〈静岡・ホスト集団暴行〉全裸ミッキーダンスにテキーラ観覧車、本気首絞め…「いつもこんな感じなんだよね~」”悪ノリ”で日常的に行われていた暴行の数々…オーナーは「遊びがいきすぎちゃって、申し訳ない」

静岡市葵区のホストクラブ「RE :MAKE(リメイク)」でアルバイト大学生Tさん(当時23歳)が同僚からイジメを受けて“なぶり殺し”にされ、傷害致死容疑などで6人が逮捕された事件は、地元にも暗い影を落としている。同店は強い酒を浴びるように飲ませる「テキーラ観覧車」が名物で、ホスト同士が泥酔状態でイタズラや悪ノリを繰り返す姿が目撃されるなど、無法地帯の様相を呈していたという。
傷害致死容疑で逮捕されたのは神谷勇輝(23)=源氏名・一護崎優真=、海野智哉(30)=同・八神雅斗=、高野稔基(26)=同・それいけ!流星=、海野和哉(28)の4容疑者。強制わいせつ容疑で逮捕されたのは加藤雅人(29)、渡邊寛之(30)の2容疑者という面々だ。この中で「八神雅斗」は取締役に名を連ねる同店の実質的な責任者だった。
一護崎優真こと神谷勇輝容疑者
同店の常連客だったという20代の女性はこう語る。「『RE :MAKE』は2020年ごろにオープンした新しめのホストクラブで、とにかく飲みが激しいことで有名。ここの名物は『テキーラ観覧車』で、お客さんがシャンパンなどを入れると、テキーラを入れたショットグラスを12個、観覧車のように並べ、指名されたホストがすべて一気飲みしないといけないんです。そのときによく指名されていたのがTくん。お店の中でもイジられキャラみたいな感じでした」女性の目からは、Tさんがイジメの標的にされているようには見えなかったという。「だからといって、別にイジめられたり、ハブられてるという感じではなく、他のホストとも仲良さそうにしてましたよ。『RE :MAKE』の店柄、ホストも酒癖が悪い人ばかりなので、お酒が進むにつれてホスト同士の喧嘩みたいなのが始まるのは何度か見ました。それこそ、楓くん(加藤容疑者)がTくんの頭をパーンと叩いたことがあって、『なんでオレが叩かれないといけないんっすか?』と言い返して口喧嘩になったけど、結局ダチョウ倶楽部みたいにキスして仲直りしてました」
ホストクラブ「RE :MAKE」のエントランス(撮影/集英社オンライン)
ただ、「イジメ」には見えなくても、「イジり」としてはいささか度が過ぎることもあったという。「あのお店では、レギュラー出勤しているホストは寮に入らないといけない決まりがあるんですが、一度だけ優真(神谷容疑者)くんに寮の様子をスマホ動画で見せてもらったら、さすがに引きました。Tくんが別のホストと一緒に全裸でジャンボリミッキーのダンスを踊っていたんです。『いつもこんな感じなんだよね~』と優真くんは笑っていたので、別に『イジめてやろう』と思ってやってたわけではないと思うんですけど、こういった度のすぎた“悪ノリ”が今回の事件につながってしまったんじゃないかなと思いますね。実際に、Tくんが亡くなってすぐに『RE :MAKE』の系列店のカラオケバーに行ったときにオーナーに会ったのですが、『遊びがいきすぎちゃって、Tくんには申し訳ない』と話していました」
だが遊びが過ぎたぐらいでは、23歳の健康な若者が死ぬことはないだろう。Tさんが亡くなる少し前に、『RE :MAKE』に在籍していた20代の男性の記憶はもっと生々しい。「ふだんからTさんをイジっていたのは、雅斗(海野智哉容疑者)さんと優真(神谷容疑者)さんと流星(高野容疑者)さんの3人。なかでも雅斗さんは実質的な店舗の責任者だったので、『これはちょっと悪ノリが過ぎないか?』とほかの2人が心配しても、止められなかったんじゃないのかなと思いますね。基本的に、全員が酒癖悪い人だったので、酔うとホスト同士で喧嘩が始まったり、Tさんをイジったりしてました。そういう悪ノリが嫌で自分はすぐに辞めちゃいました」
八神雅斗こと、海野智哉容疑者
