渋~い「無塗装の飛行機」なぜ衰退? かつてはJALも採用 軽くて低燃費なのに消えたワケ

空港で見かける飛行機の大多数は、胴体全体に塗装が施されているのが一般的ですが、かつては無塗装の、金属がむき出しで銀色に光る機体が一部で見られました。どのような効果があり、なぜなくなったのでしょうか。
2023年11月、宅配大手のヤマトホールディングスの貨物機(エアバスA321P2F:JA81YA)が国内で飛行試験を開始しました。この「ヤマトの貨物機」はJAL(日本航空)によるオペレーションのもと、サービスを開始する予定です。JALでは過去に自社で貨物機を保有していましたが、このなかにはいまや珍しい機体デザインがあり、「ヤマトの貨物機」はそれに似通った部分があります。
それは、胴体の金属部分がむき出しで、ギラギラと銀色に輝く「ポリッシュドスキン(通称でベアメタルとも)」というものです。これには、どのような目的があったのでしょうか。
渋~い「無塗装の飛行機」なぜ衰退? かつてはJALも採用 軽…の画像はこちら >>JALカーゴの初代ボーイング747F「ポリッシュドスキン」機、機番はJA8180(画像:contri[CC BY-SA〈https://bit.ly/34rszgG〉])
同社によると、ポリッシュドスキンは胴体に使用されているアルミ合金を研磨剤で磨きあげ、表面に酸化皮膜を作り上げることで、塗装したのと同様に機体の腐食を防ぐほか、光沢の維持を図っていたそうです。
ポリッシュドスキンの大きなメリットは、軽量化による燃費の向上です。JALによると、ボーイング747型機の場合、胴体表面に使用される塗料の重さは約150kgとのこと。「ポリッシュドスキン」はそのぶん機体が軽くなり、これにより1年間で1機あたり4万リットル、ドラム缶だと約200缶分に相当する燃料の節約ができるとされています。
このポリッシュドスキンはJALのほかにも、かつてアメリカン航空で採用され、同社のシンボルマーク的な機体デザインとなっていました。
しかし、現代の旅客機・貨物機ではポリッシュドスキンはほとんどナシ。過去に貨物専用機運航から撤退したJALはもちろん、アメリカン航空でも胴体をポリッシュドスキンではないものに変更しています。なぜこのデザインは過去のものとなったのでしょうか。
アメリカン航空では2013年より、ポリッシュドスキンから、銀色の塗料を基調とした、かつてよりピカピカが抑えられた新塗装に変更しています。これは、胴体にこれまでのアルミニウム合金ではなく、無塗装状態では銀色にならない複合素材(カーボン素材)を使ったボーイング787を導入したため、従来デザインの継続が難しくなったことがひとつの理由とされています。
また現地メディアによると、ポリッシュドスキンは磨き上げるメンテナンスに手間を要することから、人件費が高くつくぶん、燃費が節約できても、トータルコスト的には塗装を行うのと変わらないものだったそうです。
なお現在では、ボーイング787のほか、エアバスの「A350」も胴体に複合材を使用しており、大小さまざまな旅客機を使用する航空会社では、ポリッシュドスキンが採用される可能性はあまり高いとはいえません。
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グレーマイカ塗装が施された「ヤマトの貨物機」(乗りものニュース編集部撮影)。
現代ではポリッシュドスキンのような“地のまま”に見える機体であっても、胴体にはグレーの塗装が施されていることが一般的です。たとえば、「ヤマトの貨物機」では、「クロネコ」が描かれた黄色い尾翼と、胴体に「グレーマイカ」というつや消し塗装が施されているほか、LCC(格安航空会社)のジェットスター・ジャパンも“地のまま”のような機体デザインですが、グレー系の塗装を採用しています。
ちなみに、胴体に塗装をするのは、機体を美しく見せ、どこの会社の飛行機かわかるようにするほか、機体を外部の環境から保護する役割があります。