え、木でできてるの!? 最後の“木造自衛艦”を海自公式が公開 なんで丈夫な鉄で造らない?

海上自衛隊が「最後の木造掃海艇」という一文とともに、掃海艇3隻が並んだ様子を公式SNSで公開しました。掃海艇は今も造られていますが、鉄製はまずなくFRP製ばかりだとか。なぜ木造の掃海艇は増えないのか有識者に聞きました。
海上自衛隊は2023年12月4日(月)、掃海艇が3隻並んだ画像を公式X(旧Twitter)で公開しました。
説明には「最後の木造掃海艇!『ひらしま』型3姉妹」との文言が。もともと同様の投稿(ポスト)は、掃海隊群の公式Xで11月23日に行われており、海上自衛隊公式による投稿は、それを追いかけたものになります。
ただ、掃海隊群公式にもやはり「最後の木造掃海艇」という説明文が添えられていました。どういうことなのか、自衛隊に詳しい人物に聞いたところ、海上自衛隊の掃海艇は木造もしくはFRP(繊維強化プラスチック)のいずれかで造られており、現在は後者のものが主流となっているため、木造の掃海艇はどんどん数を減らしているとのことでした。
え、木でできてるの!? 最後の“木造自衛艦”を海自公式が公開…の画像はこちら >>海上自衛隊最後の木造掃海艇となった「たかしま」(画像:海上自衛隊)。
一般的に自衛艦は鋼鉄製のものがほとんどです。そのなかで、なぜ掃海艇は鋼鉄ではなく、木造またはFRP製なのかというと、鋼鉄はどうしても磁気を帯び発生させるため、磁気に反応する機雷には弱いのだとか。掃海艇は、機雷除去が主任務のため、安全のために鉄ではなく磁気が発生しない木またはFRPで造られるのだといいます。
では、なぜ近年はFRPの方が主流になっているのかというと、木造はどんなに防水処理を施しても年を経ると水を吸い、重くなるとともに劣化するのだそう。また重くなるということは、そのぶん燃費も悪化するということで、機関や燃料搭載量が変わらなければ最高速度や航続距離は低下します。 一方で、FRPは水を吸って重くなったり劣化することがないほか、技術が進歩した結果、木造艇以上の強度を持たせつつ軽く造ることが可能になったことから、海上自衛隊の掃海艇もこちらに切り替わったのだそう。またFRPは、従来の木造掃海艇と比べて艦の寿命を延ばすことが可能なので、ライフサイクルコスト(LCC)の低減にも繋がるとのことでした。
ほかにも、1980年代以降、民間で木船の需要が減ったことで、木造艇(船)を造れる技術者が減り、ノウハウを継承するという観点からも問題視されるようになったといいます。
こうした時代の流れにより、海上自衛隊では2008(平成20)年度計画艦の掃海艇「えのしま」(2012年3月21日竣工)以降、掃海艇および掃海艦はすべてFRP構造となり、今回、海上自衛隊が公開したひらしま型3隻、なかでも艦番号603の「たかしま」が最後の木造掃海艇になったとのことでした。
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海上自衛隊が公式Xで公開した、ひらしま型掃海艇3隻が並んだ写真(画像:海上自衛隊)。
なお、2023年12月現在、海上自衛隊には前出のひらしま型3隻のほかに、前級のすがしま型掃海艇10隻もあるため、計13隻の木造掃海艇が現役で運用されています。
これらは佐世保基地(長崎県)や呉基地(広島県)、舞鶴基地(京都府)、阪神基地(兵庫県)、函館基地(北海道)、沖縄基地(沖縄県)などに配置されているため、もうしばらくは木造掃海艇の元気な姿を見られる模様です。
とはいえ、今後、新たな木造掃海艇が建造される計画はないため、気が付いたら残りわずかになっているかもしれないと、前出の自衛隊に詳しい人物は語っていました。
海上自衛隊の公式Xが公開した最後の木造掃海艇ひらしま型3隻も、2023年12月現在は佐世保基地所在の掃海隊群第2掃海隊でそろって運用されていますが、ひょっとしたら近い将来、母港となる基地がバラバラになっているかもしれません。