ホンダ「オデッセイ」が日本で復活 – 中国製を逆輸入! 何が変わった?

2022年に日本で販売終了になったばかりのホンダ「オデッセイ」が早くも復活することになった。中国で生産するクルマを日本でも販売する逆輸入スタイルだ。実車を見るとボディデザインは大きく変わっていないが、何か進化したポイントはあるのだろうか?

オデッセイ再投入の狙いは?

初代オデッセイが登場したのは1994年のこと。いわゆるミニバンでありながら、低床設計による高い走行性能を売りにして大人気となったホンダのヒット作だ。先代モデル(5代目)は生産工場(埼玉県の狭山工場)の閉鎖や生産体制の見直しにより、2022年に約28年の歴史に終止符を打っていた。ところが2023年12月、突如として日本市場で復活することとなった。

オデッセイを日本に再投入する狙いは? ホンダの説明を聞けば理由は納得でき過ぎる。

「ホンダのミニバンラインアップには小型の『フリード』、中型の『ステップワゴン』がありますが、オデッセイの生産終了により『中大型ミニバン』が消滅してしまっていました」

トヨタ自動車に「シエンタ」「ノア/ヴォクシー」「アルファード/ヴェルファイア」があるように、ホンダも大中小のミニバンラインアップを構築しておきたいということだろう。

では、オデッセイの特徴や優位性は?

「ほかのミニバンにはない低床設計による乗り降りのしやすさと安定した走行性能、ミニバンとしての使い勝手のよさを持つオデッセイは、唯一無二の存在として高い支持を得てきました。ホンダのラインアップとしてオデッセイは欠かすことができない存在だったと思います。工場閉鎖というやむを得ない理由で生産と販売を終了することになりましたが、いつか復活させ、ラインアップを充実させなければという思いがありました。今回は中国広東省の工場からの逆輸入という形にはなりますが、このたび日本市場に投入できる準備が整った次第です」

これまでとボディデザインは大きく変わっていないものの、色使いや使い勝手などには細かなアップデートを実施したとのこと。実車を見ながら詳しく見ていくことにしよう。

パワートレインはハイブリッドの「e:HEV」のみ

オデッセイを復活させるにあたってホンダが設定したターゲットは、30代から40代の子育て世代。特にデザインにこだわりがあり、使い勝手と走行性能も求めるユーザーを想定したそうだ。

ミニバンは使い勝手がいい反面、スタイリングの面では妥協していることもしばしば。全高が高く、機械式駐車場にとめられないなどの制限も受けがちだ。こうしたミニバンのデメリットをオデッセイなら解消できるというのがホンダの訴求ポイントだ。

複雑になりがちなパワートレインの構成は思い切ってシンプルに。生産終了前の先代オデッセイはガソリンエンジンとハイブリッドモデルをラインアップしていたが、復活する新型はハイブリッドの「e:HEV」のみだ。こうすることでユーザーがパワートレインで迷うことがなくなるし、生産の効率化も図れるとホンダは見込む。

動力性能は最高出力145PS、最大トルク175Nm。燃費は19.9km/L(e:HEV ABSOLUTE)。このあたりは先代モデルと大して違わない。ホンダの担当者は「走行性能などはほぼ変わっていません。(先代モデルは)それだけ完成されていたと思っています。ただし、再投入にあたって改良した部分も多くあります。特に、見た目の印象にはこだわりました」と話す。
新型オデッセイは「見た目」にこだわった

「見た目へのこだわり」を象徴するのが新しいグレードの「BLACK EDITION」だ。その名の通り、クルマ全体を黒で統一したモデルとなっている。撮影したオデッセイのボディカラーは新色の「フォーマルブラック」。深みのある黒が特徴だ。このカラーは「BLACK EDITION」グレード以外でも選ぶことができる。

例えばエクステリアでいえば、フロントグリルにブラッククロームメッキを施し、突き出し感を強め、横から見たときの迫力アップを狙っている。ヘッドライトは内部(リフレクター天面)をブラックアウト化したことで、ライトを点灯させていなくても鋭い目付きになった。ほかにもホイールやドアミラー、ドアロアーガーニッシュ(開閉ドアの下部)などをブラック/ブラッククロームメッキでそれぞれ統一している。

さらに印象的だったのは、リアコンビランプにスモークレンズを採用していること。つまり、リアのブレーキランプの部分が、点灯していなければ真っ黒になるのだ。この意匠は新鮮で、まるでサングラスをかけているかのような引き締まり具合がとてもカッコいい。

スモークレンズの採用に合わせて、本来はシルバーに輝く車名のエンブレムやリアライセンスガーニッシュ(ライト周辺の加飾部分)までブラッククロームメッキに。BLACK EDITIONの名にふさわしい仕上がりだ。
「BLACK EDITION」は内装もブラックに! 全体に一体感

インテリアも随所に黒を使用。ステアリングはピアノブラックで加飾してあるし、インナードアハンドルはブラッククロームメッキ、ピラーやルーフライニング(天井部分)はブラックになっていて特別感がある。特に、ルーフライニングは明るめのベージュやグレーが多い中、ブラックになっていることでクルマとの一体感が感じられた。

後席の2列目シートにも進化が見られる。オットマンやリクライニングを電動化し、操作時の快適性が向上した。オットマンを頻繁に使うかといわれると何ともいえないが、個人的にはめったに使わないからこそ、手動だと億劫になってしまう。そういった意味で、電動化は嬉しい進化といえるだろう。

シートとシートの間には小物などを置けるドリンクホルダー内蔵テーブルを装備。シートをドア方向に横スライドすればテーブルが引き出せるし、使わないときは畳んでおける。足元には2口のUSBポートが。スマホやタブレットの充電に困らないのはありがたい。

後席シートに座って感じたのは、先代モデルよりも明らかに快適に過ごせる工夫がされているということ。シートの座り心地も上質で、おそらく高級大型セダンの後席よりも天井が広く、足元に余裕がある。これなら何時間でも快適に過ごせるはずだ。子育てファミリー向けのミニバンとして使うには、正直もったいないと思うくらいの高級感と快適性を持ち合わせている。

ホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」の進化も見逃せない。

先代モデルのオデッセイは、単眼カメラとミリ波レーダーによる検知システムを採用していた。今回の復活版オデッセイは、単眼カメラをフロントワイドビューカメラに、ミリ波レーダーを前後4つのソナーセンサーに変更。これにより、車両や人など対象物までの距離や横位置の計測はもちろん、外壁やガラス素材なども検知・計測できるように進化している。
新型オデッセイの実車に触れてみての結論

新型オデッセイはエクステリアデザインこそあまり変わっていないが、細かい部分を見ていくと使い勝手と安全性が大幅に進化しているのは明らかだ。3列目も実際に使えるシートになっている。

中でも、群を抜いているのが2列目シートの快適性だ。さきほども述べたが、欧州の超高級車と比べても勝るとも劣らない快適性と質感の高さを実現している。ファミリーカーには贅沢なくらいの2列目シートだ。

新型オデッセイは、どのような世代が乗っても必ず満足できると断言できる。実車に触れてみれば、その進化をより一層体感できるだろう。

室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら