鈴鹿山脈の伏流水で作った氷に、鈴鹿抹茶の自家製シロップ。三重県鈴鹿市の魅力がギュッと詰まった「抹茶ミルク」のかき氷を目当てに、連日大勢のお客さんで賑わうお店があります。それはカフェでもなければレストランでもなく、なぜか人形店です。
三重県鈴鹿市で暑い時季、続々と人がやって来るお店があります。鈴鹿駅から南へ約5キロ、国道23号線から少し入った場所にある「人形のヒロモリ」です。
昭和58年(1983年)に創業し、県内最大級の人形専門店で、ひな人形や五月人形など約300点を展示販売しています。地元でも評判のお店ですが、魅力は人形だけではありません。
女性客:「今日はかき氷を食べに来ました。人形を見に来たんじゃなく、かき氷を食べに来ました」もうひとつの魅力は「かき氷」。人形のヒロモリは「かき氷」が人気の人形店です。
女性客:「ふわふわでとろっと溶けていく、お口に入れると」男の子:「でっか~い」ボリューム満点ですが、フワフワ食感でペロリと食べられます。駅や繁華街から少し離れているにもかかわらず、広い店内は満席です。
切り盛りするのは、3代目の広森祐介さんと、妻の依里(えり)さんです。
かき氷に使う「氷」を見せてもらいました。
3代目の広森祐介さん:「こちらが当店で使っている氷。鈴鹿山脈の伏流水を使った氷になります。食べたときに、ふわっとしたくちどけの良いかき氷になりますので」鈴鹿山脈の伏流水を48時間かけて凍らせ、不純物を取り除いたキメの細かい「純氷」を使用しています。
削り方にもこだわりがありました。祐介さん:「歯を立てるとこういう状態、シャリシャリの氷です。雪が降ったみたいな自然な状態。(歯を)ミリ単位で常に調整して、ふわふわな状態(に仕上げる)」
シロップは毎朝、店で手作りしています。中でも抹茶は地元産です。妻の依里さん:「抹茶は、地元の鈴鹿抹茶を使っています。色もキレイで風味もすごくいいです」三重県はお茶の生産量が全国トップ3に入っていて、中でも鈴鹿市は寒暖差が大きく、味や香りに優れた質のいい茶葉が育つといわれています。
自家製シロップは、鈴鹿産の抹茶に水あめなどを加えて作ります。
依里さん:「日が経つと風味が変わって来るので、やっぱり作りたてが一番おいしい。おいしいものを食べていただきたいので毎朝作っています」くちどけの良い鈴鹿の氷に、風味豊かな鈴鹿の抹茶シロップをたっぷりかければ完成。1番人気の「抹茶ミルク」は800円です。
抹茶のほのかな苦みと、甘いミルクが絶妙にマッチし、口の中に入れた途端、ふわっとなくなるくちどけの良さです。
他にも、沖縄県産のコクのある黒糖を使った「黒みつきな粉」(800円)や…。
甘酸っぱい「いちごミルク」(800円)など…。
9種類を楽しむことができます。
お店では、もともと人形を展示していたスペースを空けて席を作っていて、人形を見ながらかき氷を食べることができます。
午前11時の開店前から待っていたお客さんが注文したのは「抹茶ミルク」です。お客さんの半数が注文するといいます。
依里さん:「シロップは鈴鹿抹茶を使用しているんですけど、抹茶からたてて毎朝手作りで、風味と色味がきれいだと思います」女性客:「う~ん、こんなにフワフワだもん。おっしゃるとおり、すぐになくなる」別の女性客:「いい感じ、薄くもなし、いい香りがして」
女性客:「ふわふわと雪みたいな感じで溶けていきます。夏になったら来ようと思っていて、孫が夏休みになったので来ました」2022年から通っている家族も絶賛です。
父親:「ボリュームもあって、氷もふわふわ、全然他と違う」母親:「人形店でかき氷というイメージがなかったので、ちょっとびっくりしました」1日で最も暑くなる午後2時過ぎ、続々とお客さんがやって来て、待ちスペースにも10人ほどが待っていました。
広い店内がお客さんでいっぱいになりました。
忙しくなると、妻の依里さんも一緒にかき氷を作ります。
男性客:「おいしい」皆さん嬉しそう。
人形店で「かき氷」を始めた理由を聞きました。
依里さん:「節句人形のシーズンオフは夏場。夏場にここでなにかできないかと考えていて、そこで氷がピッタリはまった」売上が落ちる夏に、かき氷でお客さんを呼ぼうというのがそのきっかけだったといいますが、それだけではありません。
祐介さん:「実はひな人形とかき氷は、古いつながりがあるんです。ひな人形の始まりは平安時代といわれていまして、かき氷も平安時代に生まれたといわれています。清少納言の枕草子という書物の中に“削り氷(けずりひ)”というのが記載されておりまして、平安時代にかき氷を食べたというのが始まりとされています」平安時代に清少納言が、氷を削って食べたとされる「削り氷(けずりひ)」が、かき氷の原型ともいわれています。
同じ平安時代発祥といわれる「ひな人形」を扱っていたことも、かき氷に挑戦した理由の一つです。
全国から氷を取り寄せ、シロップも試行錯誤しながら納得のいく味に。陶器の器に盛り付け、和風なかき氷に仕上げました。2020年にスタートさせたところ、おいしさはもちろん、人形店で食べるかき氷というのが話題となり、大勢のお客さんが訪れるようになりました。
女性客:「人形屋さんにかき氷ができていると聞いたけど、信用できなくてスマホで検索したら、あった!」別の女性客:「すごく素敵、お人形さんも周りに置いてあって、静かに食べられてとってもいいと思います」待ち時間に人形を眺める親子もいます。
女性客:「待っている間に人形を見て楽しめたので、子供たちも退屈せずに待っていられた。次、子供が生まれたら『これ買う?』みたいな話もあった」別の女性客:「あまり来る機会がなかったので、かき氷でこのお店を知ったので、次の子供が生まれたときはここで買いたいなと思いますね」これがお店のもう一つの狙いです。祐介さん:「節句人形店はすごく敷居が高くて入りづらいというイメージがある。かき氷を始めることで気軽に来ていただいて、食べるついでに少しでも人形に触れてもらえたらありがたい。本業はあくまでも節句人形店なんですけど、本業と一緒くらい忙しくなってきていますのでありがたいですね」2023年のかき氷の営業は9月18日までだということです。2023年8月16日放送