「思いやりだ」「つけ忘れる」 議論ある“信号待ちでライト消灯”そもそもなぜ広まった? いまや絶滅寸前のワケ

かつて、夜間、交差点などでの信号待ちで、ヘッドライト(前照灯)を消しているクルマが一部で見られました。現在ではそのようなことを見かけることはかなり減ったものの、なぜこのような風習ができたのでしょうか。
夜間、交差点などでの信号待ちで、ヘッドライト(前照灯)を消すという人がいます。しかしながら、その光景を見かけることは、かなり減っており、今後ますます減っていくと考えられます。そもそもなぜこういった風習ができたのでしょうか。
「思いやりだ」「つけ忘れる」 議論ある“信号待ちでライト消灯…の画像はこちら >>写真はイメージ(画像:Makoto Honda/123RF)。
信号待ちでヘッドライトを消すという人のなかには、前に停まったクルマや対向車に眩しくないように、つまり思いやりのひとつだといった意見が見られます。
また、ある自動車教習所の教官は、この慣習について、「もともとタクシー業界から生まれたものと聞いている」と話します。昔のクルマは発電性能が低く、さまざまな機器を積んでいるタクシーが、ヘッドライトをこまめに消してバッテリーの消耗を抑えていた慣習が、一般にも広がったと考えられるそうです。もちろん、いまや発電やバッテリーの性能も向上しており、こうした話は過去のものといえるでしょう。
ただ、この「信号待ちで消灯する」という行為は、警察や教習所で推奨しているものでもないようです。クルマのライトについて特集したJAFの会報誌「JAF MATE」2021年2・3月号でも、つけ忘れの恐れなどから、推奨していません。
そしてこの行為を見かけることは、これからますます減るでしょう。というのも、いまのクルマは容易に消せない構造になっているからです。
2020年4月以降の新車から、周囲の明るさが一定以下になるとロービーム(すれ違い用前照灯)を自動で点灯する「オートライト」の装備が義務化されています。薄暮れの時間帯に交通事故が多い実態を踏まえた措置です。オートライト機能そのものは以前からありましたが、現在の新車では走行中「手動で解除できない仕様」となっています。
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ダイハツ「タント」のライトスイッチ。スモールのポジションがなく、〇(OFF)の位置にして手を離すとAUTOへ自動的に戻る(画像:ダイハツ)。
なかには、ランプスイッチからOFFのポジションそのものがなくなり、イグニッションがオンの状態では、ライトスイッチを所定の位置に合わせ、パーキングブレーキをかけたりシフトをPレンジにしたりと、ヘッドライトの消灯にひと手間かかるというクルマも増えています。
オートライトが装備されてきた背景には、自車の位置を周りに知らせる、ヘッドライトを周囲が暗くならないうちに点灯させて事故を防ぐ、つけ忘れを防止するといった観点もあります。また、現在はオートハイビームや、対向車などの動きに合わせて自動で部分的に遮光する機能を備えたクルマも増えており、ライトスイッチそのものに触る必要がなくなりつつあります。
それでも、やはり要所要所でヘッドライトを消灯したいニーズはあります。法規対応でライトスイッチの「OFF」ポジションをなくしたところ、消し方が分かりづらいとの声を受け、法規は満たしつつOFFのポジションを復活させたスバルのような動きもあります。信号待ちで消灯する慣習も、減っていくとは考えられるものの、見直される可能性もゼロではないといえるでしょう。