【千葉魂】友杉の足で掴んだ勝利 悔しさバネに成長

監督室に戻った吉井理人監督は帽子を脱ぐとフッと息を吐き、「友杉のタッチアップは大きかったなあ」とつぶやいた。9月18日、ベルーナドームで行われたライオンズ戦は延長十二回までもつれる死闘となった。試合を決したのは一死二塁から代走で登場したルーキー・友杉篤輝内野手の足だった。打者・佐藤都の浅めのレフトフライで果敢に三塁を狙いセーフとすると続く藤原の打席での暴投の間にホームに突っ込んで貴重な勝ち越し点をもぎ取った。
「(タッチアップは)ボールが飛んだ瞬間にレフトが後ろ向きに追いかけていたので、体勢も悪いし、いけると判断しました」と友杉は振り返った。
ホームにはヘッドスライディング。ボールがホームベース後方に転がる間に三塁から躊躇(ちゅうちょ)なくスタートし、何としても欲しかった勝ち越しの1点をもぎ取った。「いい気迫だったな」。試合後、泥だらけのユニホーム姿でロッカーに戻ると最後を3者凡退で締めセーブをあげた澤村から声を掛けられ、「ありがとうございます」とうれしそうな表情を浮かべた。
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「(ホームインの場面は)ワンバウンドで弾いてという事もあるかもと頭に入れながらでした。最後の攻撃となる延長十二回の2アウトですし、少しでも隙あらばと思い、集中をしていました」
プロ1年目ながら開幕から1軍入りし、ここまでチームを勝利に導く貴重な働きをみせている。うれしかったことも多いが悔しい想いもたくさんしてきた。8月26日のバファローズ戦(京セラドーム)も試合は延長戦に突入した。延長十回。一死一、二塁から二塁走者の友杉は中村奨のレフト前ヒットでホームを狙ったが、間一髪、ホームでタッチアウト。結局、試合は0対0の引き分けで終わった。「膨らむ形で走ってしまった」と試合後、歯をかみしめた友杉。もし、最短ルートでホームインをしていたら、セーフになっていたかもしれないという悔しさが残った。「あれからベースランニングにさらにしっかりと時間を割いて、いろいろな状況を考えて練習をするようになりました」と話す。まさにこの日は悔しさを忘れずに日々、取り組んできた成果を出した神走塁だった。
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「ミスを恐れるな」と常日頃から伝えてきている指揮官は「勇気のいるプレーだったと思う。ああいう風にだんだんと細かいところも見えるようになってきている。積極的にやってほしい」と目を細める。
1点ビハインドの九回には代走和田が、盗塁を起点に安田の右前打で二塁から果敢に生還して同点としていた。和田の足で同点に追いつき、友杉の足で勝ち越した。湿度の高い蒸し暑かった一日の最後に友杉は気持ちよさそうに汗を拭った。
マリーンズらしい攻撃スタイルが垣間見えたデーゲーム。これぞライバルたちも恐れるスタイルだ。バファローズのリーグ優勝が決まった。ただ、やることは変わらない。残り試合も自分たちの野球で勝利を重ねていくだけだ。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)