空研究開発機構)が研究を進めている「静粛超音速旅客機」に関するものが含まれています。この超音速旅客機はどのようなものなのでしょうか。
異形の「和製コンコルド」誕生なるか JAXA開発「静かで燃費…の画像はこちら >>JAXAが公開した超音速機旅客機のイメージ。
JAXAによると、これまでのジェット旅客機は音速に満たないマッハ0.8(約989km/h)程度で飛行しているのに対し、超音速旅客機はそれより速い速度で運航ができるため、移動時間の短縮などのメリットがあるとしています。
そうした“超音速旅客機”として実用化されたのは、かつて英・仏が共同開発した「コンコルド」のみ。JAXAは「コンコルド」について、燃費が悪いことにより運航コストが非常に高く、超音速飛行すると大きなソニックブーム(衝撃波)が発生することから、陸上を超音速飛行することができず、路線が限られてしまい、ビジネスとして成功しなかった一因だったとしています。
JAXAではこれまで超音速で飛行できながら、空気抵抗を下げて燃費を良くする技術、ソニックブームが小さくなる機体設計技術のコンセプトなどを実証してきました。この試験機の設計案は「コンコルド」と似ているものの、主翼が途中でせりあがっており、エンジンを胴体後方上部に設置することでソニックブームを遮蔽するなどの工夫が凝らされています。
エンジンはないものの、このソニックブーム低減化のための設計を施した超音速試験機をJAXAは制作しており、滑空で超音速飛行しソニックブームの計測をするなどの検証をすでに実施済みです。
JAXAはこのプロジェクトで、乗客数36~50人を乗せマッハ1.6で飛び、3500海里(約6300km)の航続距離をもつ超音速旅客機の設計を目標に、先述のような各種試験や検証を進めています。