政府がホスト規制と女性支援に本腰へ…「自分の意思でお金払ったのでは」との声も噴出で賛否

ホストクラブをめぐる事件が多発したことを受け、政府が“ホスト規制”に向けて動く可能性が高まってきた。多額の借金を背負わされる女性が続出していることから「規制は当然」とする声がある一方、ネット上では「ビジネス的に違法性はないので法規制は難しい」「女性側を一方的な被害者とするのはどうなの」といった異論もあり、賛否を呼んでいる。
ホストクラブについては、お目当てのホストに大金を貢ぐ「ホス狂」と呼ばれる女性たちの存在がクローズアップされ、ホストの売上に貢献するための資金を稼ぐため、立ちんぼなどの売春行為をしたり、パパ活をしたり、風俗で働いたり、果ては「頂き女子りりちゃん」のように犯罪行為に手を染める者も出てきている。
キャバクラなどであれば、支払い能力がなければ「お帰りください」となるだけだが、ホストクラブは「売り掛け(ツケ)」というシステムがあり、使おうと思えば青天井で金を使えてしまう。どうやってツケを回収するのかといえば、お金のない女性たちは先述したように風俗や売春などで稼いで返済するわけだ。昨年4月の民法改正で18歳から成人になったため、10代で莫大な借金を背負ってしまうケースもあり、社会問題化したことで政府が対策に乗り出すことになったようだ。
今月14日、男女共同参画担当大臣の加藤鮎子氏は参議院内閣委員会で、ホストクラブ問題について「性的サービスへの従事の強要など犯罪となる行為にもつながっており、当事者だけでは解決しがたい深刻な問題」と発言。「警察による取締りなどに加え、困難に直面する女性たちが相談し、必要な支援につながる環境を整備することも重要」とも述べ、関係省庁と連携して悪質なホストクラブの取締りと女性の支援に取り組む考えを示した。
また、16日には自見英子消費者担当相が、禁止を求める声がある高額の売り掛けについて「現行の消費者契約法で(禁止を)規定することは難しい」との認識を示した上で、ホスト側が女性客の好意を不当に利用して契約した場合は「要件を満たしていれば、契約の取り消しができる」と発言し、「関係省庁との間で(対策に)必要な情報共有に努める」と語った。こうした一連の政治家の発言によって、近いうちに“ホスト規制”が現実化しそうな気配が高まっている。
これにネット上では「悪質ホストクラブを駆逐するのはいいこと」「ようやく規制の話が出てきて遅いくらいだけど頑張ってほしい」「昔のホストクラブはもっと上品だったが、今は本当に女性から搾り取るためなら何でもやる店があるから一定の規制は当然必要」などと賛同の声が上がった。
ただ、法律関係者などの間では「現状だと法的な規制は難しい」との見方が強い。大きな焦点となっているのが高額な売り掛けの規制だが、法律関係者から「代金の後払いは飲食以外の契約でもふつうに使われているもので、売り掛け制度に違法性はない」「仮に売り掛け制度に法規制をかけたら無関係な業界にも影響が及ぶおそれがあり、なおかつホストが個人的に立て替えるなどの規制逃れが可能なのであまり意味がない」といった指摘が相次いでいるのだ。
さらに、政府などがホストにハマった女性たちを「被害者」としていること自体を疑問視する声もある。女性たちは強制的に店で金を使っているわけではなく、お気に入りのホストを喜ばせたい、好意を持たれたい、場を盛り上げたい、他の客よりチヤホヤされて優越感を得たいといった理由でホストクラブに通い、大金を使っているケースが目立つ。
ホストが「押し売り」のようにして女性から金を巻き上げたのなら問答無用で許されないことだが、ネット上では「成人女性が自分の意思で金を払っているのに『ホストにだまされた被害者』として扱うのはどうなのか」「悪質なホストは取り締まるべきだけど、自分で納得した上で散財した人を税金で支援するのはモヤる」「その理屈だとギャンブルにハマって借金まみれになった人とか、投資に失敗した人とかも政府が助けないといけない」といった意見も多く、賛否両論となっているようだ。
悪質なホストは、新興宗教のようなマインドコントロールで女性客をつかみ、借金漬けにしているとも指摘されている。その理屈であれば、旧統一教会のように国が規制に乗り出すことも不可能ではないように思えるが、ホスト業界全体を「悪質な新興宗教」と同列にしてしまうとなると、かなり意見が分かれるところだろう。
いずれにしても、単純に「問題があるなら規制してしまえ」では済ませられない複雑な構造があり、今後も議論が続きそうだ。