悪ノリにイジり……それを「いじめ」や「虐待」じゃないと言い張ったとしても、結果責任には何の影響も及ぼさない。男性が続ける。「ニュースでは、容疑者のホストたちがTさんをイジめていたという感じで報じられていましたが、本人たちにその自覚はなかったと思います。自分も少しだけ勤めていたからわかるんですけど、Tさんを含めて、ホストたちはみんな兄弟のように仲がいいんですよ。もちろん、お客さんの前で粗相をしてしまうと、先輩ホストに裏に呼び出されて注意されたり、酔ってるときは頭をひっぱたかれたりもしますが、それはTさんに限った話ではないんです。レギュラー勤務する人は、お客さんとの『店外デート』を禁止するために寮に住まないといけない決まりがあり、一部屋4人くらいで共同生活を送ることになるので、友達みたいな感覚になるんです。実際、Tさんはイジられることを嫌がる素振りも見せなかったし、僕にも『自分から率先して(酒を飲みに)行けば、お客さんに気に入ってもらえて目立てるから、そうすればお客さんとの付き合いもよくなるよ』とアドバイスしてくれました」
それいけ!流星こと高野稔基容疑者
ただこの男性から見ても、悪気の有無とは別次元の蛮行がTさんを痛めつけていたのは紛れもない事実だという。「でも、そうした共同生活のなかで本当にイジメだとしか思えない行為もありました。Tさんがお酒を混ぜるマドラーを肛門に入れられたという話を聞いたこともあるし、流星さん(高野容疑者)がTさんの首を思いっきり締めている動画を先輩ホストから見せてもらったこともあります。それでもTさんはいつも意欲的に働いていましたね。『ナンバー(月間ランキング)に入りたい』と語っていたので、こんなことになってしまい本当に残念でなりません」
限度を知らない「仲良し」ホスト軍団は、Tさんが命を落とした寮でもふだんから周囲に迷惑をまき散らしていたようだ。寮は『RE :MAKE』からは距離で約1キロ、徒歩10分ほどの距離にある9階建てマンションの3階の1室で、近隣に住む60代の男性は、日頃から騒音被害に頭を痛めていた。「あのホストたちが住み始めて2~3年になるけど、ドタドタと足音が聞こえてくることもしょっちゅうで、何度か警察に通報したこともあるよ。本当に迷惑な連中だった。毎日、昼の11時とか12時くらいになると、マンション前に止まった2台のタクシーからベロベロに酔っぱらった男たちが7~8人降りてきて、異様にテンションが高くてギャーギャー騒いだりしてたんだけど、なかには酔っぱらいすぎて、半分気絶してるようなヤツもいた。足を引きずったまま、両隣の男たちに肩を借りて歩いていたり、数人に抱きかかえられながら歩いているのは日常茶飯事って感じだった」
ホストたちが集団生活をし、迷惑行為も日常だったという寮(撮影/集英社オンライン)
マンションの向かいで飲食店を営む60代の男性も、日々呆れるような彼らの痴態を見続けてきた。「いつも昼間にベロベロになって、ハイブランドのマークがデカデカとプリントされたいかにも水商売風の服装で帰ってくるので、本当に『迷惑なバカども』という印象しかなかったですね。もともと、あのマンションはキャバクラやデリヘル、風俗店のボーイといった『水商売系』の人たちが多くて、そんなマンション住人のなかでも、ここ数年のアイツらの行動はちょっと非常識すぎました。引っ越してきた当初は、ベランダで半裸で酒盛りしながら『ギャハハ』と談笑してたし、真昼間に白塗りのアルファードを何時間も路上駐車するので、近隣の方もかなり迷惑してました」マンションの住人の中には、彼らの騒音や迷惑行為に耐えかねて引っ越していく人たちもいたという。「だから事件があった日も、てっきり急性アルコール中毒で誰かが倒れたのかなぐらいに思っていました。その日は午後2時ごろにランチの営業を終えて外出し、4時ごろに店に戻ってきたら、マンションの前に何台ものパトカーが停まっていて、制服警官や鑑識っぽい人たちがアイツらの部屋のドアを開けて行ったりきたりしてましたね。一昨日、取材にみえた記者から死因がイジメであることを聞いて驚きました。アイツらは『迷惑なバカ』だけど、仲だけはよさそうだったので…」
死亡したTさん(SNSより)
周囲には仲よく見えても、当事者同士が本当にそうであるとは限らない。そして加害者は、えてして無自覚で無節操なところがあるものだ。※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]X(Twitter)@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班