〈奈良4歳児暴行死の謎〉母親の新証言「うっかり星華の腹部を圧迫してしまったのかもしれません」…容疑者の担当弁護士は「翔也くんは一貫して『身に覚えがない』と話しています」

奈良県橿原市の田川星華ちゃん(4)が虐待を受け死亡したとされる事件で、母親Aさん(29)の交際相手で、奈良県警が傷害致死などの容疑で逮捕した山下翔也容疑者(27)は一貫して容疑を否認している。Aさんとの関係性や星華ちゃんを巡る一連の経緯は、山下容疑者の友人たちの証言として♯2で伝えた。今回はさらに山下容疑者の担当弁護士が取材に応じ、専門家の立場から今回の事件の“不審点”を語ってくれた。
取材に応じたのは山下翔也容疑者の刑事弁護人を受任した男性の弁護士(兵庫県弁護士会)。インタビューは9月11日に行った。詳細を余すところなく報じるため、以下に一問一答形式で記述する。――まず星華ちゃんが亡くなった6月19日の状況について。星華ちゃんの体調が悪化し、山下容疑者の車で搬送した際に、後部座席でAさんが意識を失った星華ちゃんの心臓マッサージをしたと聞いてます。「そうですね。今朝、検察事務官に電話して、Aさんが9月8日の検事調べでそういう供述をしたと確認しました。その検事調べの前に、私はAさんと電話で話して『6月19日に山下翔也が運転する車で星華を病院に搬送したとき、私が星華の蘇生マッサージをしましたが、パニックになっていたためうっかり星華の腹部を圧迫してしまったのかもしれません。 今日の検事調べで話すつもりです』とおうかがいしました。それを受けてすぐ、検察庁にその旨を検事調べで聞いてもらうように連絡していたのです」――5月の傷害事件に関しては、山下容疑者は身に覚えがないと否認したあと一貫して黙秘しているわけですよね。「黙秘ではなくて否認しているというのが正しいと思います。一貫して身に覚えがないと言っています。黙秘ではなく喋ってはいると思います。だから一貫して否認をしているというのが正しいですね」
星華ちゃん(知人提供)
――ほっぺにできたアザは殴った跡ではなくて「りんご病」だったという診断を受けたとAさんも山下容疑者も話していると聞きましたが、診断書は手元にあるんですか。「それが非常に不可解なのですが、私はAさんに診断書を発行してもらうようにお願いしたのですが、病院が発行してくれなかったとおっしゃるんですよ。理由を聞くと『弁護士に提出するからと発行を依頼したところ、ダメだと断られた』と」――そういうケースはよくあるのですか?「少なくとも私は知りません。普通、出してくださいと言えば出してくれます。Aさんとは8月22日にレンタルオフィスで3時間ほどお話をうかがい、その後にすぐ『(診断書は)無理でした』と電話がかかってきました」――それ以降、Aさんと連絡は取れているのですか。「先ほどの検事調べの直前、9月8日の午前中の電話で『私が腹部を圧迫したのかもしれません』という衝撃的な証言をいただき、それを検察調べでお話いただくようお願いして了解を得ました。それでその日の夜に電話したら『実は私はもう弁護士さんを頼んだので、今後はそちらを通してください』と言われたので、彼女と話したのはそれが最後です」
母親のAさんに抱っこされる星華ちゃん(知人提供)
――Aさんが腹部を圧迫したかもしれないとなると、話が全く変わってきませんか。「おっしゃる通り話が最初から変わってきます。それが本当なら、翔也くんを犯人と決めつけて起訴できるのかということになりますよ。刑事訴訟法では起訴をするためには、疑いを容れない程度まで立証しなければならないので、彼女がそう証言しているのにも関わらず起訴できるのかという問題になってくるかと思います」
――5月の件(星華ちゃんの顔を殴ってケガをさせた傷害容疑)に関しても山下容疑者は「身に覚えがない」と話していますが、これはどの程度のレベルの話でしょうか。「100%での否認です。『うっかり何かをしちゃったかもしれない』とかそんなこともないレベルです」――Aさんは何のために弁護士を立てたのでしょうか。「おそらくマスコミ対策ではないかと思うのですが。あともうひとつ、文春オンラインに(山下容疑者は)180センチと書いてありますが、毎日接見してる私にはそんな長身に見えないので翔也くんのお母さんに聞いたら『168センチじゃないか』ということでした。だから(文春がタイトルで報じたAさんの連れ添っていた男性は)違う人なのかもしれません。彼女が一緒にいたのは翔也だけじゃない可能性がありますよね」
身長は実際168センチくらいだという山下容疑者(本人SNSより)
