「特産品で兵器買わせて!」実はロシアだけではなかった 兵器の物々交換の実態とは

ロシアがエジプトに対し、ヘリコプター用のエンジン約150基の返還を求め、その代わりに小麦輸出を確約するという方針を打ち出しました。兵器をお金ではなく物々交換する事例、実は今回だけではありません。
2023年11月初旬、ロシア国防省がパキスタン、エジプト、ベラルーシ、ブラジルなど、自国製兵器の購入国に対してヘリコプターや兵器の予備部品の返還を要求しているニュースが報じられました。2022年2月から開始したウクライナ侵攻による装備品不足のためです。
「特産品で兵器買わせて!」実はロシアだけではなかった 兵器の…の画像はこちら >>一時期物々交換で購入される話があったロシアのSu-35S(画像:ロシア国防省)。
この際、Mi-8およびMi-17ヘリコプター用のエンジン約150基返還という取引に応じたエジプトには、“小麦輸出の継続を確約する”という約束が買い戻し金の代わりとなりました。なお、エジプトは小麦の全輸入量の60%以上をロシアに依存しています。
このほかにも、ロシアは北朝鮮に食糧と引き換えに兵器を購入することを望んでいるという報道もあり、アメリカのロイド・オースティン国務長官が「物乞い」をしていると揶揄したことも。しかし、このような物々交換のような方法で兵器を入手するのは、別にロシアに限ったことではありません。
まず、1970~80年代のイラクです。この時期、同国は戦闘機であるミラージュF1やそれに関係する武器弾薬、さらには原子力発電所まで、フランス製のものに頼っており、当時のイラクとしてはフランスが最大の兵器取引相手国でした。これらフランス兵器の中には、イラクの原油を供給する引き換えとして入手したものが多くありました。
またサウジアラビアも、原油をアメリカに供給する代わりとしてアメリカ製の兵器の購入や安全保障面の支援を受けるという相互依存の関係を続けてきました。2010年代以降は、原油価格の上昇により、アメリカがそれまでコストが高いとしてきたシェールオイルの生産に乗り出し、関係には若干変化が起きていますが、依然として重要な関係であることは間違いありません。
さらに、サウジアラビアはイギリスとも戦闘機の購入資金の代わりに、相応の原油を供給するという取引で、1985年に「トーネード」を96機、2006年にはユーロファイター「タイフーン」を72機購入する契約を結んだことがあります。この一連の取引は「アル・ヤママ武器取引」とも呼ばれます。
原油以外のケースとしては、2017年にインドネシアがロシア製のジェット戦闘機であるSu-35Sを11機購入するため、特産のコーヒー豆や茶、パーム油といった農産物との物々交換で対応しようとしたことがありました。当時ロシアはクリミア半島併合などの問題で西側諸国から農水産物の輸入を禁止したことから考え出されたプランでした。しかしこの購入に関しては、ほかの機体との共同運用の問題などで、2020年に棚上げされて以降は進展がありません。
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サウジアラビアがイギリスから購入した「タイフーン」とアメリカから購入したF-15(画像:サウジアラビア空軍)。
今回ロシアが農作物と兵器の物々交換のような行動をし始めたことで、経済制裁や経済危機が続く国では、兵器購入金の代案として用いる可能性があるかもしれません。例えば、2023年11月19日に政権交代が起きたアルゼンチンは、稼働機がゼロになってしまった超音速の戦闘機購入を急務としていますが、その購入金のかわりとなる大豆、とうもろこし、小麦、大麦、 牛肉などの輸出品が数多くあります。