「造ってまったで」方針転換の真意は…名古屋市長が木曽川導水路の事業計画認める 就任以来「水余り」と反対

これまで木曽川の水だった名古屋の水道水に、将来、揖斐川の水も加わるかもしれません。名古屋市の河村市長は、2009年に撤退を表明した徳山ダムから導水する事業について、計画を認める方向に転換しました。河村名古屋市長:「(徳山ダムを)造ってまったでいかんわこれ、問題は。そうなった以上は用途を工夫して、市民の皆さんのためになるようにするのが市長の仕事じゃないかと。独断じゃないけど、十何年悩んどったわけですこれ」「造ってまったでいかん」。14日午後、記者団にこう話した名古屋市の河村市長。15年前に完成した徳山ダムから名古屋へ導水する事業の計画を、一転、認めることを明らかにしました。
徳山ダムは2008年、「治水」「発電」「利水」などを目的に、岐阜県揖斐川町に総事業費3300億円で建設されました。
しかし、この多目的ダムの水は現在、一滴も利水に使われていません。
徳山ダムの水を使うため計画された、全長43キロの地下トンネルなどを造り木曽川へと流す木曽川水系連絡導水路は、国と東海3県、名古屋市で890億円を負担し、2015年度までに完成する予定でした。
しかし、実現はしていません。河村名古屋市長(2009年):「私としてはいらんのではないかと。私は水については相当勉強もしてきましたので、水余りだと思っていますけど。今まで議員としていらんと言ってきた本人ですから、それは貫かないかんのですよ」
2009年、市長に就任した直後の河村市長は、「水余り」を理由に事業計画の見直しを表明しました。 河村市長就任直後、大型公共事業の見直しを進める民主党政権が成立。「コンクリートから人へ」を掲げ、そのメスは木曽川導水路事業にも入りました。前原国交相(2009年当時):「平成21年度内に用地買収や本体工事などの各段階には新たに入らないことといたします」 東海3県や名古屋市を巻き込んだビッグプロジェクトは、凍結されました。

あれから14年経った14日、河村市長はスタンスを大きく転換しました。河村名古屋市長:「活かす道はないかと、それを考えるのが市長の仕事だもんで。安心・安全でおいしい水道水の安定供給。流域治水の推進」Q.なぜこのタイミング?14年間をどう市民に説明する?河村名古屋市長:「そんだけ悩んだということですわ。いらん工事だと言いましたから、これは」 本来なら「いらない公共事業」だった徳山ダムですが、多額の税金が投入され完成した以上、「活かす道がないか考えるのが市長の仕事」として、「水道水」「治水」「堀川の再生」のため、建設へ向け方針転換したといいます。
河村名古屋市長:「ちゃんとお話しすれば納得していただけると思いますけどね。必要な3つの用途が加われば、市民の皆さんにとってはいいと思いますよ」 2011年に初当選した愛知県知事選挙で、木曽川導水路計画の見直しを河村市長との共同公約に掲げていた大村知事は次のように話しました。
大村愛知県知事:「大規模事業でありますので、その在り方・進め方については不断の検証が必要だと考えております。予断を持たずにしっかりと検討してほしい。国の方が中断して見直すんだとやってこられました。その間、何がどう変わったかをしっかり説明してもらわないといけない」
市民団体と共に導水路の建設差し止めの訴訟を起こしていた在間弁護士は、河村市長の方針転換に失望したと語りました。在間弁護士:「失望したという以外ないです。信念を曲げられた。思い切ったしっかりした決断でいいことだなと思ったけども、それがひっくり返っちゃったわけですから」
そして、水が余っている状態のため、仮に導水路ができてもその水を使うことは無いとして、建設を進めることでさらなるムダを生むと主張しました。在間弁護士:「徳山ダムの水が余っているから、なんとかこれを使う口実がないだろうかと見つけ出したものだとしか思えないですね」 徳山ダム建設に、合わせて520億円余りを負担する名古屋市ですが、導水路建設でさらに121億円の負担が見込まれます。 その負担に見合うだけの効果があるのか、大きな議論を呼ぶことになりそうです。