日本一矛盾した信号機、どう運転すれば良いのか… 県警の明かす「誕生秘話」に思わず納得

この世には「対になった概念」が多数存在し、その多くは両立が難しく、ときには不可能であるケースも珍しくない。たとえば「右を向きながら左を向く」といった具合にだ。
以前X(旧・ツイッター)上では、「全方向に進める赤信号」が話題となっていたのをご存知だろうか。
【関連記事】一見普通の案内標識、意味が分かるとゾッとした… 「絶望の75km」にドライバー戦慄

今回まず注目したいのは、魅力的な動画をアップしたりと、海洋生物に関する活動に取り組んでいるXユーザー・でんかさんが投稿したポスト。
「逆に何したらダメなの」と意味深な1文の綴られた投稿には、信号機が写った写真が添えられている。一見すると単なる赤信号なのだが、よく見ると…。
日本一矛盾した信号機、どう運転すれば良いのか… 県警の明かす…の画像はこちら >>
なんと、青色で灯火された矢印が「左」「前方」「右」の3方向を示していたのだった。

関連記事:はじめしゃちょー、タクシー内で感じた“命の危機” 「明確な死というか…」
車両は対面する信号が赤色を表示していても、青色の矢印が示す方向には進行できる。
しかしその場合も「左折か直進のみ」や「右折のみ」といった具合に、進行方向は限定されるもの。今回のように「3方向(全方向)に進める」のであれば、そもそも青信号を表示すれば良いのでは…と、多くの人が疑問に感じたことだろう。
実際こちらのポストは、投稿から数日で1万件以上ものリポストを記録するほど大きな話題に。他のXユーザーからは「どこに向かう人に対しての赤信号なのか…?」「何なんだこれは」「バック禁止ってこと?」など、戸惑いの声が多数寄せられていた。
そこで今回は、件の信号の正体を探るべく、ポスト投稿主・でんかさん、ならびに信号を管理する「三重県警察」に詳しい話を聞いてみることに。その結果、信号の「意外な過去」が明らかになったのだ…。
関連記事:堀江貴文氏、エレベーター人数制限に不満 「急いでるのに乗れないとか面倒」
逆に何したらダメなの pic.twitter.com/rQ6yjTpqwb
でんか (@K_theHermit) October 21, 2023
写真に写った道路は、三重県松阪市と伊勢市を結ぶ「南勢バイパス」(国道23号)と判明。
でんかさんは発見時の様子について「『これ、何をしたらダメなのか分からないよね』『青信号でも良くない?』と車内で話題になったので、撮影して投稿しました」と振り返りつつ、「絶対同じことを思ってる人が日本中にたくさんいると思いまして、予想通りでした」とのコメントを寄せてくれたのだった。
続いては、三重県警の交通規制課に、詳細を尋ねてみる。まずは基本のチェックから…ということで念のため確認したところ、やはりこちらの信号は「矢印の方向全てに進行可能」という認識で正しいとのこと。
ではなぜ、わざわざ信号の表示を「赤信号」としているのか。こちらの理由について触れる前に、どうやら件の交差点について理解する必要がありそうだ。

関連記事:「安全運転」呼びかけた警察長が追突事故被害 会見後の赤信号待ち中に…
三重県警の担当者は、「こちらは松阪市にある新屋庄町(にわのしょうちょう)交差点といい、2007年に同じ国道23号の中勢バイパスの拡張を受けて誕生しました」「当初は、赤信号が表示された状態でまず『左折・直進可能』の矢印が表示され、その後は『右折可能』に切り替わる、最もオーソドックスな形式を採用していました」と、その成り立ちを説明する。
…と、ここで気をつけたいのが、対向車側も「全く同じ信号表示がされている」という点。
担当者は、こちらの前提を踏まえた上で「『左折・直進』が表示されている際に誤って右折してしまう…という交通事故が発生するようになりました」「そこで2015年より、現在の表示内容に変更となりました。信号の青矢印が3つ点灯している際、対向車側の信号では赤信号のみ表示されています」と、説明してくれたのだ。
つまり一風変わった信号の表示内容は「事故防止」を目的としたもので、表示形式を変更して以降、前出のような事故は起こっていないという。

しかし「それならばやはり、矢印表示をやめて青信号だけ表示すれば良いのでは…?」という疑問が拭えないのも事実。こちらの疑問に対し、担当者は「既存の状態や交通環境に合わせての変更となり、もしこちらで事故が防げなかった場合は、また別の対策を施す予定でした」と解説している。
…ということは変更後も事故が発生していた場合、矢印部分が撤去されて今回のようなシチュエーションでは「青信号」が灯火されるようになった…というケースも、十分考えられたということだろう。
矢印式の信号を見かけた際は、対向車との事故にくれぐれも気をつけてほしい。

関連記事:粗品、交通ルール守らない歩行者にブチギレ 「めっちゃ多い」違反行為は…
秋山はじめ:1989年生まれ。『Sirabee』編集部取材担当サブデスク。
新卒入社した三菱電機グループのIT企業で営業職を経験の後、ブラックすぎる編集プロダクションに入社。生と死の狭間で唯一無二のライティングスキルを会得し、退職後は未払い残業代に利息を乗せて回収に成功。以降はSirabee編集部にて、その企画力・機動力を活かして邁進中。
X(旧・ツイッター)を中心にSNSでバズった投稿に関する深掘り取材記事を、年間400件以上担当。ドン・キホーテ、ハードオフに対する造詣が深く、地元・埼玉(浦和)や、蒲田などのローカルネタにも精通。