これぞ「走る社長室」4人乗りヴェルファイアをJMSで展示したワケ 日本じゃまだ「要人車はセダンでしょ」?

ジャパンモビリティショー2023にヴェルファイアベースのリムジンが展示されました。4人乗りにすることで生み出した圧倒的な車内空間。ただ、トヨタにはより大きなミニバンとしてグランエースもあったはず。どう違うのか開発者を直撃しました。
トヨタのグループ会社であるトヨタ車体は、2023年10月25日より東京ビックサイトで開催されている「ジャパンモビリティショー2023」において、同社が製造する大型クラスのミニバン「ヴェルファイア」のコンセプトモデル「ヴェルファイア スペーシャスラウンジ コンセプト」(以下、スペーシャスラウンジ)を発表しました。
「ヴェルファイア」は姉妹モデルの「アルファード」と共に、大型ミニバンの高級モデルとして有名な存在であり、いまやその知名度は国内だけでなく、海外でも高いものとなっています。
その理由は、高級なインテリアと広い車内空間だと言われていますが、今回発表された「スペーシャスラウンジ」はそのなかでも、トヨタ車体が「最上級ミニバン」と位置づけているものです。
これぞ「走る社長室」4人乗りヴェルファイアをJMSで展示した…の画像はこちら >>トヨタ車体がジャパンモビリティショー2023で展示した「ヴェルファイア スペーシャスラウンジ コンセプト」(布留川 司撮影)。
なんといっても最大の特徴は、乗車定員を従来の7人から4人へ減らしたことによる車内スペースの拡充と快適性の向上です。従来のヴェルファイアは3列シートが基本だったのに対して、この「スペーシャスラウンジ」では最後尾の3列目をなくして2列4席に変えています。
これにより、2列目をやや後方にセットバックすることで、シートピッチが広くなり、膝前に空間が生まれています。リリースによれば、これによって確保されたスペースは約500mmにもなるといいます。ちなみに、名前にある「スペーシャス」とは、「広々」という意味であり、後席に座った人は文字通りラウンジのような室内の広さを実感できるでしょう。
また、インテリアのデザインも最上級の言葉通りに特別な仕様となっています。足元のフロアマットは特別仕様の専用絨毯。リアシートも座り心地を追求した専用品です。これにより、座り心地が向上しただけでなく、座面が通常モデルよりも高くなったことで座った時の特別感を演出しつつ、“後続車から頭が見えない”ようになっているのだとか。プライバシーにも配慮した仕様となっています。
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「ヴェルファイア スペーシャスラウンジ コンセプト」のスライドドア部分から見たリアシート周辺の車内空間。2シート仕様によって約500mmの車内空間が確保された(布留川 司撮影)。
ヘッドレストにはスピーカーが内蔵。リアシート前方の足元には鞄などの荷物が置けるフロアトレイと冷蔵庫が設置され、収納式のテーブルや携帯端末用の電源も完備しています。これらインテリアと装備品によって、ホテルのスイートルームのような高級感あふれる大空間が創出されています。
これら充実したリアシートの車内装備品は、同乗者向けの単なる「おもてなし」のために用意されたものではありません。この「スペーシャスラウンジ」ではビジネスユースでのVIP送迎も想定。乗り込んだVIPは広い車内でくつろぐだけでなく、そのまま移動中の車内において仕事やWEB会議を行うことも可能です。
運転席とリアシートの間にはカーテンが標準装備されており、これによってリアシートのプライバシー確保もできるようになっています。また、後部のラゲッジスペースには専用のハンガーバーを取り付けることで、ジャケットを折り畳まずに複数吊るすことができます。これを使えば、ビジネスシーンでよく行われる移動先に合わせた着替えにも対応できるようになっています。
トヨタではアルファード/ヴェルファイアよりも一回り大きなミニバンとして「グランエース」も用意しています。しかし、同車は全長5300mmの巨体。ヴェルファイア スぺ―シャスラウンジなら、全長5m以内(4995mm)、全幅で1.9m以内(1850mm)に収まるため、日本の都市部で扱うにはちょうど良いといえるサイズで広い室内空間を確保しています。大人数を載せないのであれば、グランエースよりもむしろ使いやすいのではないでしょうか。
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「ヴェルファイア スペーシャスラウンジ コンセプト」のスライドドアとハッチバックを開いた状態のリアビュー(布留川 司撮影)。
ただ、筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)が聞いたところによると、ヴェルファイアやアルファードといえど、スライド式の後部ドアがハイエースなどの仕事車を想起させることから、いわゆるセダンタイプのリムジンとは異なる、言うなれば一段劣る存在だと考える要人も多いようです。
とはいえ、そのようなネガティブイメージがあっても、ヴェルファイアやアルファードが高級ミニバンとして確固たるブランドイメージを形成しつつあることは間違いありません。実際、今回「最上級のミニバン」として「スぺ―シャスラウンジ」が発表されたのはその証左だといえるでしょう。
なお、「スペーシャスラウンジ」はジャパンモビリティショー2023の会場ではコンセプトモデルとして展示されていましたが、メーカー担当者いわく一般販売を考えているとのこと。ゆえに、今回の実車展示は来場者の反応とリサーチを兼ねたものともいえそうです。
セダンではなくミニバンベースの要人送迎車が主流になる日も、そう遠くないのかもしれません。