難民・移民の流入に悩むイタリア… 日本にとって「対岸の火事」…の画像はこちら >>
ヨーロッパでは、難民問題が大きな争点になっている。
中東やアフリカでは、政情不安などで生活できなくなった人々が、地中海を経由してヨーロッパに逃げていく。小さな漁船などにすし詰めで乗って、命がけの逃亡劇である。
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この難民・移民を受け入れる側のヨーロッパ諸国もたいへんである。とくに、今年になってその数が急増している。チュニジアでは、カイス・サイード大統領が強権政治を行い、反対派を弾圧したり、サブサハラのアフリカ系移民や学生への差別を強化したりしている。そのため、チュニジアから国外に逃れる者が増えている。
また、東西に二つの政府が対立しているリビアが大洪水に襲われたが、これも難民の流出に拍車をかけそうである。
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私は、若い頃チュニジアでも大学で授業をしたり、市民に講演したりしたが、かつてのカルタゴは地中海に面し、対岸はイタリアである。気候も温暖で、イタリアと変わらない。地中海に出れば、150km先にはイタリア領のランペドーサ島がある。
この島の人口は約6千人であるが、9月11~15日に1万1,485人の難民が上陸した。人口の2倍以上であり、まさに異常、非常事態である。ほとんどがチュニジア経由であるが、これは、島の行政の手には負えない事態である。
今年初めから9月10日までに、ヨーロッパに上陸した難民は約16万人であるが、そのうち9万7千人はランペドーサ島に着いている。
17日には、イタリアのメローニ首相とフォンデアライエン欧州委員長が島を視察している。2015年には、シリア内戦から逃れ、ヨーロッパに来た難民は約100万人にのぼったが、今年は同じくらいの数になるのではないかと見られている。
EUでは、難民は、最初に到着した国がまず面倒を見ることになっている。具体的には、難民は、その国で難民申請をする。申請が認められれば、ヨーロッパに滞在できる。今回のように一度に大量に到来すると、ランペドーサ島の入管では対応できないので、難民はイタリア各地の入管に分散して送られる。それでも、イタリア当局の能力を超える状態である。
イタリアはEU加盟国に支援を求めている。
急増する難民問題に対応するため、EUの内相理事会は、6月8日、移民・難民受け入れの負担を加盟国で分担することで同意している。具体的には、各国が受け入れる移民・難民の人数枠を設けるが、受け入れは義務化しない。その代わり、受け入れを拒否する国は、1人あたり約2万ユーロ(約300万円)の現金や、資材、人材を提供することを決めたのである。
フランスのジェラルド・ダルマナン内相は、19日、ランペドーサ島に到着した移民は受け入れないと表明した。また、ドイツも受け入れを拒否している。
ヨーロッパでは、移民排斥をうたう極右政党が勢力を伸ばしており、安易な移民受け入れは有権者の反発を招くため、各国政府は慎重にならざるをえない。
フランスではルペンに率いられる「国民連合」が、ドイツでは「AfD(ドイツのための選択肢)」が、極右政党として政治的重要性を増している。その他の諸国でも、移民排斥を掲げる極右政党が伸びている。
ウクライナ戦争で生活が苦しくなっているところに、難民の大量流入で、さらに税負担が増えるというのは、有権者としては承服しがたいところであろう。
日本には船で逃れてくる難民・移民はほとんどいないので、欧州の情勢を対岸の火事のように見がちである。しかし、いつ同じような状況になるとも限らない。台湾や朝鮮半島で武力衝突が起こるような事態になると、難民が流出する可能性が大きい。北朝鮮の独裁体制に綻びが生じると、大量の難民が流出し、日本の日本海側諸県に到来する。
対馬の人口は約3万人である。ランペドーサ島と同じ状況になれば、6万人以上の難民が押し寄せるということである。そのときの備えは、もう始めたほうがよい。
北朝鮮からの難民の場合、スパイやテロリストも含まれるだろうから、ヨーロッパよりももっと深刻な事態になる。ヨーロッパは他山の石である。
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今週は、「難民・移民受け入れ」をテーマにお届けしました。