【森永卓郎の本音】短命化する日本人

日本人の平均寿命が2年連続で短くなっている事実をご存知だろうか。女性の平均寿命は、20年の87・71歳をピークに、21年87・57歳、22年87・09歳と2年間で0・62年短くなっている。男性も、20年の81・56歳をピークに、21年81・47歳、22年81・05歳と2年間で0・51年短くなっている。高齢社会の到来で、社会保障費の負担がとんでもない重荷になると言われながら、日本人が短命化するという思わぬ変化で、その問題が緩和されてきているのだ。
もちろん、この短命化は一時的な現象だとする見立てが多いし、政府もそう解釈している。新型コロナの感染拡大で亡くなる人が増えたのが短命化の原因だと言うのだ。だから、新型コロナが落ち着いた今年は、再び長寿化のトレンドが戻るだろうというのが、大方の見方だ。
ただ、私はそうではないだろうと考えている。22年の平均寿命は、前年と比べて男性は0・42年縮んでいるが、そのうち新型コロナの影響は0・12年に過ぎないと厚生労働省の寄与分析が明らかにしているのだ。女性も、ほぼ同様だ。つまり平均寿命が縮んだことの3分の2以上は、新型コロナ以外の要因なのだ。
それでは何が起きたのか。明確な因果関係を立証するデータは存在しないのだが、近年、高齢者が医療や介護サービスを利用する際の自己負担が、どんどん引き上げられている。そのため、お金がなくて、体調が悪化しても医療にかかれず、介護サービスを利用できない高齢者が増えているのではないだろうか。
すべての政策の評価は、平均寿命に集約されると言われる。その意味で、岸田政権の政策は、これまで最悪の結果をもたらしている。岸田政権が続く限り、短命化は続くのではないか。
(経済アナリスト)