直木賞作家の伊集院静(いじゅういん・しずか、本名・西山忠来=にしやま・ただき)さんが24日、肝内胆管がんのため死去した。73歳だった。伊集院さんは今年10月に肝内胆管がんの治療のために執筆活動を休止すると発表。復帰に向けて懸命な闘病を続けていたが、帰らぬ人となった。通夜・告別式は近親者で行い、しのぶ会の開催は未定という。野球、ゴルフを始め、スポーツをこよなく愛した伊集院さんは生前、節目のタイミングでスポーツ報知に特別寄稿を行っていた。著書インタビューなども含めた伊集院さんの文章や発言を再録し、名言を振り返る。
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▼「スター選手は本人の力量・努力によってプレーをしているが、スーパースターになるには見えない多くの手がその選手の背中を押し、ある時は抱擁してくれる幸運を持たなければならない」(06年9月14日付、松井秀喜124日ぶりメジャー復帰にあたり寄稿)
▼「メジャー野球の女神は一筋縄では言う事を聞いてくれない性悪女のようだ」(06年10月9日付、ヤンキースがディビジョンシリーズ敗退にあたり寄稿)
▼「スポーツは人々に何ができるのか。その答えはまさに今日のゲームの中にあった。懸命にプレーすることが選手にとって生きる姿勢を示すものである。人は人が懸命に生きている姿に感動し、うつむきそうであったり、哀(かな)しみに暮れそうなこころに、ひとつの光を見つけることができるのだ」(11年7月25日付・震災後に宮城で行われた球宴に寄せて)
▼「かつて松井に『女優を嫁にするな、99%は自分勝手だから』って言ったことがある。でも俺は、例外の1%に2人連続で出会うことができたんだ」(14年5月12日付・自伝的小説「愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない」のインタビューで)
▼「悲しみの真っただ中にいる時は、周りの人に何を言われようと分からないんだけど、人間は元気で生きていれば、形の違う幸せに出逢(あ)えるものなんだよ。ずっと不幸というのはあり得ないんだ」(16年9月8日付・「大人の流儀第6弾 不運と思うな。」のインタビューで)
▼「若者はたった一人、マスターズの舞台を目指して、一人修練を続けた。敗れたコースで、皆が立ち去った後も、一人でパターを打ち続けた。星の灯(あか)りだけが、彼の口惜(くや)しさと歯ぎしりを、見つめ、聞いていた。ゴルフに神様がいたら、そんな彼の姿を神様は見ていたのかもしれない」(21年4月13日付・米マスターズ松山英樹初優勝に寄稿)