東日本の「水素の一大拠点」に 川崎の臨海部が変貌へ「有力候補地」へアクセス整備も加速か

川崎市と川崎重工が連携協定を締結。川崎市の臨海部エリアで、水素エネルギーを供給する拠点の形成に向けた動きが加速しそうです。
川崎市の臨海部エリアで、水素エネルギーを供給する拠点の形成に向けた動きが加速しています。川崎市と川崎重工業は2023年9月27日(木)、「カーボンニュートラルの早期実現」に向けた連携協定を締結しました。臨海部エリアでは巨大な再開発構想も動き始めていますが、どのように変化するのでしょうか。
東日本の「水素の一大拠点」に 川崎の臨海部が変貌へ「有力候補…の画像はこちら >>上空から見た扇島地区(画像:写真AC)。
締結式は川崎重工の東京本社(東京都港区)で開催され、川崎市の福田紀彦市長と川崎重工の原田英一水素戦略本部長が出席しました。
福田市長は締結式で「今回の協定の契機に、更に水素社会の実現に向けて取り組んでいく。川崎重工と川崎市の『2つのカワサキ』が連携することで、水素を『つくる』段階から『つかう』段階まで、一連の流れができる」と力を込めました。 川崎重工の原田水素戦略本部長は「水素社会を実現するためには、当社の持つ液化水素関連技術と、自治体のエネルギー政策、周辺立地企業の取り組みを一体で進めていくことが不可欠」と述べました。
京浜工業地帯に位置する川崎市は、温室効果ガスの排出量が政令市最多となっています。市は以前から「水素戦略の実現に向けた川崎水素戦略」を策定するなど、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」が潮流となる以前から、水素の活用に関する取り組みを進めてきたといいます。 2023年3月には、川崎市の臨海部が、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進している「液化水素サプライチェーンの商用化実証」の受入地に選定。オーストラリアから出荷された液化水素を船で輸送し、発電所などに供給することが想定されており、川崎臨海部に受入基地が建設される予定です。
連携協定には「周辺地域への水素供給」「実現に向けた調査・実証事業の実施」などが盛り込まれています。ここで大きな役割を果たすのが川崎重工です。
川崎重工は、液化水素に関わるサプライチェーン全体の技術を単独で保有する世界唯一の企業となっており、2022年2月には液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」による世界初の国際間輸送を実現しています。同社は技術的な支援のほか、近隣企業などに対する水素の普及啓発の支援なども行っていくといいます。
連携協定締結式で福田市長は、液化水素を受け入れる荷役設備を整備する場所について「最終的な結論には至っていないが、扇島地区が有力候補地」との認識を示しました。
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川崎市と川崎重工の連携協定締結式(乗りものニュース編集部撮影)。
扇島地区は、首都高湾岸線の出入口もある東扇島の西側の埋立地で、現在は一般人の立入ができません。ここではJFEスチール東日本製鉄所(京浜地区)の高炉が今月に休止され、跡地の再開発構想が発表されています。再開発では、新たに創出される約222ヘクタールもの広大な土地を対象に、土地利用転換を推進。地区全体の土地利用転換の完了は概ね2050年頃となる見込みです 。 このうち、既存の構造物が少ない約70ヘクタールを「先導エリア」とし、「水素を軸としたカーボンニュートラルエネルギーの受入・貯蔵・供給の拠点」を形成するとしています。大型の液化水素運搬船などが入港できるように、国内最大級の大水深バースなどが整備される見通しです。 ちなみに、市は扇島地区の土地利用方針案に、臨海部の将来的な交通インフラ整備の中長期的な取組として「BRTや鉄軌道などの様々な交通手段の検討を行う」ことを盛り込んでいます。鉄軌道では具体的な例として「川崎アプローチ線」や「東海道貨物支線貨客併用化」をあげています。今後は交通アクセスに関する検討も本格化するとみられます。