ロシア製じゃなくて「ラファールどうですか?」 旧ソ連の構成国に戦闘機を売り込むフランス その狙いとは

フランスのマクロン大統領が、カザフスタンとウズベキスタンを訪問した際に自国製の戦闘機「ラファール」を売り込みました。ロシアの影響力が強い国々で、この提案はなにを意味するのでしょうか。
2023年10月26日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はカザフスタンとウズベキスタンを訪問した際に、旧ソ連・ロシア製戦闘機の買い替え候補として自国製の戦闘機である「ラファール」を提案したことがフランス国内で報じられました。
ロシア製じゃなくて「ラファールどうですか?」 旧ソ連の構成国…の画像はこちら >>ダッソー「ラファール」(画像:フランス航空宇宙軍)。
この2か国は、かつてのソビエト連邦の構成国であり、安全保障面でもロシアとの関係が深く、保有兵器は旧ソ連・ロシア製が大半を占めていました。ウズベキスタンはMiG-29、カザフスタンはMiG-31、MiG-27、MiG-29、Su-24といった多数の旧ソ連系機体の代替機を探しています。
これまでも、フランスの「ラファール」はロシア機の市場を切り崩してきました。エジプトはSu-35の購入に動いていたものの、これを破棄し2015年2月に「ラファール」を24機購入する案に変更。その後2021年4月に30機の追加発注も行っています。
インドネシアでも同様に、Su-35を11機購入するプランを棚上げし、ひとまず6機の「ラファール」を購入することが2022年2月に明らかとなっています。しかもインドネシアの場合、西側諸国の制裁に苦しむロシアへ資金の代わりに、特産品のコーヒー豆や茶、パーム油といった農産物を渡すという破格の条件だったにも関わらずです。
ロシア軍機の購入をためらう国が出てきた背景としては、北大西洋条約機構(NATO)を中心として、西側諸国の防空システムとの互換性の問題があること、また2014年3月のクリミア併合以降の西側諸国の制裁により、そもそも部品供給が滞りがちなこと、さらにロシアと一緒に自国も制裁の対象になる懸念などがあるようです。
最近では、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻も大きく影響しています。ロシアが「特別軍事作戦」と呼称するウクライナとの戦闘を開始した後、さらにロシア製兵器の納入は滞りがちになっています。
とはいえ、ウズベキスタンやカザフスタンといった、ロシアの影響力が強いと思われる両国がフランスの案を検討するということは、兵器市場にとって大きな転換点といえます。実は2023年6月のパリ航空ショーにおいて「ラファール」の製造元であるダッソー・アビエーションのエリック・トラピエCEOが「2022年2月のウクライナ侵攻が戦闘機の競争力学に影響を与えている」と発言しており、ロシア兵器市場のさらなる切り崩しを意図しての売り込みであることがうかがえます。
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Su-35はイランが最近購入すること表明したが先行きは不透明(画像:ロシア国防省)。
ロシアの影響力が強い国はアメリカ製の兵器の購入も、ロシアの反応を見て控えるケースがあるのだそう。そうしたなか、兵器輸出に関しては伝統的にどこでも売る“中立国”だったフランス製の兵器にとって有利に働く部分も大きいようです。事実、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のデータを元に「グローバルノート」が算出した2022年の兵器輸出額の国別ランキングでは、フランスがこれまで2位だったロシアを追い抜いて世界第2位の武器輸出国となっています。