〈池田大作氏死去〉“日本のフィクサー”の「健康不安説・死亡説の真相」「1兆円超と噂される個人資産の行方」「公明党の今後」…熱心な学会員たちに聞いてみた

表舞台から姿を消して13年、創価学会名誉会長の池田大作氏が老衰で95年の生涯に幕を下ろした。世界に広がる巨大宗教組織の長、また政権与党の一翼を担う公明党の創設者の訃報は「カリスマの死」として全世界を駆け巡ったが、現役の学会員たちは「老師」の静かな死にうろたえることなく悼んでいるようだ。♯1に引き続き、創価学会を支えてきた幹部や熱心な会員たちに、踏み込んだ質問をぶつけてみた。
「後継者問題はそもそも存在しない」と信者たちは語っていたが、池田氏の血縁者たちが特別な役職に就いて「代行」のようなことを務めることはないのだろうか。池田氏には存命の息子が二人いて、長男の博正氏(70)はSGI(創価学会インタナショナル)副会長、三男の尊弘氏(65)は創価学園副理事長と、ともに学会内の要職に就いている。この兄弟と同世代でもある学会員の一人がこう語る。「ウチはそもそも世襲制ではないので、それはないです。ただ何らかの形でお立場はつくかと思います。海外の政府の要人ですとか、文化人がお相手ともなると、外交的に池田ファミリーが表に立つのが大事なケースも出てきますので。しかし、宗教指導者の跡目とかそういうことではありません」
2008年に撮影された池田大作氏(写真/共同通信社)
この学会員は、池田氏が最後に姿を見せた公式の場である2010年5月の本部幹部会にも出席していた。当時の池田氏はどんな様子だったのだろうか。「池田先生はそれまでは毎月、本部幹部会に来られて会合をやっていました。ところが、6月の会合では池田先生不在の中、『これからのことは自分たちで決めていきなさい』というメッセージが全国の創価学会の会館に中継されたんです。そのときは体調に問題があるようなことは何も聞かなかったし、その後も聖教新聞にときどき写真が載ったり、書籍に先生のご指導が載ったりもしてましたから」(同前)しかし、それから長らく、池田氏は公式の場に出ることはなくなった。学会員の間で健康不安説や死亡説がささやかれたことはなかったのだろうか。「先生もその当時80代でしたから、学会員からしたらお体のことや具体的な病名を詮索するのに何の意味があるんだという感覚でしたね。週刊誌にはこんな病気だ、あんな病気だと書かれていましたが、先生のことをあんまり知らない人が書くわけですから、みんな腹立たしく思っていたでしょう。永田町界隈では観測気球的にそういう噂を流して反応を確かめることもよくあるので、それが事実だと思ったこともないし、それ以前に体調不良を隠す理由がない。そもそもこの時代にそんなことができるはずがないですから」(同前)
95歳で老衰のため亡くなった池田氏は、ごく最近はどんな様子だったのだろうか。「周辺の秘書のグループの人たちや、会長周辺の中枢の人とかは言うまでもなく最近のご様子をご存知だったと思いますけど、それを公にするかどうかは、池田先生の奥様とか息子さんとかご家族のご意思もあるわけで。創価学会は人生でいろんなことを悩み、苦しんでいる人たちのために存在するわけですから、ご自身の体が悪いからと公言しては公私混同になると思われたのでしょう。池田先生が病気だと知らされていようがいまいが、一人一人の信仰には関係ありませんので」過去には池田氏を「ミイラ化したい」と意見する学会員もいたというが、真相はどうなのか。「これだけ学会員が多ければ、途中で悪口言って辞めていく人もいるんですよ。学会に悪いイメージを焼きつけたい人だってたくさんいますから、そういう風に言ってるんじゃないですか。しかし、われわれは仏教団体なので、仏教の本義に反するようなミイラ化なんて発想がまずないですね。SNSで悪口をつぶやくレベルの話ですよ」宗教指導者としての側面だけでなく、国内外の要人との交流の多さから、池田氏を「フィクサ―」と見る向きもあった。内部から見て池田氏が「国士」として日本の支配に暗躍しているようなことはあったのだろうか。♯1で証言した50代の信者はこう笑い飛ばす。
創価学会本部がある信濃町駅周辺
「日本の社会を見ていて本当にそんなことできると思いますか? 普通に考えたらできないし、池田先生が日本を制圧して何をするんですか。影響力という意味ではお持ちだと思いますよ。60年以上宗教指導者を務めてこられて、創価学会もこれだけ大きくなったし、歴代の日本の総理とも親交がありましたしね。創価学会は、人生を頑張って生きようと思っている人たちのために存在しているのであって、会のために人が集まっているわけではないんです。学会員も大事ですが、それ以上に社会が安定していることが大事なんです。自分が幸せでも、いつ殺されるかわからないような国ではダメじゃないですか。創価学会員には政治家になる人もいればスポーツ選手もいるし、医者も芸能人も飲み屋のお姉ちゃんだってAV女優だっています。ありとあらゆる分野の人材を抱える組織のトップは社会を牛耳っているのと同じだ、という理屈なんでしょうか。公明党だって政策決めるのに、いちいち池田先生に相談してませんでしたよ」
2006年10月に撮影された池田大作氏(写真/共同通信社)
だが昨今、池田氏の長期不在が公明党の集票力を落としているという側面はないのだろうか。「集票力の低下は高齢化の問題でしょう。創価学会は日本の縮図みたいなものなので、日本全体で高齢化が進み、人口が減って子供が減ってくれば創価学会も同じ折れ線グラフになるわけで。今日まで池田先生がいても票は減ってきていたわけですから」池田氏の個人資産は1兆円以上とも噂されるが、内部ではどうみられているのか。男性が続ける。「個人資産をどれぐらいお持ちかわかりませんけど、例えば池田先生が書かれた『人間革命』という本をわれわれが学習するために買うので、その印税だけでも多額の資産はあると思います。ただ、池田先生にはプライバシーなんてほぼない。これだけ世界中の創価学会員の目があったら悠長にお金なんて使えるわけないでしょう。外で飯も食えませんよ。それに以前に長いことお住まいだった信濃町のご自宅は、めちゃくちゃ小さい和風の家でしたよ。だから具体的な資産の額は知りませんが、先生がお金を欲しがっていたと思っている学会員は誰もいないです。創価大学とか教育文化機関に先生の個人のお金を相当使われていると思いますよ」
1962年に撮影された30代の頃の池田大作氏(写真/共同通信社)
11月23日には学会葬が行われる予定だ。学会員は「老師」の死をどう受け止めているのだろう。「今日は私も学会の活動をしていましたが、周囲の方々はほんとびっくりしたよね、これから頑張っていかないとだね、という感じでした。表舞台に出てこられなくなって、みんないつかはこういう日を覚悟していました。もう95歳でしたから。先生の訃報は、創価学会本部から47都道府県の各地域に順番に連絡が降りてきて、みんなが知ったという流れです。創価学会は公明党のイメージも強いですから、政治的に論じたい人も多いのでしょうが、それだけ池田先生が多くの人や社会に対しても影響を与えたといえるでしょう。私自身も若いときはそこまで熱心に学会員をやっていたわけではありませんが、いろいろなことに行き詰った時に池田先生の指導に触れて、池田先生を自分の師匠、人生の羅針盤というか、そんな風に感じるようになりました。私個人はこれからも変わらないですし、多くの学会員のかたがそう考えていると思います」陰に陽に、政治や国のかたちにも影響力を及ぼしてきた「三代」の死が何を意味するのか。今後、徐々にわかっていくのだろう。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班