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「ありゃ、ないのか。残念だな」
「お父さん、こっちこっち」
「あ、あった。やった」
鈴木家の夏休みの光景です。家族3人とも仕事に休みがとれたこの日、向かった先は横田基地(東京・福生)の近くにある菓子メーカー「天乃屋」の工場です。とは言っても工場見学をするのではなく、目的地は工場の横にある天乃屋工場直売店。ここに歌舞伎揚を買いにいくことでした。
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わたしの家族はお煎餅やかき餅の類が大好物で、歌舞伎揚もそのひとつ。米粉を炊いて、餅状に伸ばし、型抜きをして乾燥させたものを油で揚げて、そしてあの甘辛いしょうゆベースのタレに漬ける。美味しいに決まっています。
ちなみに天乃屋の歌舞伎揚の表面には12種類の歌舞伎の家紋が型押しされています。これ、知ってました?
いやいや話が横道にそれました。お得な経済学の話でしたね。近所のスーパーで売っている歌舞伎揚をなぜ片道一時間かけて工場まで買いに行くのか? それは“久助(きゅうすけ)”、つまり割れせんを安く買うためです。
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お煎餅の工場の製造過程でできる、割れたり欠けたりしたものを集めて袋詰めした商品を久助といいます。もともと和菓子で使う上質なくず粉の久助葛(きゅうすけくず)から出た江戸っ子の洒落らしくて、割れた煎餅はクズだから久助と呼ぶようになったのだとか。他にも諸説ありますが。
この久助、いわゆる訳あり商品なので安く売られます。だいたい半額あたりが相場でしょうか。そして世の中には久助のファンも結構いるのです。わたしもかねがね思っていたのですが、固い煎餅はふたつに割って食べるものですから、もともと割れているほうが便利ですよね。安くて食べやすい久助、わたしは大好きです。
そして歌舞伎揚ですが、定番の歌舞伎揚の久助は「こわれ歌舞伎揚」の商品名で近所のスーパーでもたまに販売しています。ですから工場に行く目的はそこではありません。天乃屋が製造しているもっとレアものの歌舞伎揚の久助を探しにいくのです。
天乃屋工場直売店では、歌舞伎揚以外にも日頃あまりお目にかかれないレア商品が全部で7~80種類も売られています。さらに工場でできたこわれ煎餅が日替わりで登場します。こわれ歌舞伎揚は工場直営店では定番として売られていますが、ファンの間で「これを見つけたらラッキー」と言われているのがスーパーで二番人気の「古代米煎餅」のこわれもの。
そして実は鈴木家が「あったらいいな」と思っていたのが歌舞伎揚のプレミアムブランドである「瑞夢」えび味の久助です。
瑞夢はワンランク上の歌舞伎揚として発売された商品で、定番のしょうゆ味と、もう一種類甘えびを濃厚に練り込んだえび味が販売されています。わたしのような愛知県出身者にはたまらない贅沢な味ですが、じつは瑞夢は高価な商品です。
近所のスーパーで一袋280円ぐらい、そして中に入っている煎餅は7枚だけ。袋を開けたばかりなのに、
「美味しいねえ」
と言いながらテレビを見ているとあっという間になくなっちゃうのです。
そこで冒頭のシーンです。1時間のドライブを経て天乃屋の工場に車を乗りつけて工場直売店に入って久助のコーナーを探したところ、いろいろなこわれせんが20種ぐらい並んではいるのですが、瑞夢のこわれせんはしょうゆ味しか置いていない。
「ありゃ、ないのか。残念だな」
と思ったところ、遠くから娘が手招きしています。
なんと今日の特売コーナーに瑞夢のえび味のこわれせんがしっかりと山積みに。しかも10枚程度入った久助の袋が通常200円のところを150円の特売で売られているではないですか。
それ以外にも普段見かけない天ぷら塩味やホタテ醤油味、シークワーサー味など変わった揚げせんや、定番の煎餅など、レジでまとめて2,700円分も買いました。
普通に買ったらゆうに6,000円分になるぐらいの数の歌舞伎揚、今日は大漁です。こうして鈴木家の夏休みはお得満載で過ぎていくのです。
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「工場直売所でのお得な買い物術」をテーマにお届けしました。