【金相場が史上最高額値を突破!】売り時はいつ? 今から買うのは遅い? 損しない売り方は? 全部プロに聞いてみた!

金の国内小売価格が史上初めて“1グラム=1万円”を突破した。背景にはさまざまな要因があるそうだが、もっとも気になるのは、いつが売り時で、いつが買い時なのかということだろう。

過去最高額ということは、やはり金を売るには今がベストタイミングなのか、逆に言えば、今頃になって金を買うのはさすがにリスキーなのだろうか。そのあたりのリアルを探るべく、大手買取専門店「買取大吉」の新宿東口店を訪問。鑑定士の木村健一さんに話を聞いてみた!

■金が史上最高額! 金相場と世界情勢の深い関係

――まず、金相場の現状について教えてください!

金の価値は今とてつもなく上がっていて、現在は1グラム (24金=金の含有率100%)あたり1万500円ほどとなっています。これは史上最高額で、2022年2月の時点では6,900円だったので、急上昇したかたちになりますね。

――そもそも、なぜそんなに金の価値が上がっているのでしょう?

2022年2月の時点……つまり、金1グラムあたり6,900円のときも、かなり金の価値は高まっていた頃だったんですよ。主なきっかけは新型コロナウイルスの蔓延です。世間的にも、「これ以上はもう上がらないでしょ」という雰囲気があったくらい、金の価値は高まっていました。

しかし、そこに追い打ちをかけるようにウクライナをめぐる戦争や、スイスの大手銀行クレディ・スイスの破綻などが重なって、金の価値はさらに一気に高まっていきました。

――戦争やコロナ禍が、金の相場にどのような影響を及ぼしているのですか?

世界情勢が安定していれば、投資家は主に株式に投資します。しかし、世界情勢が不安定になってくると、投資家は株式ではなく、“安定資産”とされる金のほうに投資する動きが強まるんです。

世界経済の状況は戦争が起きるたびに不安定になりますから、これまでも戦争が起きるたびに金の価値は上がってきました。ここ最近の金相場も、円高の影響でちょっと下がったり、アメリカの金利の問題で上がったりと小さな変動は続いているものの、基本的には高い状態を保っています。

■金相場の上昇トレンドはいつまで続く?

――ちなみに、今後の金の相場はどうなっていくのでしょうか……?

答えは誰にもわかりませんが、まだ上昇トレンドが続くだろうとは言われていますね。実際、世界の不安定な状況は今後もすぐには回復しなさそうですし、金相場も一定の水準は保つと考えられています。

――今から金を買うのは遅いのでしょうか? ぶっちゃけ、金相場の天井はどこだと考えられていますか?

天井についても正直わかりません。1980年以前は、金1グラムあたり900円の時期もありました。1982年頃に3,000円/1グラムくらいになりましたが、私が「買取大吉」に入社した2018年の時点ではまだ4,500円/1グラムでしたし、その間がゆるやかに上がったり下がったりを繰り返していたんです。イラク戦争で一気に上がったりしたこともありましたが、数十年単位で見ればそこまで大きな変化はありませんでした。

それがコロナ禍を経て、2022年2月には6,900円にまで上昇し、当時は「今さら金を買うのは馬鹿でしょ」「こんな高値で買う人はいないよね」「絶対に売り時でしょ」と信じられていました。しかし、そこからさらに一気に値上がりしたわけですから、今後どこまで上がるかは予想できそうにありません。また戦争やパンデミックなどがあれば、ここからさらに高騰する可能性もあります。

――金相場の天井がわからないということは、売りどきもわかりませんよね?

確かなことは言えませんが、個人的には、現在の金相場は歴代最高額まで上がっていますから、使っていない金はなるべく早く売ってしまったほうがいいとは思っています。

1980年代、イラン・イラク戦争の影響で金相場が最高で6,000円以上になったのですが、アメリカと旧ソ連の緊張が緩和されたことでドルへの信頼が戻り、金相場は一気に半分くらいまで急落したこともありました。

今ならウクライナを巡る戦争が終わったり、インバウンドや金利の緩和で経済が戻ってきたら、また金相場は下がってくる可能性もあります。
■金の売却で損をしない秘訣! 業者選びのポイント

――「買取大吉」にも金の持ち込みは増えていますか?

そうですね。3~4年前と比べ、金の持ち込みは2~3倍に増えています。

――手元にある金を高く売るコツがあれば教えてください。

高く売るコツは、「金を溶かすしかない業者」には持ち込まないことが大切です。

大前提として、金といってもいくつか種類があります。ひとつは「溶かしてインゴット(金属塊)にする金」と、もうひとつが「そのままで価値がある金」ですね。

前者の場合は、溶かして固めるために「精錬」という工程を挟む必要があるので、精錬手数料というものを引かせていただくことになります。後者の場合、金自体の価値は30万円分でも、ブランドという付加価値があるので100万円で買い取ります、というケースなどもありえます。

しかし、「金を溶かすしかない業者」はどんな金もただの貴金属と見做すので、本来100万円の価値が付いてもおかしくないカルティエのバングルを持ち込んでも、30万円でしか買い取ってくれません。金を売却するときは、ちゃんとブランド業者、ジュエリー業者などの専門業者と繋がっているところに持ち込むようにしましょう。

――売り手からすればかなりの損失ですね……。金の保管方法で何か気をつける点はありますか?

18金などは変色するケースがあるので、つい磨かないと価値が下がると考える方がいますが、金は磨かなくて大丈夫です。ありのままの状況で持ってきていただきたいと思います。アクセサリーなどの場合、磨くことで酸化防止のコーティングが取れてしまい、結果として磨いたあとのほうが経年劣化してしまう現象があるので、何もしないようにしてください。

――家を探せば、意外に眠っている金があったりするのでしょうか?

意外にあると思いますよ。おじいちゃんが昔使っていたタイピンやメガネ、おばあちゃんが着けていたブローチなど、メッキに見えて金が使われているケースは少なくありません。金杯や懐中時計、小判の飾り物などもそうですね。昔は今ほど金の価値がなかったので、割といろんなものに使われていたんだと思います。

私の実家にも、そろそろ廃棄しようとしていた小物のなかに、金でできたものがありました。みなさんもぜひ、金が史上最高額になったこの機会に探してみてください。