混沌とするイギリス政治、キャメロン元首相の「政界復帰」とブレグジットの亡霊

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イギリスのスナク首相は、11月13日に内閣改造を行い、政界から引退したキャメロン元首相を外相に起用した。首相経験者が外相に任命されるのは53年ぶりのことであり、驚きの声が上がっている。
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発端は、ブレーバーマン内相の更迭である。彼女は右派で、親パレスチナ派のデモを批判するなど、物議を醸す発言で批判の対象となってきた。
たとえば、イスラエルへの抗議デモを「ヘイト行進」や「暴徒」と表現し、ユダヤ人社会への脅威だとした。また、ロンドン警視庁が親パレスチナ派のデモを妨害しようとする右翼の抗議者に対しては逮捕など厳しい対応をとるのに、親パレスチナ派のデモには手加減を加えているとして、その「二重基準」を非難した。
このような言動に各方面から批判の声が上がり、スナク首相は更迭に踏み切ったのである。

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ブレーバーマン内相の後任にクレバリー外相を充てた。そこで、外相にキャメロンを起用したのである。
キャメロンは、2010年から2016年まで首相を務めた。キャメロンは、イギリスがEUから離脱するのに反対だったが、リスクの大きい国民投票(2016年6月23日に実施)という手法をとり、離脱が決まってしまった。その責任をとって首相を辞任し、政界からも去ったのである。
キャメロンは保守党内では、中道派である。スナクは、キャメロンの起用で、中道派の支持を得ようとしている。キャメロンは、首相在任中は親中国の路線を採ってきた。
しかし、スナクはEU離脱(Brexit=ブレグジット)派であり、また右派であって、中国には強硬な姿勢をとり、イスラエル支持である。外交について、首相と外相の間で齟齬を来さないのであろうか。
党内右派は、仲間のブレーバーマン内相の更迭、そして中道派のキャメロンの起用に反発する声を挙げている。閣内では、29人の閣僚のうち、EU残留派が16人、離脱派が10人となり、残留派が優勢である。

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キャメロンは首相としての経験も豊富で、保守党支持者の主流から支持されている。総選挙でも2回勝利している。そのような実績と知名度を、内閣の支持率回復に活用しようというのが、スナクの目論見である。
しかし、世論調査会社「サバンタ」が1ヶ月前に実施した世論調査によると、キャメロンに好印象を持っているのは24%で、良くない印象を持っているのは45%であった。
また、同じく「ユーガブ」の11月13日の世論調査では、キャメロン外相起用について、「良い」が24%、「悪い」が38%であった。保守党支持者に限っても、「良い」が36%で、「悪い」が35%と拮抗している。
それは、EU離脱の最大の責任者が当時首相のキャメロンだからである。EU残留派の彼は、保守党内の離脱派を懐柔させるために国民投票で決めると言ってしまったのである。彼は、たとえ国民投票を実施しても承認されるはずはないと予測したのである。
ところが、イギリスの国民は、面白半分に「お祭り騒ぎ」でEU離脱に賛成票を投じてしまった。離脱となったときに、どうなるのか、どのような不利益が生じるのか、またどのような離脱手続きが必要なのかなど、全く議論もされないままの国民投票であり、ポピュリズムの極みであった。

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2016年の国民投票では、面白半分にEU離脱に賛成した人々も、その後の経済情勢の悪化を前にして、間違った判断をしたと後悔しているという。ポピュリズムのなせる失敗であるが、その決定に導いたキャメロンの手法に批判的な有権者が多いのは事実である。
キャメロンの後の首相は、テリーザ・メイ(2016年7月~2019年7月)、ボリス・ジョンソン(2019年7月~2022年9月)、リズ・トラス(2022年9月~2022年10月)、リシ・スナク(2022年10月~)と短期政権が続いてきている。いずれも保守党である。
2025年1月までには総選挙があるが、各種世論調査を見ると、支持率で保守党は労働党に20%もの差をつけられている。このような有権者の判断が変わらなければ、次の選挙で労働党に政権が移行する可能性が高い。
労働党のスターマー党首が親イスラエルの姿勢を打ち出しているが、これには党内のパレスチナ支持派の議員が反発しており、内紛となっている。中東情勢は、イギリスの政治にも大きな影響を及ぼしているのである。

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今週は、「イギリス政治」をテーマにお届けしました。