【新NISA】現行NISAから新NISAの移行手続きは必要? 制度概要や移行に関する注意点も解説

来年1月からスタートする「新NISA」。新NISAは注目度が高いため、これまでのNISAとの違いや新NISAにおけるおすすめの投資方法など多くの情報が飛び交い、どのような制度なのか何となくわかってきたという人もいるでしょう。

一方、すでにNISAを始めている人には、「新NISAを始めるには移行手続きが必要? 」「今保有している商品は今後どうなる? 」といった疑問があるのではないでしょうか。そこでこの記事では、新NISAの概要をお伝えしたうえで、現行NISAから新NISAへの切り替え手続きや、現行NISAで保有している商品の扱いなどについて解説します。

■新NISAとは? いつから始まる?

新NISAは2024年1月から始まる制度で、これまでのNISA制度を拡充・恒久化した新しいNISAです。新NISAには、以下のような特徴があります。

・「つみたて投資枠」「成長投資枠」の2種類の非課税投資枠がある(併用可能)
・年間投資枠が最大360万円に拡充(つみたて投資枠: 年間120万円まで、成長投資枠: 年間240万円まで)
・非課税保有限度額は1,800万円まで(うち成長投資枠は1,200万円まで)
・制度の恒久化、非課税保有期間の無期限化
・NISA口座内の金融商品を売却すると、その分の非課税投資枠が再利用できる

新NISAには2つの非課税投資枠があり、これまでのつみたてNISAが「つみたて投資枠」に、これまでの一般NISAが「成長投資枠」に該当するような制度設計になっています。また、年間投資枠が拡大し、つみたて投資枠の年間投資枠はこれまでの3倍の120万円に、成長投資枠の年間投資枠はこれまでの2倍の240万円に広がります。

なお、つみたて投資枠と成長投資枠は併用が可能ですので、より幅広い金融商品に同時に投資できるようになります。

さらに、新NISAでは非課税保有限度額が1,800万円に拡大します。そのうち成長投資枠で使える上限は1,200万円ですが、つみたて投資枠にはこうした上限はなく、つみたて投資枠だけで1,800万円を使い切ることもできます。

これまでのつみたてNISAは年間投資枠が40万円で非課税保有期間は最長20年、非課税保有限度額は最大800万円。これまでの一般NISAは年間投資枠が120万円で非課税保有期間は最長5年、非課税保有限度額は最大600万円でした。そして、つみたてNISAと一般NISAは併用できません。このように現行制度と比べてみると、新NISAの非課税枠の大きさを実感できますね。

こうした拡充に加え、新NISAは制度が恒久化、非課税保有期間が無期限化しましたので、好きな時に投資を始められ、非課税保有限度額の範囲ならいつまでも非課税で商品を持ち続けることができます。保有している金融商品を売却すると、その分の非課税投資枠が復活するところもポイントでしょう。このように、新NISAは従来のNISAがさまざまな点でバージョンアップした制度となっています。
すでにNISAを始めている人は新NISAへの移行手続きは不要
多くの点で使い勝手が良くなる新NISAですが、すでにNISAを利用している人は新NISAへの移行手続きが気になるのではないでしょうか。しかし、現行のNISAを利用している人は、新NISAの制度開始時に、現在の証券会社で新NISAの口座が自動的に設定されます。つまり、特別な手続きをしなくても自動的に新NISAの制度へ移行されるのです。

この時、現行のつみたてNISAで購入した全銘柄は新NISAのつみたて投資枠へ、現行の一般NISAで購入した銘柄は新NISAの成長投資枠へ自動的に引き継がれます。ただし、一般NISAで購入した銘柄のうち、新NISAの成長投資枠で対象外となっているものについては引き継ぎができません。

また、現行NISAと新NISAは別口座ですので、現行のNISA制度で購入した金融商品は、新NISAの非課税保有限度額1,800万円とは別枠で非課税措置が受けられます。たとえば、つみたてNISAには年間40万円の非課税投資枠がありますので、2023年までに利用を始めれば、現行のつみたてNISAの非課税枠も引き続き活用できます。

つみたてNISAの場合、新規買付は2023年で終了となりますが、非課税措置は商品を購入した年から最大20年間ですので、2042年までは非課税で運用可能です。一般NISAも新規買付けは2023年で終わりますが、2027年までは非課税で保有できます。

注意したいのは、現行NISAの資産を新NISAの口座に直接移すことはできないという点です(ロールオーバー不可)。新NISAの口座に移したい場合は、現行NISAの資産を一度売却する必要があります。同様に、新NISAの資産を現行NISAの口座に移すこともできませんので、この点に気を付けて運用する口座を選びましょう。
■新NISAを別の金融機関で始めたい場合は

現行NISAを利用していれば、新NISAの口座は証券会社で自動的に設定されますが、現行NISAとは別の金融機関で新NISAを始めたい時はどうすればいいのでしょうか。その場合、2023年中に金融機関変更手続きを行う必要があります。

まず、現在NISAを利用している金融機関で廃止手続きを行います(商品はそのまま保有、もしくは売却)。その後、新しい金融機関でNISA口座開設の手続きを行います。ただし、手続きの内容や期限は金融機関ごとに異なりますので、詳細は金融機関のサイトなどで確認してみましょう。

なお、新しい金融機関で新NISAを始めた場合、旧NISAの資産は金融機関変更前の金融機関で管理され、非課税保有期間内であれば引き続き非課税で保有することができます。
■新NISA制度を理解し、資産形成に活用しよう

現行のNISAを利用していれば、特別な手続きをしなくても自動的に新NISAの口座が設定されます。また、現行NISAの非課税投資枠は新NISAのものとは別枠で継続されますので、より多くの非課税枠を利用したい人は、今年中に現行NISAの口座開設と新規買付を済ませておきましょう。

これまでと比べ、より柔軟な運用が可能になる新NISA。制度の中身をよく理解し、効率的に資産形成が進められるよう大いに活用していきましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら