航空自衛隊の「次期戦闘機」に随伴する無人機が、ボーイングが豪州と開発中のMQ-28「ゴーストバット」が最有力候補になる可能性が高まりを見せつつあります。どういった理由からなのでしょうか。
航空自衛隊のF-2戦闘機の後継となる「次期戦闘機=GCAP(Global Combat Air programme) 」と編隊を組み“バディ(相棒)”となる随伴する無人機の選定において、ボーイングがオーストラリアと開発中のMQ-28「ゴーストバット」が最有力候補になる可能性が高まってきました。
2023年10月下旬に行われた米豪首脳会談で、日本・アメリカが進める随伴無人機の研究に、豪州も加わる見通しになったためです。ただ、この選定の裏側には、さまざまな駆け引きが存在する模様です。
空自「次期戦闘機」の相棒、「ボーイングの無人機」が有力か? …の画像はこちら >> 日英伊が共同開発する次期戦闘機のイメージCG(画像:防衛省)。
随伴無人機は、レーダーや赤外線追尾装置を搭載して有人戦闘機の周囲を警戒したり、AWACS(早期警戒管制機)を護衛したりする役割が求められています。ヨーロッパやトルコも研究を進めているほか、アメリカでもクラトス「XQ-58」など複数機が研究・試験段階です。しかし、米・豪が共同開発した機体は、2021年2月27日に初飛行したボーイングのMQ-28のみです。
ただし、MQ-28が最有力候補と観測できるのは、先に米豪共同だったから、だけではありません。
MQ-28は、ボーイングにとってアメリカ国外での無人機開発として最大規模の投資を行ったプロジェクトであるうえ、オーストラリアが第二次世界大戦後に初めて国内開発した戦闘用航空機です。それだけに、オーストラリアは開発に力を注ぎ、最終組み立てを国内で行ううえ、輸出にも期待を示しています。
一方、日・豪間では既に2014年7月、防衛装備品の共同開発や生産の協力強化を目的とした協定が結ばれています。こうしたことから、日本とオーストラリアが一緒になるのも流れに沿っていると理解できます。
そのうえ、ボーイングにとって日本は長年、防衛関連の有力な市場です。セールスへの人脈とノウハウも蓄積されています。それ故にボーイングはオーストラリアとタッグをより緊密にし、日本へ研究の深化を求めつつ、MQ-28の採用を強く訴えてくると想像できるのです。
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初飛行した際の多用途無人機MQ-28「ゴーストバット」(画像:オーストラリア国防省)。
反面、MQ-28が最有力候補とすると、日本にも対処しなければならない課題が出てきます。
1つは、開発シェアです。MQ-28は米・豪で既に初飛行済みで、日本は“後乗り”という形になります。そのなかで、どれだけ技術的かつ生産的なシェアを獲得できるかがポイントです。日本では随伴無人機の実機開発はこれから始まる状況であるため、おもに技術力を培う機会かもしれませんが、日本国内での雇用確保のために、生産でのシェアも獲得したいところです。
もう一つは、仮に日本でも生産が可能となった場合、米豪以外の国へ直接輸出を可能にできるかです。次期戦闘機は、日本から第三国へ直接販売できるよう、防衛装備品の輸出ルールの見直しが政府・与党内の検討が進んでいます。その随伴無人機は、次期戦闘機の装備品とみなすこともできる反面、独立した機種と考えることもできます。後者と定めて日本が積極的に開発と生産のシェアを獲得したければ、輸出ルールの整理も早期に必要かもしれません。
国際共同開発は、有人機と無人機の区別なく、参加国が自国に有利な計画になるよう様々な駆け引きがあります。仮にMQ-28が最有力候補になるなら、日本がどれほどかかわりを深めることができるのか、この動向には注意を払っていかねばならないでしょう。