氾濫の一宮川、一部土のう高さ不足 台風13号記録的大雨 業者が復旧忘れ未設置も 千葉県が謝罪、浸水への影響検証へ

茂原市を流れ、台風13号による記録的な大雨で氾濫した一宮川について、千葉県は29日、護岸工事で設置されている大型土のうを調査したところ、5カ所で必要な高さを満たしていなかったと発表した。4カ所では県から工事を受注した業者の独断で土のうが撤去されていた。県は謝罪した上で、浸水への影響などを検証するため、来月にも有識者でつくる第三者委員会を設置する。
県河川整備課によると、土のうは護岸工事初期段階の仮設堤防として設置されている。8日の大雨後の10日、茂原市から土のうの設置状況について問い合わせがあり、県の調査で5カ所で不備が見つかった。
明光橋下流では、2・5メートルに渡って土のうが未設置となっていた。県によると、受注業者の「清水・幸和特定建設工事共同企業体」が昨年12月、設置されていた土のう6袋分の解体を下請けに指示し、護岸補修に使用。復旧せずに遮水シートだけをかぶせた状態にした結果、契約で決められた高さから120センチ不足した。解体に際して県に連絡はなかった。
同課は「復旧を失念したと聞いている。別の場所から土を持ってくればいいのに、なぜ土のうの土を使ったのか」と話した。
その他3カ所も県に連絡なく、工事用道路の設置などを理由に土のうが撤去された。
澤尻橋下流では、民有地に生じた舗装の亀裂対策のため、受注業者が県の承諾を得て土のうを撤去。県は背後にある工場の壁で必要な高さを確保できると判断したが、最大35センチ不足していた。同課は「県は確認をしっかりしなければならなかった」と不備を認めた。
県は台風接近前の7日に土のうの状況のパトロールを行ったが、異状は見つけられなかった。14日に応急工事を行い、土のうを本来の形で設置した。
明光橋下流では台風13号の大雨で越水した形跡がある。第三者委員会は5カ所からの越水の状況や、茂原市で発生した浸水被害に影響したかなどを調べる。
県から説明を受けた茂原市の田中豊彦市長は千葉日報社の取材に「欠落がなければ被害はここまで広がらなかったと思っている」と指摘。今後の大雨を懸念し、一宮川だけでなく支流の豊田川や阿久川などの主だった場所についても「コンクリートや仮設の土のうでも良いから1メートル20センチぐらいのかさ上げをお願いしたい」と改めて県に求めた。
清水建設の広報担当者は「県の今後の調査に協力していく」と話した。