ナニコレ!? 砂漠に鎮座する「超巨大旅客機っぽい物体」その正体とは 「世界最大」A380と激似

エアバスA380に似た、巨大な航空機そっくりの“機体”を、ドバイ近郊の砂漠で発見しました。目を凝らして見れば飛べないのは分かるものの、なぜここに留め置かれているのでしょうか。
アラブ首長国連邦・ドバイ近郊にあるアル・マクトゥーム国際空港へ向かう途中の砂漠の中に、総2階建ての胴体で「世界最大の航空機」とも称されるエアバスA380に似た、航空機らしき巨大物体があります。A380と同じ総2階建てながら、旅客機らしからぬ、くすんだ緑色の塗装に包まれた巨体は、半端ではない威圧感を周囲に放っています。この“機体”はなぜ、ここに留め置かれているのでしょうか。
ナニコレ!? 砂漠に鎮座する「超巨大旅客機っぽい物体」その正…の画像はこちら >>ドバイの砂漠にとどめ置かれた、エアバスA380によく似た物体(加賀幸雄撮影)。
筆者は2013年のドバイ航空ショーでも、会場へ向かう途中に、この“機体”の同じ姿を見かけました。ただ、一般的に空港で見かけるA380とは、よく見るといろいろなところに差があります。たとえば、2階部分など胴体の所々に取っ手のような金属柱が付いていたり、主翼の端は支柱が設置されており、翼が垂れないようにしていたりしています。少なくとも、飛べる状態でないことは明らかです。
アル・マクトゥーム空港へ到着後、この “機体”について何か知っているかと思い、空港の案内係や空港詰めの警察官に設置理由を聞いてみました。すると警察官からは「訓練用だろう」との答えが。また、帰国時のドバイ国際空港で、エミレーツ航空の方に聞いても、似たような答えでした。
とはいうものの、実際「何の訓練に使うか」というところまでは、誰に質問しても、結局わかりませんでした。
ただ、この“機体”の武骨な姿から筆者が思い出したものがあります。それは、「ジャンボ・ジェット」ことボーイング747と、かつてJAL(日本航空)でも運用されていた3発ジェット旅客機、マクダネル・ダグラスMD-11の特徴的な機体後部を合体させ、さらに胴体を短くしたような、魔改造極まりない“機体”らしき物体です。かつて英・ロンドンのヒースロー空港で見ました。ドバイで見たものと、雰囲気的には、やや近いものがあります。
ヒースロー空港で筆者が見かけた“機体”は、消火訓練用でした。そこでドバイのA380らしき“機体”を、「消火」「訓練」などをヒントにインターネットで検索をかけてみたところ、ドイツの航空機の消火訓練機材を製造する会社の公式サイトに、ドバイの“機体”とほぼ似たものを見つけました。
どうもこの“機体”は、消防救助訓練に用いられるもののようです。
世界各地の空港は、航空機の離着陸失敗に備えて定期的に消火救助訓練を行っています。ただ、20年以上前に日本国内の国際空港で見学した訓練は、長さ2m程度のべニヤ板を数枚つなげて、そこに炎上する航空機の絵を描き、それを的に放水するというものでした。世界的には、こういった訓練の際に必ずしも、巨大な“機体”を必ず用意しなければならないわけではなさそうです。
しかし、本物と同じ大きさの“機体”であれば、エンジン火災や客室、操縦室内など幅広い場所での火災に備えて訓練を重ねることもできそうですし、その臨場感の高さから、スタッフのスキルを磨くことができるのは間違いないでしょう。
砂漠の中で目立つだけに威圧感を覚える“機体”でしたが、訓練用と考えると、異様に見えたその巨大さが、頼もしく見えてきました。