別の外来種が“大繁殖”…「池の水全部抜く作戦」で大量のブルーギル等駆除された池 2年経ったらこうなった

2023年7月、岐阜県郡上市の「ため池」で特定外来生物の「コクチバス」を一斉に捕獲しました。 生態系を脅かす「特定外来生物」は全国で見つかっていて、名古屋市では、2021年に名東区の猪高緑地で「池干し」をしました。 また、2022年には千種区の東山新池で、県の条例で「在来種を圧迫する存在」とされている「スイレン」を抜く活動が行われました。時が経ち、その場所はどうなっているのか、その後を追いました。
岐阜県郡上市では2023年7月27日、長良川に繋がる「ため池」で、北米が原産の特定外来生物「コクチバス」の駆除活動が行われました。コクチバスは肉食で、岐阜の名産・アユを捕食し、生態系を脅かす恐れがあります。この日は76匹が捕獲されました。
密放流されたとみられていて、地元漁協の組合長は『環境テロ』だと憤っています。
特定外来生物は、他にもさまざまなものがあります。アライグマ、アリゲーターガー、カミツキガメ、ブラックバス(オオクチバス)、セアカゴケグモ、ヒアリなども全て特定外来生物で、これらはいずれも名古屋でも確認されています。アリゲーターガーは、名古屋城の外堀でも見つかり、当時話題になりました。天白区の「なごや生物多様性センター」によりますと、特定外来生物には「生態系を壊す」「農林水産業への被害」「人の命に係わる」といった恐れがあるものが指定されています。飼育、輸入、販売、野外放出は原則禁止です。
違反すると個人の場合は3年以下の懲役または300万円以下の罰金で、法人の場合は1億円以下の罰金が科されます。
駆除活動は名古屋でも行われてきました。名東区の猪高緑地では、2021年11月に約100人が、池の水を抜いて外来種捕獲のための“池干し”をする「池の水全部抜く作戦」が行われました。
作戦では泥に足を取られながら次々と魚を捕まえ、特定外来生物の「ブルーギル」が3386匹も見つかりました。駆除に参加した名東自然倶楽部の会長によりますと、幼魚を食べるため、モツゴやメダカにとっての脅威になるということです。
他にも、特定外来生物である「ウシガエル」のオタマジャクシが292匹、条件付特定外来生物の「アメリカザリガニ」が320匹見つかりました。また「コイ」も捕獲されました。コイは馴染みがありますが、外来種が多いということです。“在来種”で見つかったフナやナマズなどは、池に再び水を張った後に戻されました。
千種区の東山新池では2022年11月、池を覆う「スイレン」を抜く「池のスイレン全部抜く作戦」が行われました。
きれいな花を咲かせるスイレンですが実は外来種で、成長が早いのが特徴です。放置すると茎や葉が池全体を覆ってしまい、他の植物が光合成できずに水中の酸素が減少し、在来種が死ぬこともあります。
スイレンは特定外来生物ではありませんが、愛知県の条例で「在来生物を圧迫する存在」に指定されています。
この日1時間で抜かれたのは全体の約10%ですが、かなりの量になりました。
「池の水全部抜く作戦」は2021年に行われましたが、今はどうなっているのか。現在の池を訪れました。「池の水全部抜く作戦」で外来種の駆除を行った、名古屋市名東区にある猪高緑地のすり鉢池の現状について、名東自然倶楽部の会長によりますと、ブルーギルやコイは完全に捕りきれたようで「おそらくうまくいったのではないか」と話しています。
しかし2年前にいた外来種はほとんど見られなくなったものの「別の」特定外来生物が大繁殖しているといいます。名東自然倶楽部の会長:「カダヤシという特定外来生物を投げ込まれちゃいまして、それが今大繁殖しています」
カダヤシは「蚊を絶やす」ことに由来し、病気を媒介する蚊を駆逐するために、海外から持ち込まれたといわれていますが、池干しの前には見られませんでした。姿や生活するところがメダカと非常によく似ていて、生息域を奪うということです。卵は自分の体内に産んで、それがかえってから外に出てきます。
カダヤシは稚魚になるまで体内で育てられるため繁殖力が高く、メダカの稚魚を食べてしまうこともあるため、池のメダカが危機にさらされます。
名東自然倶楽部の会長は放流について「生物を外へ放出するということは、生態系を全部潰すかもしれないということを思ってほしい」と話しています。猪高緑地では他にも、これまでいなかったクサガメが2匹発見されました。カメは顔に指を向けられると通常は顔を引っ込めますが、見つかったクサガメは「ごはんちょうだい」というように、顔を前に出して口を開ける動作をするということです。これは“飼われていた”カメと考えられ、誰かが捨てたとみられています。
「池のスイレン全部抜く作戦」を行った千種区の東山新池についても“今”を調べるため2023年8月、訪れました。池を訪れると、水面の4分の3以上がスイレンの葉で覆われていました。2022年にスイレンを除去した際に主導した名古屋千種ライオンズクラブの2人に話を聞きました。名古屋千種ライオンズクラブの野々山さん:「元に戻っていくスピードの方がやっぱり早くて。下に根付いている根が相当入り組んでいて、網の目状になっている」名古屋千種ライオンズクラブの若山さん:「もうちょっと人数と、作業する時間が確保できれば、もっと抜けたかなとは思っております」
スイレンを抜くのは重労働で時間もかかりますが、成長のペースより早くしないと、完全な除去は難しいといいます。若山さん:「2022年と同様(2023年も)一般の方のボランティアを募集して皆さんで一緒にやりたいと思っております」2023年は秋ごろの開催を予定しているということです。2023年8月9日放送