早く“初体験”をすませたい女性をSNSで募り、経験豊富な男子が優しくロストバージンをサポートする――そんな「処女卒業サポート」なるサービスが昨今、増加傾向にあるという。いったいどんな内容で、どのような人物がやっているのか。本誌女性記者がその実像に迫る。
「処女卒業サポート」とはその名のとおり、処女を卒業したい女性をSNSで募り、経験豊富であろう裏垢男子(裏アカウントで活動する男性)が優しく“ロストバージン”をサポートするというサービスだ。「いったいどんな女性が好き好んでそんなこと……」と思うかもしれないが、処女であることをコンプレックスに思う女性は少なからずおり、一定の需要があるようだ。それが証拠にX(旧Twitter)で「処女卒業」と検索すると、何十件という「処女卒業サポートアカウント」がヒットする。それらアカウントには、「サポート10年間で800人以上の実績あり」「痛くない気持ちいい卒業を提供しています」といった“宣伝文句”が並ぶ。裏垢男子に詳しいライターの倉田達也氏は言う。「処女卒業サポートをする男性は、古くは2009年ごろから存在しており、当時はSNSではなく、ブログやホームページなどで女性からの問い合わせを募っていました。それが2014年ごろからTwitterへと徐々に移行していったようです。つい最近、某有名インフルエンサーがこの処女卒業サポートアカウントについてポスト(ツイート)したことで、さらに大きく注目されています」
某有名インフルエンサーが処女卒業サポートについて投稿したことで、にわかに盛り上がりをみせている
そのポストへのフォロワーの反応は「気持ち悪い」「男はただヤリたいだけ」といった拒絶的なものが大半だったが、この拡散によって注目度が上がり、後追い“業者”も増えたようだと倉田氏は話す。彼らはどのような心理で活動しているのか。「私の知り合いの処女卒業サポート男子によると、彼らは、①女性の願いを叶えたいと心から思っている男性、②処女相手にセックスでマウントを取って承認欲求を満たしたい男性、③処女なので上手下手がわからないし、向こうから寄ってくるから効率よくヤレると考えている男性、の3パターンに分かれるのだそうです」(倉田氏)「女性の願いを叶えたいと心から思っている」男子がはたしてどれだけいるのかは疑問だが、料金面はどうなっているのか。実際に処女卒業サポートアカウントとやり取りした経験のある女性、Aさんはこう話す。「さまざまな処女卒業サポートアカウントを比較しましたが、最初から代金を明示している男性はほぼいませんでした。実際にDMでやり取りしてみると、『サポートにはお金はかかりませんが、ホテル代だけお支払いいただきます』というものも多く、中には『カウンセリング代などもろもろ込みで5万円です』なんて言ってくる人もいました」
そもそもこのサポート、売春防止法違反にはならないのか。グラディアトル法律事務所の若林翔弁護士に聞いた。「既存の法律ではこのようなサービス・サポートを想定しておらず、無償であれば違法性はないと考えられますが、有償であれば売春防止法違反となる可能性もあります。また、サポート側の男性が性感染症の検査を受けていると公言しておきながら受けていなかった場合は詐欺罪に、それによって性感染症となった場合は傷害罪になる可能性もあります」処女卒業サポートアカウントの中には「性交痛に悩む方はコンドームではなく、ピルを処方されることで、痛みの軽減や気持ちよさに大きな効果がある」と、“ゴムなしセックス”へと誘導する文言も見られるが、産婦人科医の宮本亜希子先生は「子宮内膜症などによる性交痛にはピルが効果を表れることがありますが、擦れによる性交痛にピル処方はしない」と真っ向から否定する。
処女卒業サポート男子、アラタ氏(仮名)のアカウント
なにやらいかがわしさ満載といった感のある処女卒業サポート男子だが、実際どんな男性が行っているのか。記者が注目したのは「実績100人」を打ち出す、アラタ氏(仮名)なるアカウントだ。アラタ氏はX上に実際にサポートしたときのレポート記事や、相手とのメッセージのやりとり、ホテルで撮った女性のモザイク写真などを毎日のように投稿しており、その内容は次のような衝撃なものばかりだった。