――警察の彼女側への聞き取りがあまりされていないようにも感じます。「おっしゃる通り。私が今回不思議に思うのが、警察がどうやら彼女の言うことを100%信じている感じなんです。なぜ翔也くんだけを疑うのかが不思議なんです」――山下容疑者と出会う前、三重県の児童相談所で星華ちゃんが一時預かりになった経緯や、橿原市に転居したばかりの3年前に虐待を疑われて通報されたことなどは、警察は問題視していないのでしょうか。「例えば3年前のことも一時預かりのことももう報道されていますが、取り調べで翔也くんが刑事さんにそのことを言うと『3年前のことは一切関係ない』と言われたそうです。なぜか知らないけど『100%彼女が真実を語っていてお前が嘘をついている』という前提で取り調べをしているようです。任意捜査の段階では二人とも疑われていたようですが、翔也くんだけ逮捕された。僕がAさんから聞いてるのは、どの時点かはわかりませんけど、『あんたの疑いは晴れた』と刑事に言われたそうです。なぜ彼女の疑いだけ晴れて、どこで翔也くんの単独犯という話になったのか。何が決め手となってこんな天と地ほどの差が出ているのか」――動画でもあるのでしょうか。「そういう動かぬ証拠があればわかるのですが、それも別にない。ほっぺたを触っていたことは認めているんですよ。説教するときにちゃんとこっちを向きなさいということを翔也くんは『アゴクイ』と表現するんですが、そういうことはしたけど、アザができるほどつねったりなんかしてないと。『指一本触れてないとは言いません。こちらを向かせました』と言っています。だけどAさんは『翔也がつねった』と証言しているわけですね。僕が知る限り翔也くんに前科はないし、そういう兆候もまったくありませんでした。僕も驚きましたけど彼は仲間内の評価がものすごく高くて、みんな『絶対にやってない。そんなやつじゃない』と口を揃えてます」
A子さんの自宅(撮影/集英社オンライン)
――星華ちゃんが亡くなった当日の様子について、山下容疑者はどう説明していますか。「ずっと3人一緒だったと言うんです。ところが一昨日会ったときに彼から聞いた話では、8月26日付けのAさんの供述調書に驚くべきことが書いてあったというんですよ。3人で寝ていたのに彼が隣の部屋に星華ちゃんを連れ出したという内容の調書が存在するらしいです。彼は『まったくそんなわけがない、そんなことしてない』と話していました」――つまり、山下容疑者に小児性愛嗜好があるような調書が出来てるということですか。「そういうことですよね。何かそっち系の話に持っていってるというか」――警察がミスリードしている可能性はありませんか。「Aさんはすごく誘導されやすい性質というか、警察の取り調べでは警察に都合のいい話をして、その一方で僕には先ほどのように『もしかしたら自分がパニックになってうっかりお腹を押してしまったかもしれません』なんて話をするわけです。それを聞いて『これでこの事件終わったな(山下容疑者の疑いは晴れたな)』とうれしくなってしまったほどです。その可能性が存在するなら彼ひとりを起訴するのは無理ですから。ところが警察には『翔也がひとりで隣の部屋に星華を連れてった』みたいな話をしてるわけです」
――Aさんが仕事に行っている間、山下容疑者が星華ちゃんを預かったりはしていたんですよね。「5月4日に関してはまさにその通りで、二人きりだったってことです。でも6月19日に関しては『絶対に二人きりだったことはない』と言っています」――山下容疑者の現在の状態はいかがですか。「Aさんの供述にほとんどかかってるわけですが、それに一喜一憂していますね。彼女が『こう言ってる』と聞いては喜び、彼女が『こう言ってる』と聞いてはがっかりするというか、その繰り返しです」
星華ちゃん(知人提供)
――まだ恋愛感情もあるのでしょうか。「翔也くんが彼女のことを好きなのは間違いないんです。私が初めてAさんとお会いしたとき、彼女に頼まれて持っていたレポート用紙を貸してたんです。彼女はその場で『翔也へ』というタイトルで『翔也のこと信じてるから』『戻ってくるのを待ってるから』とかすごい愛情あふれる手紙を書いて、翔也くんに出したんです。あともうひとつ私が頼まれたことがあります。翔也くんのお母さんとおじさんが裁判所から接見禁止を解除してもらったことを知って、彼女は『私も翔也に会いたいから解除してほしい』と言い出したのです。だから私が接見解除の申立をしようと準備していたのですが、彼女が突然つけたという弁護士と話したところ『彼女は翔也とはもう二度とかかわらないと言っている』と伝えられました。その少し前に、彼女からは『私の接見禁止解除はどうなりましたか?』と督促までされていたので、『もう一度だけ解除の申請をどうするのか確認してください』とその弁護士に頼んだところ、1時間後に『撤回する』と電話がかかってきました。ひとつ言えるのは、Aさんは相手によって言うことががらりと変わるということ。私も長く弁護士をやっていますが、この方が何を考えてるのかわからないです」
山下容疑者と星華ちゃん(友人提供)
奈良県警の捜査と奈良地検の判断に、注目が集まっている。※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]X(Twitter)@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班