【房総豪雨4年】 店が3度浸水も、乗り越え子どもの夢応援 考案スイーツ発売へ奮起 「『夢は大切』と言っている私がくじけたら説得力がない」 茂原の洋菓子店

千葉県内に甚大な被害をもたらした2019年10月の房総豪雨は、25日で発生から4年を迎えた。河川氾濫で店内が水に漬かった茂原市の洋菓子店・予約制レストラン「創作スイーツ&フレンチ レーヴ」は、先月の大雨でまたしても浸水被害に見舞われた。19年から小中学生考案のスイーツを販売する「夢応援プロジェクト」を毎年続けている同店。今年の発売は延期を余儀なくされたが、復旧を進め何とか11月にお披露目するめどが立った。度重なる被害を乗り越え、同店は子どもたちの夢を後押しする。
02年に一宮川近くの茂原市八千代で開業した同店は、13、19年、そして先月と3度の浸水被害を経験した。
19年の房総豪雨は約120センチ、先月の台風13号に伴う大雨は約90センチの高さまで浸水。今回は水位こそ低かったが、被害は4年前と同じで、冷蔵庫やショーケース、オーブンなどの機材は使い物にならなくなった。
4年前は同プロジェクトの2回目が進行中で、小中学生3人が考案した「カボチャのモンブラン」の販売間近で店が浸水した。
同店代表の川崎佐知子さん(50)は店内の惨状にショックを受けたが、「子どもたちのため、このままうやむやにしてはいけない」と奮起。約1カ月半後に店を再開し、モンブランの販売にこぎ着けた。企画に参加した小学生も店の片付けを手伝ってくれた。
あれから4年。6回目となる今年のプロジェクトには市内外の小学生6人が参加し、千葉県誕生150周年を記念して県産梨をふんだんに使ったチョコレートケーキを開発した。9月23日の発売に向け約100個を仕込んでいたが、店はまたも浸水し、廃棄せざるを得なくなった。
もともとプロジェクトは「お菓子屋さん」になるのが夢だった川崎さんが、スイーツ作りを通じて夢を追いかける大切さを伝えようと始めた取り組み。「何回も被害に遭って正直、心が折れるような状況だったが、それでも頑張れているのは夢のおかげ」。川崎さんは立ち直る原動力をこう説明する。
今回も損傷した機材を入れ替え、来月初旬に営業を再開できるまで復旧は進んだ。小学生6人は再び店に集まって自慢のケーキを完成させ、同月23日からお披露目販売する予定だ。
「子どもたちに夢を持つ意味や価値を伝えたい。『夢は大切』と言っている私がくじけたら説得力がない」と語る川崎さん。相次ぐ被害にも前を向き、小さなパティシエの背中を押す。