アラタ氏のレポートによれば、女性がサポートを利用する動機として、「前からセックスに興味があり、気持ちよくなってみたかった」(20歳医療系)、「恋愛には興味がないけど経験だけはしてみたかった」(23歳学生)といったものから、「パパ活を始めたいから、最初くらいは優しい人にお願いしたかった」(18歳学生)、「彼氏との初エッチを控えていて、高齢処女だとバレたくなかったから」といったぶっ飛んだものまで紹介されている。そして、事後の女性とのやり取りでは「流れで進めてもらえたので気張らず済めてありがたかったです!」としっかり感謝されていたりする。アラタ氏は相当なテクニシャンなのだろうか。そこで女性記者がさっそくこの“アラタ”氏にコンタクトを取ってみることに。偽装の処女卒業希望メールを送ると、わずか2分後に返信が届き、「場所等を決めたいと思いますので、一旦フォームを入力いただけますとうれしいです」とフォームへと誘導された。そこでは「年代は?」「体型は?」「交際経験は?」「デート代は奢られたいか、割り勘がいいか」といった基本情報を入力する。
アラタ氏が毎日のように投稿している処女卒業レポート
その後、会ってからの流れを聞くと、「JRのK駅で待ち合わせ後、そのままホテルに向かいます」とのこと。「お茶代を払うので、できればお茶をしませんか」と提案しても「こういう話を喫茶店などでするのは恥ずかしいと思うので、ホテルでゆっくりしましょう。もし気が乗らなかったらホテルで解散で構いませんよ」と譲らない。いかにも“ヤリ目男”の手口といった感もあるが、果たして……。無事、約束を取りつけたので、当日までの間、メッセージのやりとりでさりげなく取材をしてみたところ、アラタ氏は30代の会社員で、仕事終わりや週末に“サポート業務”をしていることがわかった。やりとりのなかで、「よければボイスメッセージをくれないか」とリクエストしてきたり、別の日には「今日、思い切って会いませんか?」と提案されることもあったが、そこはやんわりとかわし、事なきをえた。そして迎えた10月某日、帰宅ラッシュ時刻のK駅。事前にアラタ氏の容姿を聞いておきたかったが「こちらからお声をかけるので、着ている洋服や特徴を教えてください」とのことだったので、緊張して待つ。すると不意にひとりの男性から声をかけられた。
アラタ氏の第一印象は、ものすごくよくいうと菅田将暉似。プロフィール文には178センチの普通体形と謳っていたが、165センチほどの中肉中背だった。ごくふつうのサラリーマン風の男性で悪い印象ではないが、ガムをクチャクチャと噛んでいるのが気になった。ラブホテル方面へと歩きながら聞いたところによると、アラタ氏は未婚で彼女もいないらしい。処女卒業サポートを始めた理由については、「付き合ってきた女性に処女が多かったので慣れている。だから困ってる人を助けたいと思った」のだそうだ。「あんた、『今日、思い切って会いませんか』とか性欲むき出しのメッセージ送ってきたやんけ!」という言葉はもちろん飲みこんだ。ホテル前に到着したところで「やっぱりちょっと、今日は気分が乗らないです……」と記者が言うと、「あ、わかりました。では帰りましょう。今日は勇気を振り絞ってくれてありがとうございます」と、なんだか紳士然とした態度を取られて、“サポート”されることはなかった。
待ち合わせ場所に現れたアラタ氏
結局、アラタ氏のサポートに対する真のモチベーションはわからなかったが、別れ際、「また気が向いたらいつでも声かけて下さい」「僕、セカンドバージン支援やリピートも受け付けてるんで」なんて捨て台詞を吐く。「ん? リピートってただのセフレでは?」とツッコもうと思ったころには、アラタ氏の姿は駅舎の中へと消えていた。こういった男性たちに大事なバージンを捧げていいものなのか。処女をコンプレックスに思っている女性たちは、もう一度よ~く考えてみてほしい。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班