〈キン肉マン・ミートくんバラバラ事件〉不穏な破壊音と同時に体が裂け、四方に飛び散った…「生きたまま分解し、悪魔超人7人で7か所に拉致した奇怪な人質事件です」と宇宙警察〈『キン肉マン』特別企画 #2〉

「集英社オンライン」は8月某日、業界イチのキン肉マン好きで知られる敏腕事件記者に、キン肉マン史上稀にみる“凶悪事件”の原稿執筆を依頼した。それこそが“2本の角”を凶器に幼い子供がバラバラにされた「ミートくんバラバラ事件」だ。大観衆の前でおきた“惨劇”の実態は? 奇しくも今年はアニメ放映40周年記念イヤー。さらに本日9月29日には、バッファローマンが活躍している『キン肉マン』第83巻が発売。超人史に残る凄惨な事件の真相と裏側に肉薄する渾身の取材をお届けする。(前後編の後編)前編はこちら
昭和56年8月、格闘技の聖地・後楽園ホールでは、正義超人有志による「ファン感謝デー」が開催されていた。主役はもちろん、超人オリンピックを2連覇したばかりのキン肉マン(本名キン肉スグル)。彼はファンを前に大はしゃぎだった。だが突如、館内が暗闇に覆われ、特設リングに現れたのは“超人ホイホイ”から脱獄した、バッファローマン率いる7人の悪魔超人だった。バッファローマンは超人オリンピックで優勝したキン肉マンをチャンピオンとは認めないと主張、挑戦状を叩きつけた(#1)。
7人の悪魔超人の初登場回 ゆでたまご/集英社
7人は、王者キン肉マンと対戦すべく、我先にと名乗りを上げた。そんな折、先ほどマットに沈められたウォーズマンが立ち上がり、バッファローマンにリベンジを図ろうとしたが、そこに今度はステカセキングが立ちはだかる。ヘッドホン状の足部による大音響攻撃でウォーズマンの聴覚機能を完全破壊。二度目のノックダウンを奪った。
リベンジをはかろうとしたウォーズマン ゆでたまご/集英社
先ごろ自分を敗北寸前まで追い込んだ強敵が、難なく倒されてしまった現実。それを目の当たりにしたキン肉マンは、激しい臆病風に吹かれた。当時、リングサイドで観戦していたサラリーマンのAさんが、記憶を呼び起こすように目を閉じる。「キン肉マンは、すばやく腰につけていたチャンピオンベルトを外して風呂敷に包み、ボス格の野牛超人に『つまらんものですが』と献上したんです。勢いで受け取ってしまった野牛超人が呆気に取られていたほどでした。キン肉マンはそのまま逃げ去ろうとしましたが、さすがにキン肉大王と委員長も激怒しまして。会場からも激しくヤジが飛び交いました。僕も『どんな相手の挑戦にも受けてたつのが真のチャンピオンだぞ!』と声を張り上げてしまいました」
あっさりとチャンピオンベルトを渡そうとするキン肉マン ゆでたまご/集英社
【漫画】キン肉マン7人の悪魔超人編②「さけたミート の巻」本編を読む(漫画を読む)をクリック
それでも、キン肉マンの逃げ腰は変わらなかった。いわく、自分は命が惜しいし、オフを満喫したい。だから悪魔超人の挑戦は受けず、代わりにベルトは返上する――。その身勝手な姿勢は直後、超人史に残る惨劇を招くことになる。「じゃあ挑戦を受けるようにさせてやろうぜ」激怒したバッファローマンは…合図は、表情の読めないブラックホールの一言だった。示し合わせたように、バッファローマンは、キン肉マンの小さな侍従・ミートくんの頭を巨大な右手で鷲掴みすると、容赦なく真上に放り投げた。そして、落下してくる二頭身の短躯を目掛け、またもやロングホーンを突き立てる強烈な突進技「ハリケーン・ミキサー」を仕掛けたのだ。DAAN!不穏な破壊音と同時に、ミートくんの体はバラバラに裂け、四方に飛び散っていた。身長100センチと、人間なら3歳児程度の背丈しかないミートくんは、生きたまま、頭部、胸腹部、腰部、左右の腕部ならびに脚部と、一瞬で7つの部位に解体されてしまったのである。
バラバラになったミートくん ゆでたまご/集英社
スタジアムに子どもと一緒に来ていた保護者のひとりは、面前で起きた猟奇事件を、今も鮮明に記憶している。「思わず息子の両目を手で塞ぎ、私も顔を背けてしまいました。おそるおそる目を開けると、バラバラになったミートくんの体は、それぞれ7人の超人の手元にあって。彼らはニヤニヤしていました。血は一切飛び散っていなかったので、もしかしてあれは人形だったのかな、とも思ったのですが……。でも、涙目になったキン肉マンが『よくも罪のないミートを!』と叫びながら、バラバラにした犯人、角が生えたリーダーっぽい超人に本気で掴みかかっていたので、これは現実に起きたことなんだと理解したんです」
まさに〝悪魔の所業〟だった。ただ幸いにも、バラバラになったミートくんは、仮死状態だったことが判明する。バッファローマンはミートくんの生首を片手に、野太い声でこう説明した。「心配することはない。もとどおり体をくみあわせれば生きかえる」
バラバラになったミートくんは悪魔超人たちの“人質”になった ゆでたまご/集英社
キン肉星シュラスコ族の神童ミートくんは、全身に甚大な衝撃を受けた際、バラバラになることでダメージを分散しつつ、一時的に仮死状態をキープできる特異体質の持ち主だった。このとき、ミートくんに残されたタイムリミットは最大10日間。バッファローマンがそれをなぜ知っていたのかは判然としないが、7分割されたミートくんの部位は、悪魔超人7人がそれぞれ一つずつ所持した状態に。そして片方の口角を上げ、悪意に満ちた表情のバッファローマンは、こう真意を明らかにしたのだった。「ミートをかえしてほしけりゃ、今日から10日以内にわれら7人と対戦して全勝しろ!」宇宙警察元幹部が指摘する。「リーダーのバッファローマンの行為は、未成年の少年超人ミートくんに対する殺人未遂にほかなりません。さらに6人の仲間と共謀し、7分割された少年超人の体をそれぞれで領得しています。相手が人間ならあり得ないことですが、少年の肉体を生きたまま分解し、7人で7か所に拉致した奇怪な人質事件と言い換えることもできるでしょう。そもそも彼らは宇宙ホイホイを脱獄した身でありますが、キン肉マンの弟同然ともいえるミートくんの命を盾に自分たちの要求を無理やり飲ませようとする行為は、人間界ならテロリストそのもの。まさしく悪魔超人です」
涙を流すキン肉マン ゆでたまご/集英社
こうして非道かつ鮮烈なデビューを果たしたバッファローマン。彼が引き起こしたミートくんバラバラ事件を機に、悪魔超人VS正義超人の対立軸は顕在化。両陣営による長い死闘の火蓋が切られたのである。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班落下豆男
ゆでたまご
2023年9月29日発売
528円(税込)
新書判/192ページ
978-4-08-883647-8
バッファローマン敗退によりバベルの塔での闘いに幕が下りた。試練を突破しバベルの塔最上階に集った真の男たちは、そこでこの世のひずみを目の当たりにする。ふたりの超神から語られる世界の危機にキン肉マンたちは!?