新宿・歌舞伎町の「トー横」で、高校生らに市販の咳止め薬を無許可で販売したとして、警視庁は男女4人を逮捕したことを11月22日発表した。近年「トー横」では、せき止め薬を大量に服用するOD(オーバードーズ)が流行し、たびたび問題視されてきた。キッズたちの“闇”に迫った。
逮捕されたのは、高橋光夢容疑者(21)、横川玲奈容疑者(22)と高校生2人。4人は新宿・歌舞伎町の東宝シネマズ横の広場(トー横)周辺で、男子高校生にせき止め薬を販売した疑いがある。
「近年トー横では、せき止め薬を大量に服用するOD(オーバードーズ)が流行っており、最近では『X』という咳止め薬の濫用が主流となっている。高橋容疑者は自らを『パンダ』と名乗りトー横キッズたちに定価よりも安く『X』を販売したとみられ、警視庁は入手経路についての捜査もすすめている」(社会部記者)トー横では、これまでも「X」によるODによって少年たちが緊急搬送されるなどの”トラブル”があとを絶たなかった。実話誌ライターの男性(20代)は、「X」が流行した背景についてこう語る。「『X』が人気なのは、その入手の手軽さにあります。もともとODの定番といえば、『V』というせき止め薬でしたが、近年ではドラッグストアに実物を置いてなかったり、『2箱以上のお買い求めはご遠慮ください』と店側も注意喚起していました。そのいっぽうで『X』は歌舞伎町では購入制限もなく、値段も1箱(20錠いり)で1,320円とコスパもいい。そのためトー横には『調達班』と呼ばれるメンバーがいます」
トー横キッズたちも、「X」の入手方法についてこう話す。「『X』を仕入れてきてくれる『調達班』みたいなヤツがいて、『あれ(X)ある?』と聞くと、すぐに安く売ってくれるので助かってます。『X』の転売を”シノギ”にしているのも何人かいて、『副業でやってるんだよね』とか話していましたが、法律では完全にアウトですよね(笑)」(20代・男性・トー横キッズ歴2年)「以前までは歌舞伎町のドラッグストアで簡単にパクれましたけど、いまは実物を置いていない店もでてきた。だから最近、調達班がわざわざ大宮の方まで『X』をパクりにいく」(20代・男性・トー横キッズ歴6か月)
トー横で知り合ったという10代のカップルが「X」を始めたきっかけも、この「調達班」によるものだったという。「ちょうど1カ月くらい前かな? ここで2人でいるときに『一緒に飲まない?』と『X』を渡されたんです。さすがに草(大麻)とかはダメだけど、市販薬は違法じゃないし、いいかなって感じで始めましたね。そしたらドハマりしちゃって、今は定期的にその人から『X』を買うようになりました(笑)」
このような状況について、歌舞伎町ウォッチャーの仙頭正教氏はこう警笛を鳴らす。「トー横界隈では市販薬によるトラブルがあとを絶たず、過去には未成年らしき女の子が『X』をODしたことで意識を失い、全身がピクピクと痙攣している動画が出回りました。さらに今年の7月には、トー横キッズの未成年の女の子を『Xあげるからホテルきて』と呼びだして行為に及んだとして、30代の男が未成年淫行の疑いで逮捕される事件も起きました。しかし、今でもトー横キッズが『X』を飲んでいる姿はよく見かけますし、そのうちの一人は『ボク、10シート(100錠)いかないとパキれないんすよ』と話していましたね」事実、取材したこの日もトー横キッズからの“OD自慢”は絶えなかった。その呆れるコメントを紹介する。「トー横にくる子たちの8割は(Xで)ODしてるんじゃないですか? 酒を飲むときのテンションとはちがって、ちょっと落ち込んだり、病んだときに『誰か一緒にXやらない?』って感じで飲みますね。たまにノリで10シート(100錠)いってパキりすぎて意識ぶっ飛ぶ子もいますよ(笑)」(前出・20代男性・トー横キッズ歴6か月)「ここでは『X』をラムネ感覚でODするぶっとんだ子ばかり。この前、自分もすこし調子に乗って白ワイン3本と『X』を4シートいったら記憶がぶっ飛びました(笑)。あとで周りの子に話を聞くと、めちゃくちゃケンカを売ってたぽくて…」(前出・20代男性・トー横キッズ歴2年)
トー横キッズたちに蔓延する”市販薬OD”。今年はインフルエンザやプール熱などが大流行しており「薬が足りない」事態に陥っている。今回の逮捕をきっかけに、警察は一刻も早く対処に本腰を入れるべきだろう。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班