「仮装してるだけで迷惑かけてないですから」と言いつつも、ナンパ、立ちション、爆音車両でウェ~イは出現。「でも酔っ払いとか痴漢は減って過ごしやすいですよ」〈渋谷ハロウィーン2023当日ルポ〉

毎年ハロウィーンといえば仮装姿で路上飲酒などの迷惑行為を繰り返す“バカ者”が大勢集まっていた渋谷。だが今年は渋谷区長の呼びかけや警察による厳戒態勢により、“前夜祭”ともいえる週末の10月28日夜は仮装する若者も少なく大きな混乱もなかった。では、本番はどうだったのか。ハロウィーン当日の渋谷をレポートしていく。
ハロウィーン当日の10月31日21時。集英社オンライン取材班が渋谷に到着すると、前夜祭と同様、スクランブル交差点付近は大勢の警察官が交通整備を実施。スクランブル交差点の信号は消え、D Jポリスがアナウンスで誘導をおこなっていた。また、ハチ公口も閉鎖されていたが、この日は大勢の若者で溢れかえり、仮装姿の若者も数多く目撃された。
31日夜のスクランブル交差点。中には仮装姿の人も
センター街は大混雑で、その緩和のために警察とセキュリティが必死に立ち止まらないよう呼びかけていた。通行人の3割くらいは仮装しており、歩きながらナンパする若者もすでに目立つ。28日の平和な雰囲気はなんだったのだろうか。センター街途中の路地で、撮影の行列ができていた“バービー人形”のような衣装で目立っていた20代の女性2人組は渋谷の盛り上がりを楽しんでいた。「正直、盛り上がってる様子もなかったし、渋谷に行くか迷っていたくらいなんですけど、今年が最後かもしれないなと思って来てみたら仮装してる人も何気に多いし、写真もたくさん撮られて、めちゃくちゃ楽しいです。今年は渋谷区の規制が話題ですけど、それって悪いことばかりじゃなくて、マナーの悪い酔っ払いとか痴漢が全然いないんでむしろ楽しむだけだったら過ごしやすいくらいですよ」
撮影の列ができるほど人気だった2人組
毎年渋谷でハロウィーンを楽しんでいるという、ウサギとポリスに扮する大学生の女性2人組はこう語った。「以前に比べると路上飲酒してる人をまったく見ないから治安はよくなったかもしれないけど、全然呼びかけ無視してナンパしてくるし、仮装も結構いるし、なんなら友達とも遭遇したし、渋谷の空気は去年とあんまり変わんないんじゃないですかね」
ウサギとポリスの仮装をする女性2人組
渋谷の予想外の盛り上がりにテンションが上がり、女性に声をかけまくっていたのは、はっちゃけた姿の19歳男性だ。「ここ数日は私服で様子だけ見てたんですけど、昨日とか本当にすごくおとなしくてひどかったですよ。でも今日はハロウィーン当日だからと思い切った格好で来てみたら大正解でした。去年は気づいたら横に女の子がいるってアツい展開もあったんで、今年も狙っていきますよ」
「思い切った格好で来た」というかなり薄着でナンパしていた男性
路上に子供用のビニールプールのなかに椅子を置き、そこで無料で散髪してくれるフリーカットパフォーマンスをする男性もいた。本人はお客さん相手にカット中だったので友人が答えてくれた。「彼はいつも覆面でフリーカットをパフォーマンスとしてやってるんですけど、今日はハロウィーンなんで自分の服装も相まって盛り上がると思って来たみたいです。このパフォーマンスもTikTokとかに投稿してるんで注目されるかもしれないですね。今日は思ったより仮装姿の人がいるので、彼も浮かなくてよかったんじゃないですかね(笑)」
覆面でフリーカットパフォーマンスをする美容師の男性20代
盛り上がりに物足りなさを感じていたのは、20代のポリス姿の男女だ。「今年はやっぱり仮装してる人が少ないですね。他の年に比べたら全然ですよ。それに路上飲酒禁止だからか陽気さが足りてない感じしますもん。去年なんて知らない人が、近くにいたからってノリでケバブおごってくれましたから」
ポリス姿の男女
SFアニメ『コードギアス反逆のルルーシュ』のルルーシュのコスプレをする20代の男性も、「仲間がいない」と肩を落とした。「今日は友人が渋谷で仮装したことないって言うんで、経験者である自分が連れて来たんですよ。でも例年に比ると、完成度の高いコスプレの人全然いないですよね。そういうコスプレを見るためだけに毎年渋谷ハロウィーンに来てたんで、結構悲しいですよ。来年はもう来ないかもしれないですね」
ルルーシュのコスプレをする男性。仮面の下もルルーシュの髪型にしていた
黒猫の仮装をした2人組の女性は、渋谷ハロウィーンの盛況を期待せず、あえて深夜に来たという。「絶対しらけてるだろうからクラブ目当てで遅めにきたんですよ。そしたら案の定、まだ0時なのに通りにはもう全然人がいない、去年まではこんなことありえなかったですよ。お酒もガンガン飲めたし楽しかったんですけどね。ちょっと立ち止まっただけでも注意されるし、メガフォンがうるさいんで普通に歩いてるだけでも気分下がります」
黒猫の仮装をする20代女性2人組
これまで渋谷区は「ハロウィーン目的で渋谷には来ないでほしい」と散々、呼びかけていたがそれでも若者たちは渋谷に集まった。彼らの多くが「自分たちは仮装しているだけで誰にも迷惑をかけてない」と、区の規制体制に真っ向から反論していた。
だが、若者ならぬ“バカ者”もやはり現れた。夜が遅くなるにつれて、スピーカーで爆音を鳴らす車が多くなっていき、警察に注意される一幕も。なかにはUSJのハロウィンイベントとのコラボ楽曲であるAdoの「唱」を流す者もいた。
爆音での走行を注意されるドライバー
またセンター街の奥へ進むと、男性2人が壁に向かってコソコソと“立ちション”をし、その周りには路上喫煙する若者も数多くいた。
立ちションと路上喫煙する男性たち
深夜2時過ぎ、ハチ公広場はほぼ無人となり、それまで警察官が必死に交通誘導していたセンター街も人通りが少なくなっていった。どうやら若者たちはクラブや居酒屋に流れていったようだ。例年に比べると、治安はずいぶんと守られていた今年の渋谷ハロウィーンであったが、まだまだ賑わいと“バカ者”は数多く見られたのが現実であった。この風物イベント、今年で“見納め”とはならなそうだ。
通行人の途絶えたハチ公広場
取材・文/集英社オンラインニュース班